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「ちゃんとしたABテスト」をするための一問四答(ボタン編)

ヒジョーに実務的な話をします。拡販のためにWEBサイトをリニューアルするときによくクライアント様から寄せられる質問をまとめてみました。

なぜまとめるのか?それは質問を多くお寄せいただくからです。
世に出ている多くのハウツーは、ボタンはこの形が良いナビゲーションを付けた方が良い、という情報があふれており、結局何が正しいの?状況です。めちゃくちゃ迷ってしまいます。

ここでは、ハウツーを取り除き、テストの目的や意義などを織り交ぜながら書いていこうと思います。


大前提

リニューアルの大前提が「売上を上げるため」、かつリニューアル後に数値測定ができる状況を作ることが目的です。
テスト内容も、「あ、こっちのテストもずっとやってみたかったんだ」という感覚値の話を除きます。

売上が上がれば良いんだから、早くやるにこしたことはない。だけれど、ハウツー試したい、ではなく見に来ている人(消費者、ユーザー)はどんなニーズがあるのか?を噛み砕いておく必要があります。そうしないとおかしなことになる。「ボタンを緑色にしたら→売上が上がった!」という関係が成り立った時、「このサイトに来るユーザーは緑色のボタンを好んでいる」なんて言いきれないわけで。

しかもとにかく試すだなんて費用の無駄です。そんな不確かな狙いを請け負負える自信はぼくにはない。せっかくやるなら、より確かな結果を得るための設計が必要。

プラス、確かな前提

ハウツーはハウツーで知っておくに越したことはありません。

ただ最も重要なのは、見に来ているユーザーが何を求めているのか、ということを深堀することです。ファッションや好みに左右されるブランドサイトを見に来ない限り、制作側の「好み」を見に来ているわけではないのです。

今回の軸は、質問に対して改善判断まで踏み込みます。
・答え
・目的
・仮説
・検証と目標
一問に対して深堀した四答を用意しました。

①ボタンの色は緑色が良いか

答え:「ユーザーがボタンだと分かれば何色でも良い」
目的:オファーボタンのクリック率を上げるため

ECのLPであれば、多くの物販は緑色のボタンが主流です。「ユーザーがボタンだと認識する」のであれば、この原則に倣うにこしたことはありません。
一方で、構築やデザインに問題があるのか「ここがボタンですよ」と分からないくらい同化しているのはたぶんプロの商業デザイナーはやらないと思います。

本質の問題は、これらの折衷にある「ボタンだと分かりやすい方が押してくれやすい状況」がはたして必要かということです。本当に欲しいものだったらユーザーは血眼で探します。その上で、ボタンが見つからないことによりCV数が落ちる、といった仮説が必要でしょう。

仮説:ボタンの位置がわからず、離脱してしまっているユーザーAが20%いる
検証と目標:20%の離脱者を1%までに下げる

状況によりますが、考えられる具体的な行動としては
「ボタンっぽいところのタップ数が多い」
「最下部まで到達し、かつ上まで何度も戻っている離脱者が多い」など
これらはすべてヒートマップで計測できるため、検証と目標判断はこれでひとまずできます。

②フロートボタンは付けた方が良いのか

答え:「ユーザーが押したいときに押せるためには必要」
目的:オファーボタンのクリック率を上げるため

ある程度ページをスクロールした段階で画面下や上についてくるボタンのこと。オファーを促すためにどこまででもくっついてきます。これも①と同じで、ボタンだと分かる情報が前提になります。

その上で本質は、「コンテンツを見ているユーザーが欲しい!と思ったときに親切にボタンがある状況」を作るためにあります。ということは、スクロールになれていないのか、そもそもページ内にボタンが無かったり(ほぼありえない設計ですが)、意図的に数を減らしているときに有効です。あと、ページ内のオファー情報よりも載せられる情報量が少ないため、購入にあたり価格表示や割引率、手数料や送料などの重要な情報の不一致を起こしていないことが重要です。

仮説:欲しいと思った時にタップできず途中でスクロールをやめてしまっているユーザーAが15%いる
検証と目標:15%の離脱者を0%にする

これも①同様、ツールで計測可能。ヒートマップが圧倒的に楽。GTMとGAなんかで発火したユーザーと紐づけ行動傾向を見るのもひとつ。押したいときに押せる衝動性に応える魅力的なコンテンツも必要です。

このご時世めっきり減りましたが、決して誤タップ誘導は避けてください。一昔前のガラケーサイトでふわっと出てくるタイプの広告と同じくらい嫌悪される危険性が隣り合わせです。これは本質ではないのでやめておきましょう。
丁寧にアシストしてあげることは必要ですが、あまりしつこいと残りの85%に嫌われてしまうことも注意です。この手法は、割とナイーブな子だと思っています。

デジマケを愛しているからこそ大切にしたいマーケティング的雑感


手法が悪いわけではなく、あいまいな「勝ちパターン」を作り出してしまわないための考え方の紹介でした。ここの落とし込みが弱いと、「あれ、この間はボタンを緑色にしたらCVRが上がったのに…」と頭打ちになる可能性があります。また、ほかに何らかの要因が介在していた場合、本当に検証すべきものに気が付けず、誤った因果関係を導き出してしまうことこそ本当は怖いのです。

例えばぼくのメイン業務は、
・クライアントの商品特性からターゲット定義と広告設計を練る
・それをWEBサイトに通し込んだときの構成を作る
・デザインを決める
という流れです。いつこれらの落とし込みを行うか?というと、実は最初のターゲット定義の段階であったりします。

これが最も重要で、穴があると「結局何をどうやってテストしたら良いんだろう」となってしまいかねないのです。これはしんどくて時間も費用も無駄にしかねません。もったいない。ヒジョーにmottainai!

今回はハウツーに迷いがちな点をざっと洗い出しただけですが、次回は前提からもう少し丁寧な話をしていこうと思います。

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