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「ちょっと今から仕事やめてくる」/(著)北川恵海

「月曜日の朝は、死にたくなる。
 火曜日の朝は、何も考えたくない。
 水曜日の朝は、一番しんどい。
 木曜日の朝は、少し楽になる。
 金曜日の朝は、少し嬉しい。
 土曜日の朝は一番幸せ。
 日曜日の朝は、少し幸せ。でも、明日を思うと一転、憂鬱。以下ループ」

「ちょっと今から仕事やめてくる」, 北川恵海 

ブラックなニオイの漂う職場に勤め、激務でメンタル崩壊直前の主人公・隆。

ある日、身も心も疲れ切った隆が、プラットフォームからふらふらと線路内に飛び込もうしていたところを「同級生のヤマモト」と名乗る男に助けられる。

その出来事をきっかけにヤマモトに心を開き、仕事に対して少しずつ前向きになる隆だったが、どうしても「同級生のヤマモト」の存在が気になる。確かに小学校のときに「ヤマモト」という同級生はいた。しかし、特別仲が良いわけでもなかった。しかも小学校の途中で「ヤマモト」は転校してしまった。そんな遠い昔の記憶しかない彼が、どうして自分をかつての同級生だと認識できたのか。

目の前にいる「ヤマモト」は誰なのか。調べてみると、かつての同級生「ヤマモト」は現在日本にいないことが判明する。不信感を募らせた隆はインターネットで「ヤマモト」の情報を検索する。すると出てきたのは三年前に激務が原因で自殺した男のニュースだった――。

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短時間でサクッと読めるお手軽な1冊。
読みやすさは星5つです★★★★★
そしてタイトルが良き。
こんな「ちょっとコンビニ行ってくる」みたいに気軽に言えないからこそ、惹かれちゃいます。

私がこの本の中で一番気に入ってるのは、仕事が辛い隆にヤマモトが言うひとこと。

「……とにかく、仕事辞めるってのはそんなに簡単なことじゃないんだ」
「じゃあ、何よりは簡単なわけ?(中略) 隆にとって、会社辞めることと、死ぬことは、どっちのほうが簡単なわけ?」

「ちょっと今から仕事やめてくる」, 北川恵海 

仕事だけに限らず、辛いこと、嫌なことあるのが人生。
誰かが作り上げた「歯食いしばって頑張る美徳」なんてペイッと捨てて、
逃げてもええやん、辞めてもええやん、楽な道を選んでもええやん、って思えたワンシーン。

自分の子どもたちにも、これからの人生で乗り越えないといけないことがいっぱいあると思うけど、
「そんな辛かったらやめていいやん」
「失敗したってええやん」
「この世の終わりにはならへんねんから大丈夫よ」
って声をかけてあげられるかーちゃんでありたいな、とも思ったり。


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