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2017年のこと

2017年のこと。印象に残ったもろもろを振り返ります。

【映画】

「美しい星」 吉田大八 監督 (三島由紀夫 原作)
60年代日本のSF文学のレトリックが存分に生かされていてとてもおもしろかったです。登場人物全員怪演。

「虐殺器官」 村瀬修功 監督 (伊藤計劃 原作)
フィクションだと思っていたディストピアがいつの間にか現実の世界を侵食するかのようなリアリティがありました。

「メッセージ」 ドゥニ・ヴィルヌーヴ 監督 (テッド・チャン 原作)
SFの要素がしっかりつまっていました。より高次元の存在を示す「時間」の描写は圧巻。

過去の名作を見に行けたのもよかったです。
「皆殺しの天使」 ルイス・ブニュエル 監督
「For Example」 荒川修作+マドリン・ギンズ


【舞台、ライブ】

F/T17 アジアシリーズ vol.4 中国特集『忉利天(とうりてん)』
今年のF/Tで一番の見どころは中国特集だったのではないだろうか。といっても、これしか見れなかったけど、現代性と神話性とアングラ的な美学が混然となった舞台は大きなインパクトがありました。

サンガツ「Catch & Throw」
すばらしいライブでした。「音楽」が、モノの放つ「音」に還元されていっているようで、日常的に音楽を聞かなくなったぼくの気分にすごくあっていた。


【本】

『Rei Kawakubo/Comme des Garcons Art of the In-Between』
メトロポリタン美術館で開催された展覧会のカタログ。1980年代の初期のものから直近のコレクションまでが展示され、川久保玲という異端の才能に迫る展覧会。カタログには、ファッションの写真表現についても極めてアーティスティックな視点で、トップクラスの写真家とコラボレーションしてきた野心的な挑戦がアーカイブされています。

『羽永光利 一〇〇〇』
1950年代後半から1980年代にかけて、前衛芸術から社会運動まで、時代の激動を撮り続けてきた稀代のドキュメント。その膨大な情報量が落とし込まれるのが、「一〇〇〇文庫」というまさに紙の塊(かたまり)なのも必然を感じます。

『勉強の哲学』 千葉雅也
勉強するということは周りの「ノリ」から外れて(浮いて)、新しい自分に変身するということ、そのための実践的な手引書。仕事論、コミニュケーション論としても刺激的に読めて、今年一番人にすすめた本です。

『中動態の世界』 國分功一郎
人の「意志」とはどこからくるのか。言語を詳細に検討し、「意志」というものの不確かさを論じます。自分や他人の行為に対してより開かれた解釈を与えてくれる名著。

『ゲンロン0 観光客の哲学』 東浩紀
「観光客」という立場を導入し、二元論で物事を分けるのではない社会の捉え方、関わり方を提示します。ぼくらがよりよく生きるための指針となる一冊です。(先行して出版されたエッセイ『弱いつながり』の理論的な展開となっています。)


【アニメ】

「メイドインアビス」
ボーイミーツガールのファンタジーという超定番でありながら、大穴の深層へと降りていくというストーリーがそのまま世界観の深さにもなっている。そしてことごとく歪むかわいいキャラクターが、自己と向き合う切実さを物語っていてすばらしかったです。続編へ。

「少女終末旅行」
はるか未来から現文明に出会いなおす、未知との遭遇の瑞々しさに胸が高なる作品。「メイドインアビス」の下方向への移動に対し、こちらはより上層を目指す移動。その対称性も興味深かったです。

「宝石の国」
原作のグルーブが損なわれることなく、3DCGでたしかなアニメーションの見応えが生み出されていました。

「恋と嘘」
強制異性愛がディストピアとして描かれるの、けっこういいんじゃないかと思ったんですが、PVはひたすら恥ずかしいですね。。。
実写映画は見てません。

その他、「けものフレンズ」「亜人ちゃんは語りたい」「セントールの悩み」「小林さんちのメイドラゴン」「僕のヒーローアカデミア」など、「特異」な他者とどう共存するか、というテーマが複数展開されていたのも印象的でした。


【アート】
Chim↑Pom「Sukurappu ando Birudo プロジェクト 道が拓ける 展」 キタコレビル
Chim↑Pomの都市論の集大成。現実の「東京」のスクラップ&ビルドに対応しながら、着々と普遍性を高めているのが驚異的でした。隅々まで魅せるすばらしい展覧会。プロジェクトの全容は、記録集『都市は人なり 「Sukurappu ando Birudo プロジェクト」全記録』(LIXIL出版)にまとめられています。

「リボーンアート・フェスティバル2017」 宮城県石巻一帯
2011年の震災で大きな被害を受けた石巻での芸術祭。音楽プロデューサーの小林武史氏主催のもと、ワタリウム美術館による作家のセレクトで開催されました。全部は回れませんでしたが、被災地の、復興と爪痕が同時に存在するありさまを丁寧に見られる構成と、そんな場所に応えた作品が多かったのがとても印象に残りました。

「反魂香」 西方寺
ゲンロン カオス*ラウンジ 新芸術校上級コース成果展の連動企画として開催。落語「反魂香」をモチーフに、ひとつではない過去や現実に通路を開くような展覧会でとてもよかったです。落語の持つ語り口や、死者のための祈りや儀式が芸術に戦略的に重ねられているとても濃いキュレーション。漂う煙と匂い、たぶん展覧会とは関係ない扉の向こうの書き物の音やチェロ(!)の音が効果的でとても引き込まれました。 後日開かれた「再演」にも行きました。

奈良美智「for better or worse」 豊田市美術館
絵はもちろん、蒐集物を使ったインスタレーションが非常に目を引きます。ああこの人はインスタレーションの作家だな、というのがよくわかる。それから年代を追うごとに、絵の線やモチーフが変化がしていく様子をじっくり見れたのもよかったです。

その他、印象深かった展覧会、、、
柳本悠花 個展「さまよう むこうがわ」 ゲンロン カオス*ラウンジ五反田アトリエ
作品買いました!
谷口暁彦「超・いま・ここ」 CALM & PUNK GALLERY
「ジェイ・チュン&キュウ・タケキ・マエダ 」 statements
「1968年 -無数の問いの噴出の時代-」 国立歴史民俗博物館
「エクスパンデッドシネマ再考」 東京都写真美術館

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