腱炎・腱症・腱障害とは? ~介入は異なるのか?~
それぞれの言葉の定義を理解しておくことで、ドクターや多職種との連携もスムーズにいきますし、言葉の定義を知れば評価や介入にも生かすことが出来ます。逆に考えると、言葉の定義を知らないと評価も正確にできず、介入することで状態を悪化させる可能性もあります。
そこで、まず始めに”腱炎・腱症・腱障害”のそれぞれの言葉の定義について解説していきます。
腱障害(Tendinopathy)は痛みや腫れを引き起こすあらゆる腱の状態を指す広義の用語です。つまり、腱の状態をすべて含めた言葉になるため、病態を表す言葉ではないことがわかります。
腱炎(Tendonitis)は言葉の通り腱の炎症を示し、腱症(Tendinosis)は腱の退行変性を示す言葉になります。それ以外にも、多くの腱の病態を示す言葉はありますが、腱障害と言われたら、まず腱にどのような病態が生じているのかを考える必要があります。
例えば、アキレス腱で考えると、アキレス腱炎が生じているのであれば、安静や抗炎症、負荷の調整が必要になります。アキレス腱症であれば、腱の強度を高めていく介入が必要にあります。アキレス腱断裂であれば、保存療法か手術療法かを選択しなければなりません。
細かいかもしれませんが、言葉の定義を知っているのか、知らないのかによって、全然話が変わってくることが分かったと思います。この点を理解して頂き、続きの内容をお読みいただけると幸いです。
1.腱とは?(What is tendon)
腱は、筋肉から骨に向かって伸びる結合組織であり、人体の体幹や四肢などの部位に存在します。腱の主要な役割は、筋肉と骨を結合することで、運動を制御することや、体重を支えることです。
腱はいくつかの健束が束になり、構成されます。腱はエンドテノンという緩い結合組織で覆われ、血管、神経、リンパ管を通す空間を構成します。腱全体は血管、神経、リンパ管などを通すエピテノン、血管が豊富で腱の滑りを良くしているパラテノンに覆われています。
エピテノンやパラテノンから腱は血管供給がなされていますが、成熟した腱は血管供給が不十分です。腱は密生結合組織であるため、血管が入り込むスペースがあまりないことも、血管供給が少ない理由と考えられます。
腱は体重を支持する役割や運動を制御する役割があり、腱には常にストレスが加わり続けています。また、解剖学的に血管供給が少ないことが特徴的です。実は、腱の役割や解剖学的な特徴が腱障害に関連していると考えられています。
2.腱障害の発生リスク
腱障害には、テニス肘、ランナー膝、アキレス腱炎などがあります。腱障害のリスクとしては反復的なストレスや不適切なトレーニング、筋力不足、生体力学的な要因、加齢による変化、そして遺伝的素因も含まれます。
つまり、多くのリスクがあり、大雑把に分類すると内因性要因と外因性要因の2つに分類することが出来ます。まずは、内因性要因について説明します。
先ほど、腱の構造でも紹介しましたが、腱は血管供給が少ない組織です。血管が少ないということは、組織修復が生じにくい組織と考えることが出来ます。腱の変性とその後の断裂は、腱内の特定の領域の血管減少と関連していると報告されています。
さらに、腱の血管密度は年齢と共に低下することが報告されており、これが腱の修復プロセスの低下と関連する可能性があることが示唆されています。
続いて、外因性要因について記載していきます。外因性要因は反復的なストレスや不適切なトレーニングが挙げられます。過度または不十分な負荷は組織の恒常性を乱し、腱病理の発症の主要因となります。腱への過度な負担は腱障害を引き起こし、炎症メディエーターの産生を増加させます。
逆に、宇宙空間の様な全く負荷が生じない環境も腱障害が生じる可能性が示唆されています。これは、腱に加わるストレスがなくなるため、腱が構造的に脆弱化し、腱障害に繋がるのではないかと考えています。
このように、腱障害のリスクとしては内因性要因と外因性要因どちらも大切です。私はこのリスク要因の違いにより、病態に違いが出てくるのではないかと考えています。
3.腱障害の病態
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