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「人の動き」とは

こんにちは。ムーヴメントやダンスの教育・研究に携わっている橋本有子です。初回の自己紹介に続き、今回からは本題である奥深〜い「人の動きの世界」ついて書いていきます。

子どもの頃の良くない癖が、今では仕事に

私は「人の動き」に子どもの頃から興味をもっています。電車の中で、瞬きせず人を凝視しているのを母親によく、お願いだからやめるように言われてきました。なんでも、大きな目でギョロッと見る癖があり、小さい体で随分と威圧感があったそうで(笑)

そんな注意を受けていた子ども時代ですが、今では当時の興味が膨らみ繋がって、「人の動き」を観る、言語化する、記譜(記号)化することができる「ラバン/バーテニエフ」を軸に、様々な場で幅広い年齢層の方々にダンスやムーヴメント指導をしたり、研究をしています。

そして実はこの「人の動き」、多くの分野の土台になっているのです。

人は、生きる限り動き続ける

当たり前のことですが、人は動いています。いわゆる「行動」を起こそうと思っていなくても、歩く、立つ、座る、手を伸ばす、笑う・・・全身の動きであれジェスチャーであれ、何かしらの動きをしています。あるいはじっとして居ると思っても、呼吸は続けています。私たちの人生において、完全なる「静止」はありません。

下の絵のように映像と写真に例えるのなら、人の動きとは止まることのない映像です。いわゆる「姿勢」や「ポーズ」は、映像である人の動きの瞬間を切り取った静止画になります。

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「人の動き」の研究

ダーウィン(1809-1882)は人と動物の行動の共通点を挙げ、「動きそのもの」を観察しました。その後、今も残るラバン/バーテニエフ・ムーヴメント・スタディーズ/システムの創始者であるラバン(1879-1958)は動きの研究をさらに重ね、次のように言いました。

‘The astonishing structure of the body, and the amazing actions it can perform, are some of the greatest miracles of existence. Each phase of a movement, every small transference of weight, every single gesture of any part of the body reveals some feature of our inner life.’ ―Rudolf von Laban

「身体の驚くべき構造と、そしてそれが実行できる素晴らしいアクション(動作、身振りなど)は、この人間存在の最大の奇跡である。各段階の動き、体重移動、身体の色々な部位のジェスチャー、いずれも我々の内なる人生の、何らかの特徴をあらわにしている。」―ルドルフ・フォン・ラバン

ラバンは、すべての動き一つ一つにドラマがあり、人生が詰まっていると考えたのです。人の動きを探求することで、人間の存在や生きる意味を探求したかった彼は、生涯にわたって「人の動き」の観測と研究を重ねました。哲学、心理学、幾何学、数学、解剖学などあらゆる分野を統合しながら「動き」の言語化、記譜化、そしてシステムづくりに身を捧げました。そのシステムは、アートとサイエンスの絶妙なバランスを保ち「理論と実践の境界を超越している(Bradley, 2009)」とも言われています。

「人の動き」の学びと世界の見え方

私自身、動きの学びを始めてから、物や世界の見方や考え方が変わりました。住んでいる世界がより鮮やかに、生き生きとしたものに感じるようになりました。人との関係性も、一人一人の人間存在を「ありのまま」に「特徴」としてニュートラルに捉えられるようになりました。それゆえ、「好み」はある意味相手を判断する自身の問題であると考えられるようになり、人間関係もより上手くいっているように思います。

「見えている世界は皆違う」「そもそも人は皆違う」とはよく言いますが、それが本当の意味で分かるようになったのは、動きの学びを始めてからかもしれません。人の動きは、おどろくほど個人によって違うのです。きめ細やかに物事を捉える、考える、といった様なことをまさか「動き」の学びから得るとは考えもしませんでした。

まとめ

人の生活、人生は「動き」に埋め尽くされています。人の動きが止まるときは、肉体を手放す時、死ぬときでしょう。私たちは生命の誕生のそのときから、動き続けます。その「動き」を主役として中央に置いて、観察や研究を続けていくこと、また向き合っていくことは、人生について、私たちの生きる意味について考えることと同じとも言えると、私は考えています。

 ‘Movement is Life’  ‘Life is Movement’  ― Rudolf von Laban
「動くことは生きること」「生きることは動くこと」


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