現代人が、趣味として『麹をつくる』意味 vol.1 『五感』
最近、リーダーシップ論とかばかりだったので、久々に発酵・麹に戻ります。
今日は、現代人が、趣味として『麹をつくる』ということの意味合いについて、自分なりに思うところを書いてみます。
人間には五感がある
五感を通じた体験、といいますが、五感について確認しておきましょう。
五感とは
目・視覚、耳・聴覚、鼻・嗅覚、口・味覚、皮膚・触覚
となります。
それぞれ、
目は光を、耳は音波を、鼻は気体を、口は液体を、皮膚は温度や圧力といったものを、人間が認識するための器官となっています。
さて、現代人、特に都市型の生活をしていると、目と耳からの情報が圧倒的に多くなります。
オンライン会議などは、まさに、目と耳からの情報を浴び続けることになるわけですね。
麹づくりと五感
さて、麹づくり(製麹といいます)は、「5感を使って作る」と言いますが、ハゼ込み(麹菌の生え具合のこと)と呼ばれる視覚的な情報はもちろん、麹自体の温度や、湿り気の含み具合など触覚から得られる情報が、麹づくりにはかかせません。
例えば、麹をつくるための適切な蒸し上がりを「ひねり餅」といいますが、これはまさに、触覚による見極めとなります。
そう、麹づくりは、視覚・聴覚からの情報が多量で偏りがちな現代人にとって、体に入ってくる情報の流入量のバランスをとる作業と言えます。
ずっと同じ姿勢で、ずっと同じ筋肉を使っていると、その筋肉ばかりが凝ってしまう、そして、ちょっと背伸びをしたり姿勢を変えて違う筋肉を使うだけで、体のバランスが、すっと整うという経験は、誰もがしていると思います。
それと同じように、視覚・聴覚の情報に頼りすぎ、特定の感覚器をつかいすぎるているところに、他の感覚器からの情報を入れることで、感覚器全体のバランスをとることが出来ます。
特に、現代の生活は、エアコンが充実した室内で生活をし、暑い日でも寒い日でも同じような温度で、雨の日でも、皮膚に雨粒が落ちる感覚を出入りの時ぐらいしか感じることがない生活を送っています。
麹づくりを通じて、五感、特に、触覚で、温度湿度、硬さ柔らかさなどを感じながら作業をしていくことは、単に「発酵食品の材料を作った」だけではない、効果をもたらしてくれると思います。
五感を使う体験
最後に、私自身が体験した五感を使う重要性について書いてみます。
私は、読書は一時期、電子リーダーのKindleを使っていましたが、現在は紙の本に戻っています。もちろん、Kindleを使うときもありますが、なんとなく、使い分けています。
その理由は、Kindleだと視覚しか使わないので、記憶の定着が悪い感覚があります。もちろん、視覚しか使っていないので、読書への没入感が非常にピュアに得られるという感覚もあります。
ただ、読書の記憶とすると、Kindleだとコミックなど絵柄の多い物でなければ、基本的にはどんな文章も同じフォント、レイアウが、同じKindle画面に表示されます。つまり、見た目の変化も薄いですし、なにより、『手に感じる触覚が、どんな本を読んでも同じ』になってしまうんですよね。
それが、個人的には、『体験』として偏っている感覚があります。読書を勧めていくときの本の厚み、本を読み進めると、縦書きであればだんだん左手が、横書きであればだんだん右手が軽くなっていく、また、文庫、新書、ハードカバー、それぞれのほんのサイズ感、本という物体の重心の位置、触覚を通じて伝わるページの紙品質、といった情報が欠けていると、どうにも統合された情報ではない感覚があります。
逆に言えば、これらの情報は、『本に書かれている内容の理解』にとっては、ある意味では余分な情報、『本に書かれている内容だけに集中したい』のであればノイズであり、そのノイズがないことが、そもそも電子リーダーのメリットの1つです。
なので、私は『この本から情報を得たいのか、体験を得たいのか』で使い分けていますが、近年は、もっぱら、物理の本に戻ってきてしまいました。
麹づくりも、蒸し上がった米と、種付けのために少し冷ました米、発熱をし始めた米、麹菌が回った手入れ段階、出麹、それぞれの米の表面の差異、米粒と米粒の間に指を突っ込んで、指先が米を掻き分けていくときに、指紋にあたる米粒の、温度や水分、硬軟の差による感覚の差、
米粒だけでなく、麹蓋やバットなどを容器持ったときの重み、使っているふきんや手ぬぐいが吸湿している水分の重さなどまで
趣味として麹をつくる際、こういった触覚の感覚を感じ取っていただけたら、五感を整えることに繋がるのかなと思います。
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