Osgood-Schlatter病の予後

Osgood-Schlatter病（以下：OSD）は成長期に多い疾患です。子供の膝関節痛の原因のほとんどがOSDです。

OSDの発症率は

つまり、10人に1人の子供たちはOSDを発症しています。

OSDの原因や介入方法は多く述べられていますが、治癒しにくい疾患の一つです。例えば．．．

・OSDの初期診断から8年後もOSDを持つ若年成人では、日常生活やスポーツ活動に制限が生じている。
・運動選手の50％で、OSD後に脛骨結節の完全な骨化が生じても、脛骨結節領域の圧痛や膝蓋腱に疼痛が存在している。

一度発症してしまうと、なかなか症状が軽減しないことがわかります。

今回は最近の論文と私が経験した症例を提示し、OSDの予後を考えていきたいと思います。

OSDの原因や評価、介入についてはこちらをご覧ください！

まずは、私が担当したOSDの症例を紹介します。

1.OSDの症例紹介

OSDの症例を2人紹介します。2人の症例は運動を継続的に行っており、慢性的に脛骨粗面に疼痛が生じています。

1-1.1人目の症例

こちらの症例は一度OSDの疼痛は軽減しており、スポーツ復帰しています。しかし、脛骨粗面周囲に疼痛が再発した症例です。

エコー画像をご覧ください。

エコー画像から脛骨粗面の変異、四頭筋の遠位付着部、四頭筋と浅膝蓋上包の間に炎症が生じていることがわかり、四頭筋遠位腱にストレスが生じていると考えることが出来ます。

この症例は四頭筋のタイトネスはなく、正座や階段の昇降時に疼痛が強く生じます。2019～2020年ではOSDが完全に改善していないことがわかります。

1-2.2人目の症例

こちらの症例もスポーツは継続的に実施しており、おおよそ半年にて疼痛が軽減した症例です。完全に疼痛は消失していません。

エコー画像から脛骨粗面の炎症、四頭筋の遠位付着部、四頭筋と浅膝蓋上包の間に炎症が生じていることがわかります。こちらの症例も先ほどと同様に、四頭筋遠位腱にストレスが生じていると考えることが出来ます。

2.OSDの予後は？

通常は脛骨成長線の閉鎖により、OSDは完全に回復すると考えられており、全体的な予後は良好と考えられています。

しかし、最近の報告では

OSDによる疼痛は60％が残存しており、疼痛もVASで5レベルであったと報告されています。また、健康関連QOLも低いことが報告されました。

Clara Guldhammer, Michael Skovdal Rathleff, Hans Peter Jensen et al: Long-term Prognosis and Impact of Osgood-Schlatter Disease 4 Years After Diagnosis: A Retrospective Study. Orthop J Sports Med. 2019 Oct; 7(10): 

また、MRIを用いて、OSDのステージを評価した報告では

平均追跡期間は1.5+/-0.9年で22例のうち、治療期に進行したのは9例であったと報告されています。

Atsushi Hirano, Toru Fukubayashi, Tomoo Ishii, Naoyuki Ochiai: Magnetic Resonance Imaging of Osgood-Schlatter Disease: The Course of the Disease. Skeletal Radiol. 2002 Jun;31(6):334-42.

これらの報告を読んでいると

色々な疑問が生じてきますね🤫

今回の報告では、OSDの症状が残存している割合が多かったと解釈することはできます。しかし、疼痛が改善している症例もいることや、アプローチ内容やスポーツの種類、環境がわからないため、「OSDの予後良好・予後不良」を結論付けることはできません。

yoshiki

【資格】
・理学療法士
・運動器認定理学療法士
・三学会合同認定呼吸療法士
【専門分野・得意分野】
・足関節、肩・肘関節
・エコーによる動態評価と治療
【主な仕事】
・整形外科クリニック勤務
・高校サッカーのトレーナー
【運用WEB】
・Twitter：簡単な文献紹介やエコー画像を投稿しています！
・note：Twitterには記載していない情報を提供しています。

「解剖学は裏切らない」と思っています。形の違いや破格はありますが、筋肉や靭帯、骨の位置を知っていれば、評価・治療に直接結びつきます。私は解剖学的観点とエコーを用いて、皆さんに基礎的な部分を分かりやすく伝えていきたいと思います！

YouTubeでは触診・エコー画像を配信しています！登録お願いします！

K Y

Twitterでは理学療法に対する有益な情報を発信しています！フォロー宜しくお願いします！

タイトル未設定