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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』感想

お気に入り度:★★★★・ 4 / 5 

ミステリオに正体を暴露されて全世界から最悪の形で注目を浴びたピーターが、ドクター・ストレンジの魔法で事態を解決しようとしたところ、魔法が失敗し、並行世界から5人のスーパーヴィランを呼び寄せてしまう。

サム・ライミ監督の「スパイダーマン三部作」やマーク・ウェブ監督の「アメイジング・スパイダーマン二部作」とはまた異なった、新しいスパイダーマンの物語を紡いできたMCUの「ホーム三部作」の完結編。今作では魔法とマルチバースという要素を取り入れ、歴代実写スパイダーマン映画とのクロスオーバーまでをも果たした。

正直なところ、ホーム三部作としては前作『ファー・フロム・ホーム』の方が、少年ヒーローやマルチバース等の似た要素を持つスパイダーマン映画としては『スパイダーバース』の方が、全体的に好き。とは云え、『ノー・ウェイ・ホーム』も良作揃いのスパイダーマン映画の最新作としての期待は裏切っていない。兎にも角にも真摯に作られている。

まず、押し付けがましさはあるものの、ヒーローがヴィランの命を何とか救おうとするのが好い。ヒーロー映画ではヴィランが一作限りで死にがちだから、尚のことそう思う。まあ、ゴブリン人格は結局消滅しているけど……。

何よりも好かったのは、別作品から客演したキャラクターが、『ワンダヴィジョン』のクイックシルバーや『ホークアイ』のキングピンなどとは違い、ちゃんと元の作品に沿った「本人」だったこと。それでいて、「本人」らしい活躍も見せてくれる。「終わってしまった作品」の物語続きを感じることができた。

しかし、シェアード・ユニバースの魅力は「続いていく作品」同士が相互作用して世界観を発展させていく点にある。今作のように「終わってしまった作品」が「続いていく作品」に作用するのは、瞬間的には盛り上がれても、シェアード・ユニバースとしての魅力はいつもほどないように感じる。

これはもう、『アメイジング・スパイダーマン3』を作るしかないと思う。ジェントルマンとは何者なのか、恋人の仇となった旧友とはどうなるのか、MJとは如何にして出逢うのか、丁度こっちは相変わらずアメイジングシリーズの続きが気になっている。

だいたいアメイジングシリーズが打ち切られたのはMCUのせいなんだから、ガーフィルド版スパイダーマンを復活させたからには『アメイジング・スパイダーマン3』を作る義務があると思う。そうでなければ、せめてMCU版『レジェンド・オブ・トゥモロー』みたいな企画をして、ライアン版コンスタンティンのようにガーフィルド版スパイダーマンを活躍させてくれ!

さて今作、丁寧なクロスオーバーは良いのだが、その反面、スパイダーマン映画に共通するピーターを中心とする身近な人間ドラマの面白さには欠いてしまっている。個人的には、もっとネッドとの友情やMJとの恋愛を観たかった。むしろ、そっちの方が観たかった。ホーム三部作に対していつも思うことだが、映画よりも尺の取れるTVシリーズなら良いのに。

別にクロスオーバーなんかせず、普通にピーターが学生生活を送りながらスコーピオンとかと戦う内容でも良かったかもしれない。これなら友情や恋愛は勿論、別世界のピーターの敵ではなくMCUのピーターの敵との戦いを描くことができるし、『ホームカミング』で張った伏線の回収もできる。

ただ、今作の結末自体は、ホーム三部作の幕を引くものとして相応しいものだったと思う。これまでのスパイダーマンとは異なるスパイダーマン像を備えていたMCUピーターが、他のスパイダーマンとの交流を経て、従来的なスパイダーマン像に近づいたわけだ。

「ピーターのことが忘れられた新世界が生まれる」という展開も、リブートを繰り返してきたスパイダーマン映画らしく、最後にリブートをしたと捉えると面白い。

今作の映像面については、スパイダーマン映画としてはまあ普通。ドクター・ストレンジとのクロスオーバーも映像面にはあまり目新しさをもたらしていない。スパイダーマン映画としては普通なだけで、ヒーロー映画の平均の上をいく出来ではある。特段難があるとするならば、突然何かが眩しく光る演出が多くて頭がクラクラするところか。

MCUピーターの今後の活躍には、期待が増すばかり。「ピーターが新しい生活の中でグウェンやハリーと知り合って、MJとネッドが記憶を取り戻す頃には昔のピーターはもういない」とかやってほしい。

それにしても、MCUが今後アイアンハートを出したり、ウォーマシンの単独作品(『アーマー・ウォーズ』)を作ったりするのは、今作でアイアンマンの後継者からピーターが外れたことを踏まえているわけだ。納得感がありつつも、アイアンマンの後継者としてのスパイダーマンが好きだったから、寂しくもある。


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