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ものづくりの『デザイン』と非デザイナーとしての付き合い方について

チームでプロダクトを作っていると、『デザイン』という存在の価値を強く感じます。造形などをつくりあげるデザインの話ではなく、ものづくりの意思決定を支えるデザインの話です。

デザイン思考という言葉に代表されるような、思考のメソッドとしてのデザインは非常に強力で便利です。チームの方向性を揃えることにも、個々の問題発見・解決のプロセスを効率化することにも活用できます。

一方で、デザインの捉え方には少し難しい部分もあります。万能に見えたり、やたら難しそうに見えたり、あるいはバズワード的な「中身のないもの」に見えたり、距離感が測りづらい要因も少なくありません。

非デザイナーながら、デザインの恩恵を実際に受けている身としてはこれはもったいないことだと思っています。特にものづくりの営みにはデザインを活用できるテーマが溢れていますし、うまく付き合うことができれば利点がたくさんあります。

このnoteでは、僕自身がプロダクト作りに携わる中で感じるデザインの力と、自分なりのデザインの捉え方について書きます。デザインという行為がもっと身近な存在になっていけばいいなと思います。

チームでのプロダクト作りを支えるデザイン

チームでプロダクト作りをしている中で感じる最も大きなデザインの力は、価値観や共通認識を作り上げる力です。

「何を作るのか」よりも前段にある「なぜ作るのか」「何を大事にするのか」のような抽象的なものに名前や形を与えることができると、チーム内での思考や議論、行動の方向性がいい感じに整っていきます。

僕たちの日常に溶け込んでいるものだと、CI(Corporate Identity)デザインがあります。企業によって形式は様々だと思いますが、僕たちはVision, Mission, Valueの三つを定めました。特にValueは僕たち個々人が意思決定する上での価値基準として身近な存在になっています。

これは世界観をつくる行いそのもので、ブランディングデザインと非常に近いトピックでもあります。僕たちには実現したい理想があります。理想を語る時には一貫性のあるストーリーが必要です。そのために、自分たちがどうあるべきかを考え、言葉にし、それに則って行動することには大きな意味があります。

最もプロダクトに近い部分だと、プロダクトの提供価値を決めるUXデザインがあります。僕たちのチームでは、UXデザインのワークはチーム全員で実施していますが、しばらく続けてみてわかったのはこの過程が非常に大切だということです。

なぜかというと、デザインのプロセスにメンバー全員が参加することで、チームの中にプロダクトの提供価値に関する共通認識が育つからです。

当然のことですが、メンバーごとにプロダクト開発の知識や経験には差がありますし視点も異なります。しかしそれは大した問題ではありません。より重要なのは、全員がプロダクトの提供価値について一定の共通認識をもち、継続的に議論に参加している状態です。

この状態をつくることができるとチームとしてプロダクトへの解像度が上がることはもちろん、メンバーがプロダクト作りの当事者であると自覚しやすくなり、チームの雰囲気にも良い効果を与えてくれます。

これは参加型の協調的なデザインアプローチであるCo-design(Wikipediaでは Participatory design)と呼ばれるものと近い取り組み方で、特に開発初期のプロダクトなど探索的な改善プロセスが必要とされるシーンでは効果的な方法だと思います。

デザインの捉え方について思うこと

デザインという行為についてセンスや才能が必要という捉え方がされることがありますが、実際はそうではないと思っています。

たしかに、グラフィックデザインなどのアートとも近い領域ではそういうこともあるかもしれません。しかし、汎化されたデザインは誰でも使えるようエッセンスが抽出されていて、どちらかと言えば経験や知識がモノをいう技術に近いものです。

デザインのメソッドはデザイナーでなくても使うことができますし、気兼ねなく学んで活用していくのがいいと思います。エンジニアとしての経験上、技術にまつわるセンス(勘所)というのは、先天的な素養よりも後天的な経験が効くものなので、やはり実践を通して学ぶのが一番早いはずです。

一方、それではデザイナーは必要ないのかと言われれば完全に逆で、むしろ重要性が跳ね上がっていると思います。デザインが意思決定の方法として使われるようになったことで、デザイナーは単なる一領域を任される専門家ではなく、複数のステークホルダーと連携して意思決定の舵取りをする役目を担っているからです。

僕たちのチームではプロダクトの方向性を決めるUXデザインはメンバー全員でしていると言いましたが、これは優秀なUXデザイナーさんが舵取りに力を貸してくれているからこそできていることでもあります。

先ほどデザインは技術に近いと言いましたが、優秀なデザイナーさんを見るとそのことをより強く感じます。今まで一緒に仕事させていただいた優秀なデザイナーさんは、例外なく良い哲学を持っていて、知識や経験に裏打ちされた実力を持つプロフェッショナルでした。

さいごに

このnoteでは、僕自身が日頃感じているデザインの力と、デザインの捉え方について書いてきました。少しでもデザインを身近に感じてもらえたら嬉しいです。

僕たちはスタートアップなので、特に価値観や方向性を定めるデザインの力についてはありがたみを感じます。これは、メンバーが少ない状況下での自由度と方向性のバランスが非常に難しいことに関係しています。

メンバーが少ないと一人一人が身軽で自由度が高くなりますが、方向性がブレればチームとして空中分解してしまいます。かといって、トップダウンに方向性を定めてしまうと自由度が失われて、スケールしなくなってしまいます。

良い価値観や方向性のデザインは、そこにちょうどいい指針をもたらしてくれます。進む道を大きく制限することなく、追い風のように背中を押してくれる存在です。

さいごになりましたが、僕たちはWellというB2B SaaSのプロダクトを開発している、Boulderというスタートアップです。従業員の幸せが、企業にとっての価値になるような世界を目指して取り組んでいます。

チャレンジングなテーマですが、デザインの力を借りながらチーム全員でプロダクトを作っています。僕たちと一緒にプロダクトを作ってくれる新しい仲間も探していますので、もしご興味ありましたらお気軽にご連絡ください。

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