AHDとSAPSの関係性
みなさんは肩関節のレントゲン画像を見るポイントはどこですか?
・骨硬化像
・骨棘の有無
・石灰の有無
・肩甲骨や鎖骨の位置
・acromiohumeral distance etc...
みなさんの見るポイントはいろいろだと思います!今回は私が最近までよく見ていた「acromiohumeral distance(以下:AHD)」について、記載していきたいと思います!そして、あまり聞き馴染みのない「SAPS」との関係性について考えていきます!
1.AHDとは?
肩峰の下面と上腕骨頭の上面を結んだ最短距離をAHD(acromiohumeral distance)と呼ばれています。
AHDの平均的な距離は7.8~12.8mmと報告されており、AHDは肩関節の疼痛を考えるうえで重要視されている場合があります。
なぜ重要視されているのかというと、肩峰の下端と上腕骨頭の上端の間には棘上筋や棘下筋、肩峰下滑液包、肩甲上神経など多くの組織が存在しており、AHDが狭小化すると肩峰下の組織は摩擦や圧迫ストレスを受けやすくなると考えられます。
摩擦や圧迫ストレスが増大すると、肩峰下インピンジメントや腱板炎、腱板損傷に伴う、肩関節の疼痛や可動域制限に関与するため、AHDは重要視されています。
2.AHDとSAPSの関係性
まず「SAPSとは何か?」について説明していきます!最近では、肩峰下腔の疼痛は数多くのメカニズムが存在し、病態が複雑や肩峰下の除圧による痛みの減少がわずかであることに関連し、「肩峰下インピンジメント」という言葉が不適当であると考えられています。
そこで、最近は「SubAcromial Pain Syndrome(SAPS)」という言葉を使うようにパラダイムシフトすることが求められています。
SAPSは肩峰下インピンジメント症候群の概念ももちろん含んでいますが、肩峰下の疼痛に関連する、筋力低下や肩甲骨の問題も含まれており、幅広く捉える必要があります。
SAPSは肩峰下の疼痛を幅広く捉えている概念と考えると、「AHDとの関係性も重要視する必要があるのではないか?」と考えることができます...
ですが、最近報告された論文によると「SAPSにおいてAHDと疼痛に関係はない」と報告されています。
「そうなんだ!」と私は思った印象があります...。でも、同時に「本当にAHDと疼痛の関係はないの?」という疑問も持ちました
そこで、論文を読み進めてみると、実はこちらの論文は外転位のみの報告で屈曲や内外旋を考慮していないことが考えられました。また、AHDの角度の検討も60°まででした。
つまり、別の角度や運動方向でも検討する必要があります!
そこで、いくつかのAHDの論文を読み漁ってみたのですが...
・AHDにおける記載が一定でない
・測定部位が一定でない
・基準値もバラバラ
・報告されている論文も数が少ない etc...
などのことからAHDについて私なりに検討することができませんでした💦
屈曲角度とAHDを例に挙げさせていただきますが、肩関節屈曲に伴いAHDは狭小化すると考えられますが、狭小化する範囲もバラバラで疼痛に関する検討もされていないため、現在では結論が出ないと私は考えています。
まとめると下の図のような結論になりました。はっきりしなくて申し訳ありませんが、現在ではわからないという結論です。
なので、肩峰下の疼痛に対してAHDを考慮する必要はありますが、わからないことをいくら考えてもわからないので、新たな報告を待ちたいなと考えています。
このまま、この記事が終わるとわからないことがわからないまま終わってしまう気持ちが悪い内容になるので、SAPSについてわかっていることも記載させていただきます!臨床ですぐに使える内容です!
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