不要不急？の東京五輪。

新国立競技場計画の白紙、ロゴ問題、森会長の女性蔑視発言、統括責任者であった佐々木宏氏の辞任など、問題続きの東京五輪。そして、ここに来て、開催そのものが危ぶまれている。

ANN世論調査によると、東京オリンピック・パラリンピックを「さらに延期した方が良い」「中止した方が良い」と答えた人が合わせて8割以上。その中でも「中止した方が良い」は49％と、ほぼ半分。どの世論調査を見ても「中止派」が大多数を占めている…

「東京五輪の延期・中止」8割以上に　ANN世論調査（テレビ朝日系（ANN）） - Yahoo!ニュース

そんな中で、こんな発言はしにくい。しちゃったら、知らない誰かに攻撃されちゃいそう。少数派って生きづらい。でも、言う。

東京オリンピック、やって欲しい！！

海外からの一般観客受け入れは中止が決まり、観光業界は大打撃、国内からの観戦も見通しが立ってないので、残念ながら経済効果は大きく予想を下回る。九州もインバウンドの波及効果に期待して、いろいろ準備を進めていた自治体も多いことを知っているので、なおのこと辛い。「だったら、いっそのこと中止すればいい」という声が聞こえてくる。確かに、

スポーツは不要不急。だけど、

本当に要らないものなのか？アートや音楽と一緒で、極論、触れなくてもいいものかもしれない。でも、STAY HOME・三密回避がどこに行っても叫ばれ続けていたこの1年。みんなが巣にこもって映画やドラマやアニメを見たように、劇場版『鬼滅の刃』が日本映画史の興行収入を塗り替える快挙を成し遂げたように、アーティストのオンラインライブでキャプチャを撮りまくったように、約3か月遅れて開幕を迎えたプロ野球に歓喜したように、「スポーツ」や「文化」は、人間の生活に豊かさをもたらす。言わば、精神安定剤だ。

不要不急と言われるものによって人間は人間になれたことを忘れてはいけない。

— 三浦崇宏 GO (@TAKAHIRO3IURA) May 12, 2021

世界中の精神安定剤になり得る。

新型コロナウイルスの猛威に世界中が脅かされ、心は疲弊しきっている。不安な気持ちが充満している。ただ、そんな世の中だからこそ、オリンピックをやって欲しい。マイナースポーツだったとしても、選手が全力で走る姿には希望をもらえる。応援している選手が負けたとしても、前を向く姿には勇気をもらえる。別に無観客でもいい。TVを通してでもいい。それは、日本だけでなく、世界を元気づける祭典になるはずであり、替えがきかない祭典だ。

あの頃の日本人に、笑顔で負けるな。
見る夢の大きさで負けるな。
人を思いやる気持ちで負けるな。

くらしの豊かさだけでなく、
こころの豊かさでも、
ぜったい負けるな。

代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打

余談ですが、私は自信を持って挑んだコンペで負けたり、会社が理不尽な決定を下したり、ひどく落ち込んだりするときに必ず見る動画がある。

大阪近鉄バファローズは北川選手の「代打逆転サヨナラ満塁優勝決定本塁打」だ。2001年の試合で、プロ野球史上もっとも劇的な勝ち方とされている。バファローズのファンでもないが、3点差をひっくり返して優勝を決めたこの一振りはいつまで経っても元気をもらえる。なぜか心を救われる。どんどん高まるスタジアムの振動が、この10分の映像からも伝わってくる。「しっかりと踏め！しっかりと踏めよ！！ちゃんと踏めよ！！！ホームイン！！！」という実況を放り投げて、口から出てきた本音にも涙腺が緩む。

錦織選手は言う。けれど、

1人でも感染者が出るならばあまり気は進まない。死者がこれだけ出ている、ということを考えれば、オリンピックは死者を出してまでも行われることでは無いとは思う。究極的には1人も感染者が出ないような時にやるべきかなと思う。

先日、錦織選手が試合後の会見で語ったこのコメント。政治家が言うより、選手が言う言葉の方が、当たり前だけど重みがある。世論が一気に「東京五輪反対」に傾いた発言だった。これに対して反論した、総合格闘家の石井慧選手の意見ももっともだ。

競技により五輪の立ち位置は違う。テニスやゴルフなどはプロも確立されているし五輪と並ぶ名誉も何かあるだろう。五輪の為命を削り名誉と金の為に命をかけてる選手は世界に沢山いる。だからこんな綺麗事を言うな。俺が反対してる理由は全く違って自分が1番可愛いからにつきるhttps://t.co/ql1ltrk4Or

— Satoshi Ishii | 石井 慧 (@SatoshiIshii) May 11, 2021

ただ、私が引っかかったのは、「オリンピックは死者を出してまでも行われることでは無いとは思う」の部分だ。もちろん、徹底した感染対策は必要だし、逼迫する医療の現場で戦う医療従事者のことを思うと、死者はおろか、感染者も出したくはない。

でも、前述したように、「スポーツ」や「文化」は人間を救うという側面が少なくともある。だから、開催されることで救われる命もあるかもしれない。また誰かを救う名場面が生まれるかもしれない。みんながTVに食いつき、Twitterで実況をし、翌日は昨日の試合の話に花を咲かせる。地球の裏側は寝不足になる。そんな、TOKYO 2020になれば嬉しいな、と。田畑政治が生きていたら、何を思うのだろうか？（おわり）

TOKYO 1964

さいごに…2度目の余談になりますが、コンペにおいて満場一致で決まったという亀倉雄策デザインの1964年 東京五輪ポスター。まぎれもなく、私が1番好きなグラフィックデザインで、一時期ケータイの待ち受けにしていたほど、美しく、圧倒される。日の丸と、五輪マーク、そしてTOKYO 1964だけで構成されるシンプルなデザイン。普通じゃ作れない余白。写真1枚の力。

いつかこんな強烈な1枚を作りたい。