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月またぎレビュー「7月→8月」

こどもたちの夏休みもう中盤に差し掛かり、そろそろ避けられない切なさが込み上げてくる頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。猛暑日が記録的に続くなかこれを書いていたら、ことごとくインドアな自分の生活が際立ってきました。
さて、7月は見れたものの数自体は少なかったのですが、新しい展覧会がはじまったりテレビが夏クールに入ったりと、トピックは多めかもしれません。【本】ではなぜか2冊とも「オカルト」に触れていることにも注目ですよ!


【アート】
「鈴木理策写真展 意識の流れ」 @東京オペラシティアートギャラリー
水の動きを捉える/捉えない、ピントを合わせる/合わせない、といった静と動のギリギリのせめぎ合いがひとつの画面の中で対比され、実に美しかった。透明感のある色の力もあって、もはや神がかっているように見えました。最初の展示室で出迎えてくれる「海と山のあいだ」のシリーズは特に好きでした。カタログはedition nordより、会場限定版が4,500円、一般流通する通常版は8,000円だとのこと。9/23(水)まで。
また、ギャラリー小柳でも「水鏡」の展示が開催中なので合わせてぜひ。こちらは9/5(土)まで。

「おとなもこどもも考える ここはだれの場所?」 @東京都現代美術館
出品者のひとり、ヨーガン・レール氏は、夏休みの家族向け企画といえども、ただこどもが走り回るような展覧会にはしたくなかったそう。奇しくも会田家の作品を巡る顛末によって示されたように、美術について、美術を通して社会を見ることについて、そして美術と社会と自分との関係について、この展覧会では「考える」ことができるようになっています。そしてなにより「考える」=「難しい」になっていない。どの作品も鑑賞の可能性があらゆる方向に開かれているのがすばらしかった。10/12(月)まで。


【映画】
「攻殻機動隊 新劇場版」

"第四の攻殻"として始動した「攻殻機動隊 ARISE」を引き継いだ新劇場版。時系列的には過去2度の映像化のさらに以前なのですが、過去2作が伏線となるようなシナリオもあり、しっかりと攻殻の歴史に連なるものとして完成していました。
3度の映像化にも耐えうる原作の設定やキャラクター、そして監督や映像化を取り巻くひとたちそれぞれが信念を持ってやっていることが伝わってきます。

「マッドマックス 怒りのデスロード」

まず、ネットで流れてくるみんなの楽しみ方がおもしろい。それぞれ自分の趣味に引きつけた解釈で楽しんでいるようです。「ほぼラブライブ!」だったり、「だいたい宝塚」だったり、「ウォーボーイズ萌え」だったり。こんな映画他にはないんじゃないでしょうか。ぼくはというと、スーパーマリオの戦艦ステージの強制スクロールを想像して、素早い判断が要求され、かつ後戻りできないというハードモードに手に汗にぎっていました。ちなみに、同じように思った人いるかしらと検索したところ、戦艦ステージはありませんでしたが、マリオカートのパロディはありました。


【テレビ】
「廃墟の休日」
テレ東の金曜深夜ドラマ枠に廃墟が登場。安田顕や田辺誠一らが廃墟を巡ります。「廃墟」と「遺跡」の違いは?という本格的な問いかけもあったりして、廃墟好きにはたまらないでしょう。けっこう癒されます。

その他夏アニメ、、、

「ガッチャマンクラウズ インサイト」
変身後の造形はあんまり好きではないですが、1期よりもさらに見える形で先鋭的な社会実験や今までにないヒーロー像が盛り込まれています。
「Charlotte」
Keyの新作として話題なので見ています。まあぼくみたいなAIRもCLANNADも通っていないにわかなアニメファンからすると、ちょっと古臭いような。しかしそこにお約束というか、妙な安定感も感じます。
「がっこうぐらし!」
いかにも萌え絵の日常系だと思って流し見ていたら、いつのまにかハードボイルドに。萌えアニメ×絶望というのは見ててすぐわかるので、さらに斜め上をいく展開を期待したいです。
「乱歩奇譚」
没後50年でパブリックドメインとなった江戸川乱歩を翻案。それにしても、そもそも乱歩自体に由来するのか、監督らがうまくやっているのか、アニメ化ははまっているように思います。少なくとも「乱歩的」なビジュアル文化は、今でも一定層を確実に引きつけており、アニメの視聴層にも少なからず重なっているとはいえるでしょう。
「下ネタという概念が存在しない退屈な世界」
まっとうに社会派で風刺的なのだけど、露骨に下ネタだらけなので人に勧めずらい。
「オーバーロード」
MMORPGものは、バトルよりも虚構内虚構として扱ってくれるものが好き。今のところそんな感じがします。ゲームとしての設定と世界観が、少しづつずらされていって、、、という展開でしょうか。


【音楽】
「The Civil War」 Matmos
変態エレクトロデュオとして知られるMatmos、なんと7月に来日ツアーがあったんです。ぼくはスーパーデラックスの公演に行ってきました。全8時間に渡るイベント(ぼくは後半から行きました)。対バンでは日本のノイズミュージックシーンも楽しむことができました。それからまさかのアイドルも登場。(アイドルとの)チェキ会までやっていました。
で、念願のMatmosのライブだったので、2003年のですがぼくのアルバムベスト3に入りつづけている「The Civil War」を紹介しておきます。
↓は中でもとりわけキャッチーなやつ。


【本】
『写真のボーダーランド: X線・心霊写真・念写』 浜野 志保
実は読んでいないんですが、今年3月の発売以来気になり続けていた本。B&Bでトークイベントがあったので行ってきました。なんともオカルティックに聞こえますが、写真が芸術だと認められるその本質をついているのでは?と思える内容だったのではないでしょうか。とはいえ、まず本を読まないと。。。

『美術手帖 2015年 08月号 特集:ファッションの現在地』
ファッションはアートを「取り入れ」ないほうがいいとかねてから思っていますが、山縣良和氏、坂部三樹郎氏らを旗手として、「東京ニューエイジ」周辺の彼らが手がける最近の日本のファッションは、そこから一線を画す形でおもしろい展開をしているように思います。
表紙はNORIKONAKAZATOが手がけるオカルティックなスタイル。今年3月、「東京ニューエイジファッションショー」「絶・絶命展」で見て、ぼくも忘れられずにいたコレクションです。美術手帖にはこういうのをポンんと表紙に持ってくるセンスを持ち続けてほしいし、「美術」と「美術以外」の境界線上を果敢に攻めていってほしいものです。
また、民事再生法の適用を申請した美術出版社はこの8月から新体制で新たにスタートを切りました。CCCグループをスポンサーに迎え、今後どのような展開をしていくのかにも注目。

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