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【対談】KARADA内科クリニック 渋谷 田中雅之院長 × 森田ゆき <PART 1>

森田ゆきが実行委員長を務める「Women’s Wellness Action from Shibuya」の実行委員でもあるKARADA内科クリニック 渋谷 田中雅之院長に感染症専門医院の役割と子宮頸がん、そしてその予防につながるHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンについてお話を伺いました。

感染症外来をもっと身近に感じてもらい

患者の過去、現在、未来を考えた治療と予防を目指す


森田:こちらの「KARADA内科クリニック 渋谷」は内科・感染症科のクリニックなんですよね。特徴などを教えていただけますか?

田中院長:当院は五反田にあるKARADA内科クリニックを渋谷にも、ということで2021年の6月にオープンしました。
日本で感染症科を看板に打ち出している医院はとても少なくて、都内でも数件なんじゃないでしょうか。大きい病院でも外科や内科の医師が感染症の医師として兼務をしているのをよくみます。
国内には1,691名、その内344名の感染症医が都内にいる(2022年4月現在)とされているのですが、そのうちの10名が渋谷と五反田のKARADAクリニックに携わっています。常に専門医がいる体制をとっているので、集約させすぎかもしれないですね(汗)。
感染症という言葉の響きが怖い感じがして、感染症の病院というと敷居が高いイメージを持っている方も多いかと思います。でも、その敷居を下げるのが私たちのミッションの一つです。
「感染症専門」というと仰々しくなりますが、菌やウイルス、寄生虫などに感染して起こり、様々な症状をきたしうる病気のことを指します。胃腸炎やインフルエンザ、風邪もウイルスや菌の感染症なんです。予防接種も感染症を予防するためのものです。身近にある病気の多くが実は感染症に起因しています。

森田:確かに「感染症」と聞くと怖い病気のような感じがしますが、風邪も感染症なんですよね。

田中院長:基本的には感染症医といっても、内科医です。そして内科の病気の中にたくさんの感染症の病気があります。
また、視点を変えて感染症を見ると、過去に患ったもの、例えばHIV感染症や結核を治療し続ける、現在まさに発熱をしている状態の治療をする、そして新型コロナウィルス感染や肺炎・膀胱炎・感染性腸炎などに将来感染しないために、例えばワクチンあるいはその他の予防策などを行う。その患者さんの過去・現在・未来を見据えた診療が感染症医には求められると考えています。

私たちは、皆さんの生活にとても密接な関係のある多くの感染症を、内科医として地域のかかりつけ医としてサポートをしていけるようになっていきたいんです。健康に関する事柄を是非お気軽にご相談いただきたいと思っています。

HPVワクチンの積極的勧奨が再開されました


森田:今年の4月からHPVワクチンの積極的勧奨が再開されましたが、“HPV”ってどういうものなんでしょうか?

田中院長:“ヒトパピローマウイルス”の略で、HPVと一言でいって100種類以上あるんです。それぞれに〇〇型と番号がつけられ、分類されております。16型と18型というウィルスの種類が子宮頸がんの原因として有名です。このHPVは、子宮頸がんの他に、肛門がんや陰茎がんの原因だともいわれています。
HPVは性交渉で感染するため、初めて性行為をする前にワクチンの予防接種をしておくことが重要です。だから、性行為を経験する前の若いうちにワクチンを接種することが推奨されているのです。ワクチンによって抗体が作られ、入ってきたウイルスと戦い定着を防ぐことができます。

森田:免疫力が高かったり、体調によってもウイルスの定着を防げる可能性はありますか?

田中院長:医学の教科書には、免疫力を指標とする項目の記載は限られています。白血球の数やステロイドの長期内服があるか、糖尿病があるかどうかなどです。その要素を持ち合わせていたときに、通常の免疫状態ではかからない感染症のことも懸念します。従って、日常に溢れる“〇〇を食べると免疫力が上がる”などと言ったことを評価する医学的な指標はあまり持ち合わせていません。それでも、個人的には健康的な食生活や笑顔で暮らしているといったウェルビーングな生活が免疫力を低下させるとは決して思いませんし、感染予防に関しても悪いことはないと考えています。

