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マスプロダクトのない生活:デンマーク郊外のショッピングストリート

こんにちは。デンマークのコペンハーゲン大学で、研究者をしている姫岡といいます。早いものでデンマークに来て約1年ほど経ちました。

ちょっと今回は家の近所を歩いて、北欧の『幸福度』について考えてみた、という散文です。

良い週末=散歩をする

国際幸福デーの3月20日に世界幸福度ランキング2019が発表されました。
デンマークは今年も変わらずぶっちぎりの上位(2位)で、日本は58位でしたね。

デンマーク人の”幸福度”がどうしてこんなに高いのか、Sakiko Masudaさんがこんなnoteを書かれています。

今回そこまでこの話には踏み込まないので、失礼なくらい雑な要約をすると、

『彼らデンマーク人は友達、恋人、家族とゆったりと時間を共有することでとても幸せを感じるけれど、日本人はお金を使って何かを得た時にやっと幸せを感じられる』

ということだと思います。

これ!本当にそうなんです!
本当に来たばっかりの時はかなり驚いたんですが、彼らにとっての『良い週週末』とは
土曜は友達と公園を散歩して、日曜は家族と一緒にお昼ご飯を食べる
とかなんですね。「週末どうだった?」と聞くと「いやー、良い週末だったよ」のあとに、この太文字部分がかなりの確率で返ってきます。

フェス行ったとか、こんな良いレストラン行ったとか、そういうことじゃないんだ…

というわけで、デンマーク週末の王道アクティビティ、散歩は果たして楽しいのか試してみました。友達とじゃないけど。

Jægersborggadeを散策

私はいまNørrebro(ノアブロ)というエリアのBjelkes Alle (ベルケス エレ)という通りに住んでます。Copenhagen中央駅からだいたい2.5kmなので、中央駅を東京駅だと思えば水道橋、半蔵門、溜池山王、汐留くらいの距離感です。コペンハーゲンは小さいので東京と比べるのもおかしな話ですけど、良いとこ住んでるな。。
ただ多分「地球の歩き方」とかだとここは「郊外エリア」

このBjelkes Alleの隣にJægersborggade (ヤァースボーゲー)という通りがありまして、(最近気づいたんですが)ここショッピングストリートみたいになってるんですね。
ここを歩いてみました。

(ちょっと見えにくいけど両側に看板が並んでいる)

小さなお店が所狭しと並んでいる通りで、いろいろな嗜好がひしめき合っています。例えばこんな感じ

左上から時計回りに
1. 何かリキュール的な液体を売っているお店。(ちょっとよく分からなかった)
2. チョコレート屋さん Ro Chokolade. (http://www.ro-chokolade.com/)
お菓子に詳しい友達にあげたら喜んでもらえたので美味しいはず…
3. 主にオルガニックの乳製品を売っているお店
4. 生花、ドライフラワー両方を売っているお店

1. ハンドメイドの洋服のお店
2.セラミック雑貨のお店。主に花瓶とカップ(Keramikerはセラミックから)
3.こちらも植物のお店だけどドライフラワーなどはなく、大きいものが多い
4.スニーカーショップ+カフェというなんとも謎な組み合わせのカフェ

コインランドリーもありました。デンマークでは一家に一台洗濯機を置く文化がない(その代わり食洗機はほぼ確実にある)ので、コインランドリーがたくさんあります。
ただこういう絵が描かれているものはあんまりみないかも…?

そしてここ、flacoDesignというハンドメイドの照明屋さん。
アンモナイト(オウムガイ?)の形の照明とか素敵ですよね。すごい欲しいんですが、インテリアコーディネートの才能が絶望的にないので諦めてます。

そして通りの端にはこのお店。Coffee Collective. 毎日本当に賑わっていて、コペンハーゲンにも複数店舗のある人気店です。
ここの豆は酸味とフルーティーさが特長で、苦味はかなり抑えられてます。特に水出しで淹れると、少しとろみのついたコーヒーになってとんでもなく美味しい。

店内もこんな感じで北欧らしいおしゃれなデザインになってます。
(この日は天気がよかったので皆外で飲んでいて写真が撮りやすかった)

ちなみにJægersborggadeから1分くらい歩いたところには、渋谷にもあるビールバーMikkellerがあります。

『マスプロダクトがない』ということ

今回Jægersborggadeを歩いてみて思ったことは、相当ニッチなお店が多いなぁということです。スニーカー&コーヒーとか正直言って意味が分からないし、flacoDesignなんて果たしてどれだけ売れているのか。
flacoDesignは好きなんで頻繁に見に行っているんですがほとんど変わらないんですよね商品が(なくなったらすぐに商品を補充している気はしないし…)

このニッチなお店たちを見ながら改めて考えてみると、コペンハーゲンはチェーン店がとても少ない街だということに気付きました。Strøget(ストロイエ)という中心部の商店街(距離的に銀座くらいの位置?)には確かにRoyal Copenhagen, LOUIS VUITTON, PRADA, Salvatore Ferragamoと超有名店がありますし、つい最近UNIQLOも出店しました。

ただ、Strøgetなどの「ど真ん中」をちょっとでも離れると本当に巨大なショピングセンターはなくて、割と個人店が多いです。

そうなると必然的にマスプロダクトを手にする機会が少なくなってきます。もちろん探せばあるけど、基本的に近くにあるのはマスではないもの。
(追い追い書きたいと思ってるんですが、デンマークのおもちゃ、日本に比べて本当に種類が少ない)

マスプロダクトがかなり少ない理由として、まず一つは建築物の建造規制です。古い建物が残るコペンハーゲン市街では、古い建造物の取り壊しが原則禁止です。内部のリノベーションは可能なんですが、もともと家だったとことをショッピングモールにするのはなかなか難しい。
さらに景観を損ねないために高層建築物の建築も、非常に厳しく規制されています。したがって大きな店舗を構えにくい。

もうひとつ思いつくのは人口規模の小ささでしょうか。デンマークは全人口580万人ほどで、コペンハーゲンには60万人ほど(ともに2017年)。これはそれぞれ福岡県の人口、鳥取県の人口程度です。詳しいことは分からないですが、多分この人口規模でマスプロダクションをしてもあんまり旨味がないんじゃないでしょうか。

マスプロダクトがないことで被る不便さは、たとえば値段の高さです。デンマークの家具は本当に高い。唯一、JYSK(ユスク)という大手家具メーカーがあり、ここは安いのですが、もう劇的にダサい。『北欧家具』のイメージからはかけ離れた、オフィス用品店みたいな感じです。

ただそのマイナス点がある一方で、マスプロダクトという『簡単な選択』がないからこそ、自分が好きなブランドや作品をじっくり見つけるということがものすごく自然にできる。

北欧というと『雑貨』が有名ですが、こちらに引っ越すまでは北欧の人たちはわざわざ高いものを選り好みして買っているんだと思ってたんです。ちょっと鼻につくよなー、とも。
そうじゃなくて、そっち方が生活の近くにあるんですね。

私はファッションとインテリアのセンスが絶望的なので、いままで考えたこともなかったのですが、自分の好きな、小さなブランドを見つけるのってきっとすごく幸せなことですよね。
自分の心身にしっくりくる世界観や物語をもっているプロダクトを作り手から直接買って、それが応援にもなって、という関係を長く続けていく。

日本のように溢れてないからこそ、確かにひとつひとつは高いけれど、多種多様なデザインのものから自分の本当に好きな作品を自然と選んで使うような土壌があるんだなぁ、と。それって幸せなことだなぁ、と思いました。

良い週末でした。明日から旅行でストックホルムでーす

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