「進級に必要なのは、"心配"だ。」限界理科大生が語る、留年の真相
東京理科大学。
そこは、各大学が研究費や国際性、技術力といった分野でしのぎを削る中、
「留年の多い大学」という競争率0の分野で首位を牛耳る私立大学である。
もはや理科大では、当たり前となっている留年。しかし実際に留年する学生とは、一体どのようなものなのか。
このような学生にフォーカスした記事は、意外にも世にあまりでまわっていないように感じる。
そこで今回は、理科大に通う学生の中でも留年に詳しい男、畑 洋樹にその真相を迫った。
profile 畑 洋樹 (はた ひろき)
工学部情報工学科三年。1996年、京都に生まれる。最寄り駅は等々力だが、徒歩30分の自由が丘が最寄りと言い張る。食パンがきらい
「この世には二種類の人間がいる。留年する者と、しない者。」
そう、熱く語る畑。
そんな彼はというと、まさしく後者である。
畑はいま、留年の危機に瀕している。
過酷な挑戦と向き合う畑。しかしその中で彼は、確かに前を向いていた。
立ちはだかる、現実
ーーはじめに、理科大での留年制度について教えてください。
畑 いいでしょう。
理科大には、留年するタイミングが2回あります。
ーーなるほど。
畑 そんなに驚かないでください。
ーーそんなに驚いていません。
畑 まず1つが、進級留年。
一年生が二年生に進級するときに留年することです。留年すると、一年生からやり直し、つまりふりだしに戻ります。
もう1つは、卒業研究留年。これはその名の通り、卒業研究を受ける資格がないと判断され留年するものです。四年生に進級できません。
ーー1つ気になったのですが、2年次から3年次に進級する段階で留年することはないのでしょうか。
畑 はい。絶対にありません。
畑 2年から3年への進級は確実です。言ってしまえば少しくらい気を抜いても構わないでしょう。
ーーそうなんですか。
畑 人生メリハリが大切です。
ーーしかし気を抜くとはいえ、そのさじ加減が少しイメージしづらいのですが。
畑 そうですね。参考までに僕の場合、
2年次は年間で4単位しか取得していません。
ーーかなり抜きましたね。
畑 そして僕は今まさに、卒業研究留年の危機に直面しています。
ーーなるほど。全く参考になりませんでした。
ーー今直面している卒業研究留年について、詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか。
畑 卒業研究を受けるには、大きく分けて三つの基準があります。
1. 一般教養を一定数取りきること
2. 実験をすべて取りきること
3. あと他のやつもそこそこ取りきること
これら3つを満たして初めて卒業研究を受けられるようになります。
ーー大変そうですね。
畑 そんなこともありません。どれも一年次から取り組めるもので、三年次にイチから取り組むわけではないのです。
畑 裏を返すと、卒業研究留年をしないためには、一年次からの積み重ねが大切なんです。
ーーなるほど。では畑さんは今、3つ中いくつ満たしている状態なのでしょうか。
畑 そうですね.......
畑 1つも満たしていません。
道なき道をゆく、畑
ーーこの状況から、留年を回避するには何が必要なのでしょうか。
畑 僕が今年留年しないためには、一年で75単位の取得が必要になります。
ーー75単位。これは一般の人には到底なしえないと思われますが、年間で75単位取得とは可能なのでしょうか。
畑 はい。理論上は、可能です。
ーー実現性をきいています。
畑 それは少しお答えしづらいですね。
ーー何故でしょうか。
畑 事務課に問い合わせたところ前例がないとのことで。アハハ
ーー笑えません。
ーー昨年は年間4単位しか取得していないとのことでした。そんな畑さんが年間でその20倍近くの単位を取得するとなると、これは大きな挑戦であるように思います。
畑 ひとつ訂正させてください。
ーーなんでしょう。
畑 確かに僕は先程、年間に4単位取得したと言いました。
しかし僕が昨年取得した単位のうち2単位は、1年次の再履修です。
畑 つまり僕が新しく取得した単位数は、このような計算によって求められます。
4-2=2
畑 いかがでしょう。
ーーはい?
留年、そして未来へ
ーー最後に、後世の理科大生が留年しないためにも、畑さんからなにかアドバイスをお願いします。
畑 わかりました。
畑 留年しないためには、大学に行くことが大切です。
ーーもう少し一般の人向けでお願いします。
畑 そうですね、僕は、留年を心配する気持ちが大切だと思っています。
ーーと、言いますと。
畑 理科大に入学したての新入生の多くは口を揃えて言います。「留年が心配だ」と。
そして不安にかられながら大学生活を過ごしています。
しかしそれでいいのです。
留年を心配し、友達と協力しあい、学校の課題に熱心に取り組む。
思うにその心構えこそが、留年をしないために最も必要なことなのです。
ーー非常に参考になります。貴重な時間を割いていただき、ありがとうございました。
ーepilogueー
「ここに、いつか僕の像を建てるのが夢なんですよね」
畑は、大学図書館前にある「考える人」の前に来ていた。
留年回避という偉業を成し遂げた暁には、ここに自分の像を建てたいと語る。
考える人の横に、なにも考えない畑の像が建つ。
「それって最高にクールだと思うんですよね」
畑は言った。
彼は、確かに前を向いていた。
畑は諦めない。
夢が叶う、その日まで。
( interviewer/writer : Kanata Yamagishi )
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