子宮頸がんのほとんどがHPV感染によっておきています


森田:子宮頸がんはHPVワクチン接種と健診により予防できる疾患だといわれていますが、詳しく教えてください。

田中院長:子宮頸がんはそのほとんどがHPVの感染が原因です。HPVワクチンを接種することでその60〜70%を防ぐことができます。HPV自体は種類も多く、50〜80%の女性が生涯に一度は感染するといわれていますが、その内の90%が自身の免疫力で体内のウイルスを排除することができるんです。でも、残りの10%は感染が持続し、数年から数十年かけて子宮頸がんを発症します。
感染が持続したとしても子宮頸がん検診を定期的に行えば早期に発見ができるので、ほとんどの場合がん化する前の段階で治療をすることが可能です。

(出典:厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000901220.pdf)

森田:時間をかけて発症をするから、性交渉で感染するといわれているのに子宮頚がんは性感染症とは区別されているんですね。

田中院長:そうなんです。
HPVワクチンは平成25年6月から令和4年3月まで、副反応への懸念などから積極的な接種の推奨が差し控えられていましたが、今年の4月からは積極的に接種推奨対象のワクチンになりました。公費接種(自己負担額0円で接種可能)対象者は令和4年度に小学校6年生から高校1年生になる女子となります。注意が必要なのは全3回の接種を無料で行うためには初回を高1の9月中に受ける必要があることです。
現在KARADA内科クリニックでは4価HPVワクチン(ガーダシル4)・国産9価HPVワクチン(シルガード9)を接種することが可能です。2価(サーバリックス)は取り扱いがありません。また、海外では多くの男性も接種している9価(ガーダシル9)の用意もあります。こちらは公費接種対象外ですが、自費にて接種可能であり、男性であっても当院にて接種する事が可能です。

森田:その2価、4価、9価といった数字にはどういう意味があるのでしょうか。

田中院長:ワクチンが予防しうるHPVの種類の数と考えてください。例えば2価は、2種類のウィルス、先ほどお話しした16型と18型に対応したワクチンです。その2つ以外のHPVにもがん化のリスクや他の病気に罹る可能性があります。4価であれば、2価のワクチンに加えて、尖圭(せんけい)コンジローマという陰部にイボができる病気の原因となるHPV6型と11型の感染を予防します。さらに、9価では、子宮頸がんの原因になる5つのウィルスの感染も予防し、合計9つの種類のウィルスの感染を予防します。種類が多いほど幅広い予防効果が期待できるということです。
ワクチンの種類と違いについては当院のウェブサイトにも説明してあるのでそちらもみていただけるとより詳しくわかるかと思います。

世界と日本のギャップ


森田:自費で9価のワクチンを接種する方も普通にいらっしゃるんですか?

田中院長:高額でもより効果が高い9価のワクチンを接種される方もいらっしゃいます。そもそも男性ですと、公費で接種や何らかの助成を受けることができないため任意での接種になり、高額になってしまうことがあります。
国内ではシルガード9という国産の9価ワクチンがあるんですけれど、それは女性しか打つことができません。当院では輸入のガーダシル9も用意していて、そちらは男性も打つことができる。男性も打つことでウイルスの感染を予防することができます。
例えばオーストラリアでは国民の90%がHPVワクチンを打っているといわれています。子宮頸がんで亡くなる人も減っており、2019年の時点でオーストラリアで「HPVは2028年には制圧可能なウイルス」だと報告されています。世界185カ国の中で57万人が子宮頸がんに罹患し、31万人が死亡しているといわれています。そんな中、日本はOECD加盟国の20-69歳女性を対象にしたリサーチによると子宮頸がん検診受診率は42%。オーストラリアの約90%の半分以下しかありません。さらにHPVワクチン接種対象女子の接種率にいたってはイギリス81%、ドイツ31%、イタリア40%、カナダ83%、アメリカ46%といった先進国の接種率の中で日本は0.3%という低水準。これは驚くべき数字であり、周知して皆で考えていくべき課題かと考えます。

森田:みなさんにHPVワクチンの接種と定期検診の受診が有用だということを知ってもらって、日本でもHPVの制圧を目指したいですね。

PART 2 へつづく

文・イトウノリコ

【対談】KARADA内科クリニック 渋谷 田中院長 × 森田ゆき 性感染症とは?


田中 雅之院長 略歴
KARADA内科クリニック 渋谷院長
医学博士
日本感染症学会専門医
日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本医師会認定産業医臨床研修指導医(厚生労働省)

KARADA内科クリニック
https://karada-naika.com


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