グロい、それは春。

春、死の予感がする、風に浮かべた花びら、落ちる、落下へと急ぐ、漂うのは死を孕む肉体、生命などに包まれている。温度を失ったままの身体が追いつけない。そこに無いのは温もりだけで、視界は飽和状態だった。四月、クラスで係決めをする、本当は飼育委員になんてなりたくなかった。小学校の飼育小屋からこっそり盗んで持ち帰ったニワトリの卵は、私の子宮の中では孵らなかった。急速に凍結していく現実、ニワトリの卵、卵、卵、卵、ら、ら、卵、らら、卵、卵、スキップをしてみる、鼻歌をうたう、子宮に置き去りにした卵、孵らない生命と、死骸を包むこの死体を、置き去りに加速する季節。熱伝導性の無い殻。誰かの横顔が通り過ぎて行った。冷ややかな風が生ぬるい幻に移り変わる地点を、まだ決められずにいる。校舎の裏でこっそり花を手向けようとして、やっぱり私自身に手向けた花。その花に手向ける花を、探しに出かける、追い駆ける、追い付く、追い越す。熱量が、加速度が足りない肉体を包む飽和した風。死骸と命とが、交錯するグロい季節、それは春。


#創作大賞2023 #オールカテゴリ部門

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