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【おすすめ映画】世界的なベンチャー企業が一世を風靡した後、あっという間に転落した理由とは?

みなさんこんにちは、三上結香です。
さて、今日はカンヌ国際映画祭への行き帰りの道中で見た映画の中から、おすすめの映画をご紹介します。
余談ですが、カンヌ国際映画祭は本当に行ってよかったです。行く前は、正直なんのために行くのかな?などと思っていましたが、実際に行ってみるとめちゃくちゃよかった!Instagramでその様子を投稿しているので、興味のある方はぜひご覧ください。

それでは、本題へ。

BlackBerry(ブラックベリー)(2023)

BlackBerry(ブラックベリー)は第75回ベルリン国際映画祭コンペティション部門に出品された作品ですが、日本ではまだ公開されていないようです。飛行機の中で私が選ぶ映画は海外のものばかりで、日本で公開されていないものが多いと最近ようやく気付きました。
映画自体がシンプルなので、英語でもストーリーがわかりやすいと思うので、興味のある方はぜひ見てみてください。

マーケットシェア率45%から0%へ!

BlackBerry(ブラックベリー)と聞くと、一昔前の携帯電話のイメージが思い浮かぶと思うのですが、それもそのはず!iPhoneが出てくる前に世界を席巻した携帯電話の代表作です。

個人的な体験としては、私の親友が学生時代に使っていたことや、アルゼンチン留学時代には「Nokia」か「BlackBerry」を迷っていたくらい身近で有名だったことから、この映画を飛行機で見つけたときに「そういえば、BlackBerryってどこにいったんだろう?」と気になって観ていました。

映画はリアルな話を元にしたドラマで、最後に出てくるのがこの言葉

At its height, BlackBerry controlled 45% of the cellphone market.
Today, it’s 0%.

映画『BlackBerry』のエンドロール

え、世界中のマーケットを45%も取っていたところから、0%になることがあるんだ!?

ビジネスの世界は厳しくもあり、面白いですね。今回はなぜベンチャー企業が45%のシェアを取るに至ったのかという理由と、そこから0%まで崩れ落ちた理由を考察していこうと思います。

なぜ、BlackBerryは45%もののシェア率を取れたのか?

「完璧」は「良い」の敵である。

映画『BlackBerry』より

これは、エンジニアで世に良いものを出したいと強く願っている主人公のマイクが、敏腕営業マンのジムに言われた一言です。マイクは数式や技術、テクノロジーについては非常に長けていますが、こと営業や交渉ごとになると全くダメ。お客様になめられ、売るどころか在庫を抱えてしまうほどでした。

「完璧でないと世に出せないというのであれば、一生売れることはない。
世で売れているものは完璧なものではなく、良いものだ。」と、共同CEOとなったジムは、一気に営業をかけて商品をどんどん売っていきました。そのスピードといったら、ネットワークに負荷がかかりすぎて、通信できなくなってしまう緊急事態にも見舞われるほど。マイクはジムの販売スピードに開発を追いつかせることで必死でした。

それほど勢いよく販路を拡大したことが、北米を中心に、働くビジネスパーソンに必要不可欠なデバイスとなり、結果的に世界中のマーケットシェア率を45%占めることになりました。

ジムのやり方は事業規模の拡大において非常に勉強になります。
販売:圧倒的な営業力、交渉力をもとに販路拡大
採用:世界中からスキルのあるエンジニアを高額で採用した
広報:メディア掲載の獲得、スポーツチームと連携
商品を売ればいいのではなく、より事業規模を拡張するために適切な人材を採用し、大々的に告知してメディアに発信する。

町の小さな雑貨屋さんで終わるのか、世界的に有名になるショップにするのか。モノに溢れていて、ただいいものを作って売るだけではやっていけない時代です。ジムの拡張の仕方は、無謀な点も多くありましたが、起業する際に勉強になることばかりでした。

なぜ、BlackBerryはうまくいかなくなったのか?

