映画館で映画を観るということ
私は映画を趣味としていて、見たい作品が多い時であれば、週1ペースで映画館へと足繁く通う人間です。
しかしながら、子供の頃から映画館が好きであったかというとそうではなく、むしろ苦手な人間でした。そうした自分がなぜ映画館に通うようになったのか、映画館で映画を見るというのはどういうことかということを書いていこうと思います。
トラウマへのカウントダウン
私が映画館を苦手に感じていた理由、それは2001年まで遡ります。当時幼稚園に通っていた自分は男の子”ながら”(ジェンダー的な表現をあえてしますと)『とっとこハム太郎』というアニメが大好きでした。ロコちゃんという小学生の少女に飼われているハムスター、ハム太郎が家から飛び出して他のハムスターたちと一緒にドタバタ大冒険をするといった作品で、小さいキャラクターたちのドタバタ劇は幼少の自分に刺さり、さらに言えば軽快でわかりやすいオープニングも要因だったように思えます。(未だにインターネット老人会では大人気ですよね)『ぷるるんっ!しずくちゃん』などに見られるああいった作品を最近は見ないなぁと思いますが、話がずれそうなのでそれは置いておきます。さて、そんなハム太郎大好き少年は「とっとこハム太郎の映画化」というビッグニュースを聞き浮き足立ちます。しかし、映画館に行ったこともない少年には、なかなかいう勇気がありませんでした。さらに当時は背伸びしたいお年頃。親にはバレバレでしょうが、男の子"なのに"「ハム太郎の映画が見たいんだ!!」とはなかなか言えず、どうしようかと悩んでいました。そうした時、少年に朗報が。なんとこの映画は同時上映作品があるとのこと。しかもジャンルは"男の子向け"の特撮シリーズの最新作!大義名分を得た少年はその作品に興味があった事も手伝ってついに親に映画を見に行きたいと希望を伝え、某日、祖父と一緒に映画を見に行くことになりました。そう、伝説の作品『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』同時上映『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』へ...
トラウマの元凶 東宝がとち狂ってた時代
さて、そんな少年が見に行った映画、『劇場版 とっとこハム太郎 ハムハムランド大冒険』同時上映『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』、結論から言うとお目当てのとっとこハム太郎の映画の内容は完全に飛んでます。なんとなく「ハム太郎が不思議な世界を冒険する」といった大筋は覚えていますが、さわりは完全に飛んでます。一方『ゴジラ』の方は耳を塞ぎながら見ていたことを覚えています。ただでさえ、歴代でも最"恐"と呼ばれるゴジラです。ゴジラといえば「核実験の影響で巨大化した生物」というのが一般的なのですが、この作品のゴジラ『太平洋戦争で犠牲になった人々の怨念の集合体』で『戦争犠牲者の叫びと無念を現代人が忘れ去ってしまったから』暴れ始めたという大変殺意の高いゴジラで、デカい図体のくせして中に人がいることを確認した病院を一度攻撃しないそぶりを見せてから攻撃してビルごと人を押しつぶすだの、学習能力が高いから同じ技は効かない(というか避けてくる)だの、歴代でも屈指の『明確に殺意を持った』ゴジラでした。もう明らかに幼稚園生向けゴジラではないです。(昔はシェーッとポーズをとってたりしたというのに)何を思ってこのラインナップにしたのか、どこの層がターゲットだったのか、特撮ファンは幼児向けアニメを見せられ、幼児は歴代でも屈指の恐怖を誇る怪獣特撮を見せられ、誰も幸せになれなさそうなこの組み合わせ。(このあと、劇場版ハム太郎は第3作目まで『ゴジラ』と同時上映、第4作目は『犬夜叉』と同時上映だったそうです。多少マシになったとはいえ、『犬夜叉』も血の雨が降る系の妖怪戦国ファンタジーです。だからなんで同時上映作品が変更になっても対象年齢が微妙に違うのか)
さて、『ゴジラ』といえば怪獣映画です。重々しい重低音、怪獣たちの恐ろしげな声や光線といった技の効果音や爆発音、恐怖を煽るように設計されたBGMが轟き、少年の私にとっては「うるさいし暗いし怖いし何これ!!??」と半泣きでした。
これがトラウマとなって長い間映画館と言うものを倦厭していたように思えます。全くいかなかったわけではありませんが、観に行く前や映画の待ち時間には「帰りたい...」と思っていました。結局、明るさや音量を調節でき、途中停止してトイレにもいける、程々の大きさの家のテレビで映画を見るスタイルの方が好ましいと感じていました。
転機1:好きな映画を一人で見ていいんだと言う気づき
トラウマの影響で映画館への足取りは重く、家の近所には映画館がないので基本的には親同伴で見る必要があり、そういった理由から自分の好きなアニメや特撮のシリーズであっても、映画にはあまり興味を示さなくなっていた中学生の自分に転機が訪れます。家の近くに映画館が併設されたショッピングモールが開設されたのです。そしてある日、親や妹に誘われて映画館に連れてこられました。しかしどうしても二人が見たい映画に興味が持てず、ゲームセンターで時間を潰そうかなぁと思った自分の目にとある映画が目に飛び込んできました。『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』です。当時特撮、特に仮面ライダー好きであった自分でしたが、「トラウマから倦厭していた映画館。しかし、むしろ子供向けとされる仮面ライダーならむしろ楽しく見れるんじゃないか?」という思いと「親同伴じゃなければ思いっきり見られる!」という、名案が頭をよぎりました。思春期の男の子は複雑なのです。親や友達に「まだ仮面ライダーなんて見て」と揶揄されたくないのです。しかし、一人なら何も言われません。早速親を説得して一人で別の映画を見ることに、時間的に近い回を選んで終わった後の待ち合わせ場所も決め、いざ「見にいくぞ!」と気合を入れた時、自分の目に偶然同日に映画館に来ていた友人グループの姿が見えました。先ほど書いたように、親や友達に「まだ仮面ライダーなんて見て」と揶揄されたくない私は逃げようとしましたがあえなく見つかり、流れで「何見るの?」という流れに。どう答えようかと思ってた自分でしたが、次の瞬間信じられない言葉が。
