社会を変える文章に共通することは…
「おかげ様で研修医が集まりました。ありがとうございます」
僕が来年度、医師として、そして、社会人として初めて赴任する病院の事務からメールが来た。病院に来年度勤める研修医が募集定員に達していなかったので、僕がnoteで病院を紹介したところ、2日で定員を超える医学生が応募してくれたらしい。
医師国家試験の過去問を積み上げ、スタバで勉強していた僕は、思わず飛び上がった。それほど、嬉しかった。来年から一緒に働く同期が増えるという楽しみもあったけど、それ以上に、僕の文章で人が動くんだということが嬉しかった。
(文章は人を動かすのかもしれない…)
僕はそう思った。
思い返すと、僕の人生も文章の影響は大きかった。WEB記事やブログがまだ少なかった小中学校では、文章とは本のことだった。冬になると雪が数十センチ積もるような兵庫県の田舎で育った僕にとって、影響力のある大人が近くにいるわけでもなく、本が先生だった。小説の主人公に感化されたり、伝記に出てくる偉人に感動したり、新書の思考の深さに感銘を受けた。東野圭吾の本を読んで、サスペンスの面白さを知った。司馬遼太郎の本を読み、土方歳三の生き様に感動し、坂本竜馬のクリエイティビティに感銘を受けた。重松清の本を読んで青春の輝きと儚さを知った。大学に入ってから、様々な情報が入ってくるようになっても、この人に会いたい! と思ったり、このコンテンツが素晴らしい! と思うのは、いい文章を読んで感動したからだった。
文章はいつだって、人生を導いてくれる師匠だ。
だから文章で研修医を集めることができた時、僕も誰かを導くような文章が書けたんだと思って本当に嬉しかった。
もっと、いい文章を書きたい。もっと人の人生に良い影響を与えられるような文章を書きたい。
そう思って、天狼院書店のライティングゼミに通い出した。
ゼミで学んだことは目からウロコだった。
ABCユニット、リーダビリティ、マーケティングライティング、即興、三点フラクタル…
どれも使いこなせると力強いスキルだった。
(使いこなせると、もっと人にいい影響を与えられるんじゃないか…)
そう思った。
だけど、毎週提出する課題が合格することはあまりなかったし、noteのPVはそんなに伸びなかった。たまに課題が合格してもどこか腑に落ちない感覚だけが深く残った。
(なんでだろう…)
ブログ記事を綴るためにキーボードを叩いていた手を止める。
いつも読んでいるWEBメディアのページをブックマークから開いて、読み始める。
僕が感動する文章ってどんな文章だろう…
心が動かされる文章って誰かの物語なんじゃないか…
誰かが人生の苦難を経て、伝えたいことが僕まで届いた瞬間に感動するんじゃないか…
深く考えた末に、原点に戻った。
自分が一番伝えたいことを書こう!
その想いを胸に、僕は一本の記事を書いた。
医療の役割は命を救うだけなく、患者とその家族の納得感を醸成することという内容だ。
僕が医師を目指す中で、自分の家族が亡くなり、本当に医療の役割はなんなんだろうと数ヶ月ずっと考えてきて、出した僕なりの答えだった。
この記事は、NewspicksやFacebook、Twitterで拡散され、PVも伸びた。
そして、僕なりに納得できた文章だった。
なぜこの文章は自分の納得感とPVと両方あったんだろう。
(本当に伝えたい想いは必ず相手に届くんじゃないか…)
そう思った。
医療で命が救われない人もいるし、実際に僕の家族は救われなかった。それでも残された僕自身が救われたのは、時間と医学知識をかけて準備して、納得できたから。そういう納得感を形成していくことも医療の役割なんじゃないかという想いを多くの人に届けたかった。
研修医募集の記事も届けたい想いがあった。募集している病院は、アートのまち豊岡市にあり、ドクターヘリ出動件数日本一で、僕の地元の病院で仲のいい地域の住民の顔も浮かんで来る。この素敵な病院で一緒に地域の医療をよくするためにみんな集まって欲しい! その想いが相手に届いて拡散され、人を動かしたんだと思う。
天狼院のライティングゼミで学んだこと。
スキルもたしかに大事だ。
でも文章を書く上で最も大事なことは「想い」なんだ。
僕は確信した。
自分が本当に伝えたい思いを文章にのせて世界に発信すれば、誰かが受け取ってくれる。受け取ってくれた誰かの人生は、少しいい方向に変わっていく。
いい方向を向けるような文章をこれからも書いていきたいと思う。
実は、「命を救うだけが医療の役割じゃない」ということ以外に、もう一つ伝えたいことがある。僕が人生で一番辛い出来事を経て、今の時代に生きる人達に一番大切なことはなにか気づいた話。多分それを書くためにライティングゼミにいったのかもしれない。10日後の医師国家試験が終わってから、ありったけの想いを込めて、その文章を書きたいと思う。
(photo by hiroki yoshitomi)
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同様の記事がWEB天狼院にアップされています。
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