「話を聞いてもらえる専門家になるために」weとthey、オタクとヤンキー
昨日、私が芸術大に進学する理由を書きました。その最後に、科学コミュニケーションについての問題意識を書きましたが、そこに関するnoteが、今朝の最所あさみさんの記事に載っていたので紹介します。
まず「好意」、「We」にならないと話を聞いてもらえない
有料コンテンツなので、詳しくは有料で読んでいただきたいのですが、「専門家が話を聞いてもらうには、まず聞いてもらえるために好意を持ってもらうこと」と喝破されています。
そして、これと同じことが東大生が地方の医療情報普及のプロジェクトに参加したときに、東大生が結論づけたことと一致しています。
ここでは、地方で検診受診率の向上に取り組んだ東大生が、『「自分が主観的に身内(We)だと思っている人(親、配偶者、地域の友人、かかりつけ医)などから言われると検診を受ける」が、「市役所職員や縁の無い医師から(They)から言われても検診を受けようとは思わない」ということ。だから、市職員など検診を受けさせたい母体側がまず「We(=広い意味で身内)」と認識されなくてはいけない。』と、気づき、提言しています。
オタク型リーダーシップとヤンキー型リーダーシップ
専門家からすると、『誰が言ったか』が『何を言ったか』に優先されるのは理不尽にも感じるでしょう。私もそう感じます。これを整理説明するのが、オタク型リーダーシップとヤンキー型リーダーシップです。
これは、「『ONE PIECE』に学ぶ最強ビジネスチームの作り方」という本の中で提唱された概念なのですが、世の中にはオタクとヤンキーの2種類がいるということ。
端的に言えば「オタク」は「関心事」を優先し、「ヤンキー」は「仲間」を優先するということでしょうか。オタクはコンテンツに興味があり、ヤンキーはヒトに興味があるとも言えると思います。
だから、オタクタイプが人を誘うときは「今度の日曜日、バーベキューしたいけど、誰かバーベキューしたい人来ない?」と、コンテンツが先に来て人を誘うけど、ヤンキータイプが人を誘うときは「今度の日曜日、暇な人いる?どこかいかない?」と、まず人を誘ってから行く場所を考えるという感じでしょうか。
そして、専門家は圧倒的にオタクタイプが多い。むしろ、「関心事」にのめり込むからこそ、専門家になれるというとこでしょうか。だから、専門家が「あれ?自分の話を聞いてもらえない、伝わらない」という感覚を得たときに何を思うか。
それは、「自分に好意を持ってもらおう」という方向ではなく、「もっと詳細な説明が必要なんだろう」とか「論理が整合していないから伝わらないんだ」と言う「関心事のブラッシュアップ」に反省が行きがちになる。そして、より詳細なグラフを持ってきたり、より長文な説明書きが誕生したりするわけです。
オタクとヤンキーの橋渡し
「コンテンツの中身」に興味のある専門家と、「言ってるヒト」に興味のある非専門家。
ただ、この要素を1人で2つ持つ必要は私は無いと思います。
お互いにオタクは「結束させるのは苦手だけど、社会に新しいアイデアや知見をもたらして、社会の発展の切っ掛けを作るのは得意」、
ヤンキーは「アイデアを出すのは苦手だけど、社会の結束を強めて、社会の発展の実行力を強めるのは得意」という役割分担を持っています。
そして、1人で2つを持とうとすると、それぞれの良いところを却って打ち消しあうことの方が多いように思います。
だからこそ、ここに上手に橋を渡す様な仕組みが、必要なんだと改めて思います。今までは、それは、メディアの役割でした。新聞社やテレビ局というのは、信頼されている物であり、その信頼されているメディアの言うことなんだから間違っていないという形で、専門知識が社会に広まりました。
ただ、こうして、インターネットの発達によって、直接の情報発信が出来るようになると、「人から好意を獲得するのは上手だけど、専門知識のないインフルエンサー」と、「専門知識は正確で豊富だけど、人から好意を獲得するのが苦手な専門家」が、直接同じ土俵で戦う傾向が強まってきています。
そして、その戦いでは、「言葉の広がり」としては、間違いなくインフルエンサーの方が勝ちます。よって、専門家の知識は埋もれてしまう。
今までもキュレーターなど、そこを補完するような存在はありましたが、これからは、かなり社会のシステムとしても、個人のメディアリテラシーとしても、ここを意識的に設計していく必要があるように思います。
「自分たちが好意を持つように行動しない専門家が悪い!」でもなく、「正しいことを言っているのに中身に注目して聞いてくれない方が悪い!」でもない、どちらかに責任を持たせるようなやり方でない、広い意味でのコミュニケーション設計を研究していきたいなと思っています。
「話を聞いてもらえる専門家になるために」というより、『専門家が話を聞いてもらえる仕組みのために」という感じになってしまいましたが、今日の話はここまで。
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