「俺たち、仮面ライダーの映画見るけど、お前は?」
大変驚いたことを覚えています。見る回も一緒。そして続けて友人が
「やっぱり特撮の映画も押さえとかないとな。面白いし」
なんとなく、肯定してくれたような、そんな気分になりながら同じ回を見ることに。内容は王道で途中感動で泣いてしまい、それも恥ずかしく思っていると見終わった友人が目に涙を浮かべながら
「いやー、やっぱ王道の展開は泣くわ...」
と一言。そんな友人を見て、「自分の好きは好きでいいんだ」ということ、「自分の感想は恥ずかしがらなくても良い」ということ、また「親の同伴から離れて見る映画の楽しさ」に気づきました。そんな特撮好きの彼とはいまだに仲良くしています。
転機2:MCUはいいぞ
さて、「映画館を友人と見る楽しさ」に気づいた私でしたが次の転機はアメコミ にハマったことでした。アメコミ 好きの友人がお勧めするデッドプールというキャラのことをwikiで調べてたいたら好みにどハマりし、そこから派生するようにアメコミ に、そしてその映画にハマっていきました。そして『マーベル・シネマティック・ユニバース』(MCU)にハマり、それまで公開されていた9作ほどを見切ってしまい、続編を待ち遠しく思っていました。それまで「一人で見る映画」というものに気後れしていましたが、「そんなこと言ってる場合じゃねぇ!続きが見たいんじゃぁあ」という気持ちと、「家で一人で見てるのとほぼ変わらないのでは?」という気持ち、またそれまでに「一人での外食」といった家族や友人を伴わない行動に慣れてきたこともあり、「観に行くか!!」となりました。当時、アメコミ について話をできる友人はほとんど周りにおらず、そういった環境も一人で映画を見に行くことを後押ししました。
映画館で見ることとは?
結局のところ、「友人が教えてくれたオタクとして大切なこと」と「続きが気になるオタク精神」から一人映画を趣味とすることとなったわけですが、やはり映画館での映画はいいなぁと思うことが3点あります。
まずは音響、
幼少の頃あんなに怖かったゴジラですが、原因に重低音があったように思えます。しかしこの重低音がいいのです。一般的な家庭では味わえない重低音、音圧、そういったものが耳だけでなく体全体に叩きつけられるのです。映画というものは映像に効果音やBGMを組み合わせた総合芸術です。そうした芸術を100%を超えて味わえるのはやはり映画館ならではだと思います。
次にライブ感
周囲に自分以外の人がいるという環境での映画は確かに少しムッッとすることもあります。携帯の明かりがついている人、ルールを守らず飲み物を持ち込む人(しかも炭酸水。炭酸飲料でもなく炭酸水。いや、気遣ってゆっくり開けてるけど気遣うポイントはそこじゃない)、どうしても騒いでしまうちびっこ(これに関しては仕方がない。ただ、R15とかの作品のときは親御さん考えていただけると...)、こうしたことがいやで映画館は好かないという人がいるのはなんとなくわかります。しかし一方で、「他人がいてよかったなぁ」と思うことも多々あります。例えばギャグシーンで全員クスッとなったり、心臓に悪いシーンで全員驚いたり、見せ場のシーンで全員息を飲んだり、映画を見た後興奮冷めやまぬまま感想をなんとなく言い合ったり、そうした一体感はもはやその場でしか味わえません。
そして最後に、最新作を大画面ですぐに見れる
上にも少し書きましたが、やはり最新作は気になるものです。もちろん、半年や一年待てばDVDやBlu-rayのレンタルで数百円で見れたり、もしかすると地上波で放映されれば無料で見れるかもしれません。しかし、やはり最新作はすぐに見たいですし、最新作でないと味わえないこともあります。例えば、MCUシリーズにはエンドロール後におまけのシーンがあり次回作について気になるような数十秒の映像がイースターエッグのように隠されていました。この驚きは上のライブ感にもつながりますが、最新作でないと意味はないのです。また、最新の映画は最新の技術を詰め込んだ作品です。そうした最新の撮影技術を大画面で見ることができるというのは映画館ならではの醍醐味です。
蛇足ですが、今後映画を見る方へ。
エンドロールは余韻に浸ったり、映画製作関係者を見たり、その後の特典映像を見たりと様々な楽しみ方をしている人がおりますので、「終わったから」気が抜けてしまう気持ちは重々わかりますが、静かに退室いただけると幸いです。
最後に
現在コロナウイルス関連の自粛の影響で数々の映画館が危機に瀕しています。ただでさえ娯楽の多様化やサブスクといった新たな料金形態の登場で映画館の数が減少している現状に追い討ちをかける形となります。しかし、映画館で見る映画は自宅では決して味わうことのできない体験が詰まった素晴らしいエンターテイメントです。こうしたエンターテイメントが末長く続くことを祈って筆を置かせていただきます。
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