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That'sヨルシカ

2021年9月20日と21日、「ヨルシカLIVE TOUR 2021『盗作』」が大阪「オリックス劇場(旧大阪厚生年金会館)」で行われた。当初は9月7日と8日に「グランキューブ大阪」こと大阪国際会議場で行われるはずだったが、ワクチン接種による使用延長で使えなくなり、場所が三宮の神戸国際会館に、日程を8月31日と9月1日にそれぞれ変更した。しかしその後、ボーカルsuisスイさんの新型コロナ感染が判明(ギタリストn-bunaナブナさんや他のサポートメンバーなどは感染なし)。名古屋公演ともども延期になり、場所も2度目の変更を余儀なくされ、この日この場所になった。予想の範疇とはいえ、なかなかここまで何度も変更されて一時はどうなることかと思ったが、suisさんは無事に回復、僕自身も健康体で今日を迎えられた。その点は感謝してとくと見たいと待ち望んだ。

入場特典の小説を読み耽た後、映画でよくあるブザーを合図にライブが幕を開けた。n-bunaさんが曲にちなんだ小説を語った後、ボーカルsuisさん、サポートメンバーの面々が登場。『春ひさぎ』『思想犯』の2連発。

ちなみに、ヨルシカの正規メンバー2人は基本的にメディア上で顔出しは一切していない。今年1月に見た配信ライブも影の状態でもしかするとと予想していた。ただ、有観客は2人もスポットライトを浴びていて、僕はステージから遠い座席ながら生身の全貌を見ることができ、生のパフォーマンスを拝むことができた。

ヨルシカは曲、世界観全てで物語を構成していると聞く。今回のライブも映画鑑賞のような流れで、ライブパフォーマンスの合間には冒頭のような小説の語りが入る。あくまで主役はヨルシカという物語、suisさんの声、n-bunaさんのギターも物語のほんの一部ということだろう。他とは一線を画してるどころか比較にならない。「That'sヨルシカ」とはこういうことからなのだと思う。

n-bunaさんが作る曲というのは自身が育った故郷岐阜の田舎の風景が発想のベースになっているそう。この日舞台上のスクリーンには田舎のバス停や祭りの縁日、木造駅舎、1両のディーゼル列車、田んぼ、山々などの青々とした風景などが映し出されていた。
見聴きすると僕自身の故郷滋賀県長浜市や数年前に訪れた京都府京丹後市ともリンクするし、岐阜県自体、何度も訪れていて、そこで乗った樽見たるみ鉄道※のディーゼル列車や車窓はスクリーンの映像のような世界だったと記憶している。まさにそんなことを思う僕はそういう世界観が突き刺さる。そりゃボカロでも別の人が歌っても刺さるわけだ。

↓樽見鉄道のディーゼル列車

※大垣駅(岐阜県大垣市)と樽見駅(同本巣もとす市)を結ぶ第三セクター鉄道。沿線は淡墨桜うすずみざくらが咲き誇る名所で桜シーズンには臨時ダイヤが組まれるほど賑わう。

「ヨルシカLIVE TOUR『盗作』」という名の物語は序盤からラストまで、曲はおろかラストの語りまで泣きっぱなしだった。僕の場合、聴きたいときに電車で聴くという普通な聴き方をしていることがほとんどではあるが、改めてただ曲としての作品ではない。曲の一つ一つが合わさった物語であることが心の奥深くまで伝わった。
suisさんのキレイな歌声はコロナの影響は受けていないようでとても泣いて楽しめたし、「suisさん、n-bunaさんの2人はあんな動きで表現してんねや」って発見もできた。

ヨルシカのライブはもちろん初見で見たことなかったが、それ以外全てがこれまで見てきたライブとはまるで違うものだった。2度の延期があったとはいえ、「十五夜の満月」の下でこんなええもんを見ることができたことは至高の幸せだった。いい涙活にもなった。おそらくヨルシカを楽しむ最高頂がこれなのだと思う。普通に聴くのとはわけが違う。ヨルシカ以外でこんなライブが拝めることなんてそうそうないだろう。それぐらい「ヨルシカイズム」に圧倒された最高の十五夜、帰り道の京阪特急ではいつもと違って選曲オールヨルシカの「ヨルシカ祭り」で曲を楽しむ余韻も良きでした。

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