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タンパク質不足が心配な人は、リサイクルをしっかり回しましょう!

 お肉が苦手で食べられない。
 菜食中心にしたいので、お肉を避けている。
 もともと小食。あるいは減量したくて小食。
こんな人は、からだの中のタンパク質が不足しやすいですね。

でも大丈夫!
お肉をバクバク食べなくても、からだの中のタンパク質をしっかり確保することは可能です。

カギになるのは、タンパク質のリサイクル。リサイクルの影響は、食事の3倍くらいあります。

ですから、「タンパク質が足りてないかも…?」と心配な人は、まず上手にリサイクルを回すことを考えた方がいいですね。


肉なしでも、タンパク質ハナマルの人がいます

栄養講座の生徒さんで、こんな人がいました。
50代の女性。
Aさんとしておきましょう。

Aさんの食生活のポイントをまとめてみると……

動物性タンパク質はほとんど摂っていない
肉や魚を食べるのは、友人と一緒の外食くらい
全体的に健康意識の高い食生活
自家菜園があるので、新鮮な野菜はたっぷり

菜食中心の食事だと、タンパク質不足で元気がなくなってしまう人もいます。Aさんはどんな感じだろう、と調べてみると……

まず、タンパク質不足のサインとなる症状は何もありませんでした。約20項目の質問票に回答してもらったのですが、チェックは一つもなし。見事な白紙回答です。

血液検査でタンパク質に関連する項目は、こんな感じ。

 TP  総蛋白        7.90 g/dl
 ALB アルブミン    4.58 g/dl
 AST             20 IU/L
 ALT           21 IU/L

ホリスティック栄養学的にみて、「体内にはしっかりタンパク質がある」と判断できる、理想的な数値です。

ホリスティック栄養学、分子栄養学、分子矯正栄養学など、「○○栄養学」がいろいろありますが、皆だいたい同じようなものだと思ってください。

一言で言うと、家庭科の延長のような栄養学とは違う、生命科学に基づいた新しい栄養学、といったイメージです。

菜食中心の食事でも、Aさんのように健康優良な人もいれば、明らかにタンパク質不足で元気のない人もいます。

その違いはどこから来るのかというと…
今回のテーマであるリサイクルなんです!

たとえば、Aさんにお話を聞いてみると…

 毎日とても忙しくて慌ただしく過ごしていますが、家庭でも職場でも人間関係が良好ですごく楽しく過ごしています。

実は、こうしたことがタンパク質のリサイクルを良くしてくれます。順を追って、説明していきましょう。

タンパク質の材料は、食事とリサイクル

からだの中でタンパク質を作るためには、材料が必要です。その材料はどこから供給されるかというと、2つのルートがあります。

1つは、食事から摂ったタンパク質
もう1つは、体内にすでにあったタンパク質の再利用(リサイクル)です。

まず、食事から摂ったタンパク質ルートから。
タンパク質はアミノ酸がつながって作られています。食べもの(ステーキとか)に含まれていたタンパク質は胃腸の中で分解されてアミノ酸になり、吸収されます。そのアミノ酸を材料にして、体内でタンパク質が作られています。

タンパク質は、まずアミノ酸に分解される

特にトレーニングとかしていないケースで考えてみますと、一般的な成人は食事から1日に60gくらいのタンパク質を摂っています。一方、1日にからだの中で新たに作られるタンパク質は200gくらい。

……60と200?
計算が合いませんね!?

60gから200gは作れないでしょう?

ここで、2つ目のルートの登場です。

体内のタンパク質は、1日に200gくらいずつ分解されています。

このうち70~80%がリサイクルされて、新しいタンパク質を作る材料として再利用されています(残りは排泄)。

分解量と合成量はだいたい同じくらい

アミノ酸の一部は、排泄されてからだから出ていきます。その量が、1日だいたい60g。

これで、計算が合いましたね!

入る量と出ていく量も、だいたい同じ

体内で新しいタンパク質を作る材料としては、食事から摂るタンパク質よりも体内タンパク質のリサイクルの方が約3倍も多い、ということになります。

個人差はありますよ!

ですから、食事からのタンパク質摂取量が多少少なくても、リサイクルがうまく回っていれば、十分に補うことができます

一方、お肉やプロテインをガンガン摂っていても、リサイクルが全然ダメな人は、思ったほどタンパク質を増やせないかもしれません。

タンパク質のリサイクルは、とっても大切

では、どうすればリサイクルを上手に回せるのか?タンパク質リサイクルのメカニズムについて考えてみましょう。

メカニズムといっても、別に難しいことではありません。実は、資源ゴミのリサイクルと似ていて、ゴミを捨てるところから始まります

タンパク質の分解は、実はゴミ出し

タンパク質は、細胞の中でいろいろなお仕事を担当しています。細胞内で働く「家電製品のようなもの」と考えてみましょう。

家電は長く使っていると、だんだん動きが悪くなりますね。壊れて使えなくなったりもします。

タンパク質も同じ。ポンコツ化したタンパク質が増えるにしたがって、細胞の働きもパフォーマンスが落ちてしまいます

最初はピカピカの新品だったのに……

粗大ゴミとなってスペースをふさいでいるタンパク質を分解・処分することは、細胞にとって重要なメンテナンスになり、断捨離になります。

いらない物を捨てることで、ピカピカの新品タンパク質を配置するスペースも確保できます。

分解されたゴミは、新しいタンパク質を作る材料に

この分解がうまく進まないと、どうなるか?

細胞の中には粗大ゴミ化したタンパク質がたまっていきますね。それだけでなく、タンパク質の合成もペースダウンしてしまいます。

新品タンパク質を作るための材料が乏しくなるし、新品を納入するはずのスペースもゴミでふさがっているからです。これが、リサイクルがうまく回っていない状態です。

あなたの細胞もゴミ屋敷……かも?

真の健康とは、体内に40兆近くある細胞の1つ1つを最高に元気な状態にすること、とか言われます。その「元気な細胞」とやらを、もう少し具体的なイメージで描いてみると、こんな感じになるでしょう。

細胞も、流れが滞るとよどみます

「タンパク質不足が心配なら、リサイクルですよ~」という流れでお話ししてきましたが……

実は、細胞レベルで健康になりたい人が真っ先にケアした方がいいのも、タンパク質のリサイクルなのですね!

では、タンパク質をうまくリサイクルさせるには、どうしたら良いのか?その具体的な方法については、こちらをご覧ください ↓ 。

ちなみに、「タンパク質のリサイクルをうまく回す」は、オートファジーを活性化させると言い換えてもかまいません。タンパク質のリサイクルはいろいろなシステムによって動かされていますが、その中でも特に重要なのがオートファジーです。

オートファジーとは
いらなくなったタンパク質の一部を分解して再利用するシステムの1つ。

「細胞内のゴミのリサイクル機能」と呼ばれることもあります。体内のすべての細胞が、このオートファジーの能力を備えています。

2016年に、大隅良典教授が「オートファジーの仕組みの解明」によってノーベル医学生理学賞を受賞してから、よく聞くようになった言葉ですね。

オートファジーについて、詳しくはこちらをご覧ください ↓



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