死んでから始まる物語。◀オリジナル小説 エピソード3▶
校舎を出た私達は近くの公園へと移動した。
「ごめんね、いきなり。俺は、北嶋 聡。」
「大丈夫だよ。私、桐島 弥与唯。弥与唯でいいよ!」
「じゃあ俺も聡で。」
「ヤバ、なんかデジャブった。」
そう言いながら湊は一人で笑っていた。
なんかこの2人が親友って不思議な感じだ。
湊はクラスでも目立つタイプだとしたら、聡はバリバリの委員長の気質っぽい見た目だからだ。
「二人はいつからの仲なの?」
「小学校から!」
「ただの腐れ縁。」
二人が同時に口を開いた。
「聡!腐れ縁ってなんだよ!親友だろ?」
「たまたまずっと同じクラスだったってだけだろ?腐れ縁だろ。」
「仲良いんだね!」
「うん!」
「よくない!」
二人のやり取りを聞いていて私は笑ってしまった。
「どこ行こっか、次」
「あ!俺、病院行きたい。最後に母さんのとこ行きたい。……親不孝者だよな俺。母さんより先に死んじゃうなんて。」
「バーカ。俺もそうだよ。だから謝りに行くんだろ。今から。過ぎたことはもうどうすることも出来ないんだ。行くぞ。」
心なしか湊は聡に会ってから少したくましく見えた。
松山総合病院。
3階の326号室。
私たちにも付いていて欲しいと聡は言い皆で病室に入っていった。
聡の手は震えていた。
白いベットに横たわっていた聡のお母さんは管に繋がった痛々しい針を腕に刺しながら本を読んでいた。
「母さん。ごめん。母さんより先に…。産んでくれてありがとう。短い人生だったけど楽しかった。母さんに会えてよかった。母さんの子でよかった。育ててくれてありがとう。大好きだよ母さん。これからも。ずっと。」
バタバタと廊下から足音がし、看護婦が聡のお母さんの元にやってきた。
「北嶋さん!息子さんが学校で事故に遭ったと連絡がありました。……残念ですが………。」
看護婦の言葉で聡のお母さんは取り乱し暴れだした。
「嘘でしょ?聡!聡はどこにいるの!聡に会わせて!ねえ!嘘だって言ってよ、ねえ!」
看護婦が数名やって来て
暴れだすお母さんを抑えだした。
「河本さんっ!ちゃんと考えて言いなさい!新人でもそれくらい分かるでしょ!」
報告にきた新人の看護婦は先輩の看護婦に短く説教をされた。
「聡を少し休ませよう。」
湊は聡を連れ、屋上に向かった。
「何で弥与唯が泣いてんだよ、ごめんな付き合わせて。」
気づいたら堪えていたはずの涙が溢れ出していた。
「大丈夫。ごめん泣いちゃって…」
「……俺の母さん鬱なんだ。父さんは外で女作ってオマケに子供まで。しかも母さん初期段階の癌が見つかって。俺が今そばにいてやらないといけないのにな………。」
「そうなんだ。大変だったんだね。」
「うん、母さん一人で大丈夫かな。」
「聡、あんま自分追い詰めんな。お前の母さんもそんなの望んでないはずだ。」
「うん。そうだな。もう少ししたら行くか。次は弥与唯の…」
「わー!久々に外出れたなー!あれ?こんな時間に若者3人が何してんだ?ー」
後ろを振り返るとツインテールに結んだ子がこちらに指をさしていた。
「ねえ、もしかして!」
「あれ?私の子と見えてるの?」
「あなた名前は?」
「嘘!私、加藤 あやめ。」
「私は弥与唯。こっちが湊でもう一人が聡。あやめって呼んでもいい?」
「も、もちろんだよぉー……」
あやめはそう返事をし泣き崩れてしまった。
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