一方、冒頭にも述べた通り、現在のBlackBerryのシェア率は0%です。あれほど勢いの良かった時代はわずか一瞬で、一気に崩れ落ちました。日本ではNTTドコモとパートナーシップを組み提供していましたが2013年には撤退。2022年には総額6億ドル(約686億円)でモバイルデバイスに関するすべての特許資産を売却しています。

面白いことに、BlackBerryについて調べると、撤退したことばかりが記事にあがっていて、いかに一世を風靡したのかという点についての記事はなかなか出てきませんでした。人の成功談よりも失敗談の方が好まれるというのはここにも現れているのでしょうか。

マーケットに適応する力

映画の中でも、BlackBerryが撤退した理由となりうる多数問題点が出てきます。一番の外的要因は、みなさんご存知の通り、iPhoneの出現です。「キーボードに電話」という発想から「電話にインターネット」へとパラダイムシフトを起こし、AT&Tと組んでBlackBerryが悩まされたネットワーク問題をあらかじめ対処してリリースされたiPhone。
発表された瞬間のCEOや役員幹部の反応が、その後のBlackBerryの命運を決めたと思います。いざという時の「マーケットの変化に適応しない」という選択は、結果的に自らの首を絞めることになると学びました。

発表後すぐの客先でのプレゼンテーションでも、マイクはiPhoneとの差別化やiPhoneを凌駕する点について質問されていました。お客様はマーケットに敏感で、いつもより良いものを求めているのだということも改めて感じたシーンでした。事業者は常にマーケットと共に仕事をすることが大事ですね。

とはいえ、iPhoneの出現はあくまでも問題が顕在化するきっかけになったにすぎず、私は本当の課題は別のところにあると感じていました。

チームワーク

個人的に自分ごととして捉えた課題は、2人の共同CEOたちがお互いのやっていることへの理解に努めず、それぞれが組織が大きくなってもずっとバラバラに仕事をしていた点でした。

マイクは技術面、ジムは営業面、と役割分担をして不可侵な状態での仕事。最初はそれでうまくいっており、むしろそれがレバレッジとなって良かったのですが、うまくいっていかなくなると大問題。不可侵ということは、仕事をする上で自分の管理下にないことがあるということとイコールなので、何が真の課題で、どのように取り組めばいいかの正常な分析ができないままになってしまうことがよくわかりました。

例えば夫婦やビジネスパートナー同士、2人以上のチームで何かを成し遂げるときに、お互いがお互いのベストを尽くそうと約束をして仕事をするのは当然です。しかし、忘れてはならないのは目に見えないコミュニケーション。共同CEOでお互いに同等の権利を持った場合、それぞれがバラバラに動けば、たとえ同じ方向性だったとしても派閥を生み出してもおかしくない状態です。ワンチームで常に仕事をするためには、お互いの情報共有はもちろん、そもそもお互いのやっていることに意見を言い合える状態であるということが大事だと学びました。

事業者として価値を提供し続ける

ジムが得意の新規開拓力で問題を突破しようと試みたとき、アポのダブルブッキングで大事な商談に1分遅刻をしたシーンがありました。たった1分で商談は無し。先方からの信頼を大いに無くしてしまいました。このことから、「時間=命」だからどんな時でも時間厳守することの大切さを学びます。

それとは別に、さらに深ぼって考えてみると、当時のジムが取引先主導で動かされていたことも気になります。バックアップの欲しさゆえに、権力者たちに頭を下げ、権力者たちのいうがままに動いていたジム。会社員の中間管理職としてはそれでうまくいったのかもしれませんが、CEOや一事業者としては取引先に価値を提供する存在であるということが抜けてしまっていたように感じました。

ジムだけでなく、マイクも同じです。技術者として最初からずっと品質にこだわってきたにも関わらず、いざという時に目先の利益を優先してその信念を曲げ、中国の工場での大量生産に踏み切りました。結果、大量の不良品が送られて負債を抱え込むことに。信念貫いておけば良かった、と後悔しかありません。

普段の現場でも、取引先に合わせることや目先の利益ばかり考えて、そもそもの自分達の存在意義や価値、信念を大事にすることや、それを相手に提供するという最も重要なことをやり続けているだろうか?と考えさせられるシーンでした。

まとめ

長くなりましたが、BlackBerryの映画は総じて面白かったです。何より、このようなリアルな失敗談を映画にするということが面白い取り組みだなと思いました。もしもこの映画の利権がマイクやジムに入ったとしたら、面白いですよね。

勝ちに不思議の勝ちあり
負けに不思議の負けなし

プロ野球の野村克也元監督

成功には偶然や運もあるかもしれませんが、失敗には必ず原因があります。BlackBerryの撤退からその原因を学び、私たちの事業に活かしたいものです。

いつも最後までお読みいただきありがとうございます。
まだまだ面白い映画がたくさんありますので、ぜひ楽しみにしていてくださいね。

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