ブルックスの法則~クリエイターはひとりいればいい、という話
なぜYellow Houseはほかの制作会社より10倍以上納品が早いのか?
弊所Yellow Houseが3日で制作したモーショングラフィックスを、試しに映像制作会社に見積させたことがある。
費用は25万円、納期は1カ月半、という回答を得た。
営業日数に換算すると、週5日対応と仮定して30日以上かかる計算だ。
なぜぼくが3日で終わらせた仕事を、制作会社が作ると10倍以上の日数がかかるのだろう?
当然だが、ぼくが制作会社のスタッフより10倍有能だ、というわけではない。
答えは単純で、制作会社は複数のスタッフで分業するからである。
脚本家/演出家/イラストレーター/モーショングラフッククリエイター/動画編集者、そうしたチームをディレクターがまとめて制作する。そこに営業やバックオフィスの人件費や手続きが上乗せされるわけだ。
対してYellow Houseでは、ナレーションなど対応できない特殊技能を除き、ぼくひとりで全工程を制作する。
逆説的だが、だからこそクオリティをそのままに、他の追随を許さない速力を叩き出すことができるのである。
関わる人間が増えるほど納期が延びる
PCへの単純な入力作業があったとする。作業速度は投入人員の多寡に比例して向上するだろう。
営業の場合も同様だ。人員を増やせば架電/訪問数は増えていく。
建設や製造、小売りなど、世にあるほとんどの仕事の生産性は、人員の数によって算術的に向上する。戦争は数だよ、兄貴理論である。
しかし、そうでない仕事もある。
いわゆる専門職がそれだ。
システム開発。Web制作。デザイン、ライティング、前述のモーショングラフィックス。
こうした専門的業務は、作業人員を単純に増やしたところで納期は縮まらないばかりか、全体の進捗は必ず遅れることになる。大量生産の製造業とは異なり、マニファクチュア的分業は効率性の面で相容れないのだ。
システム開発する際、プログラム知識のない人員を一億人集めようが十億人集めようが一兆人集めようが、なんの役にも立たない。Webでもデザインでもモーショングラフィックスでも同じこと。仮に熟練スタッフを集めたとしても、投入した人件費に見合う成果を上げることはできないだろう。
専門的なクリエイティブは、関わる人間が増えるほど進捗が遅くなる性質がある。
これが世にいうブルックスの法則である。
ブルックスの法則
賢明な読者諸氏ならすでにご存じのことだろう。ソフトウェア工学の第一人者、フレデリック・ブルックスによって提唱され、IT界隈では最もよく知られる定説のひとつである。
同法則を裏づける理由は3つ。
1)投入されたエンジニアが生産性に貢献するまでに時間がかかる
2)コミュニケーションコストの増大
3)タスクの分解可能性の限界
同法則は、システム開発のみならず、クリエイティブの分野でも応用可能だ。
前述のモーショングラフィックスの例だけでなく、例えばWeb制作会社でも、ディレクター/デザイナー/コーダー/エンジニアが分業することが多い。
だが、実際のところ、これらの作業はぜんぶひとりで担ったほうが納期は格段に縮む。
冷静に考えて、
デザイナーがAdobe XDでデザイン ⇒ コーダーがhtmlとCSSで再現する
こうした無意味な役割分担について、だれも疑問に思わないのだろうか。デザイナーがhtmlとcssで直接デザインすれば工数が減るし、そもそも進行管理とクオリティチェックを自分で行えるなら、ディレクターなど必要ない。
これをいうと怒られるのでだれもいわないことになっているが、野球やサッカーの監督と違い、クリエイティブ・ディレクターは経験もスキルもない素人が担うことがほとんどである。いてもいなくても進捗に影響がないばかりか、いないほうが作業がはかどることがほとんどだ。※詳細については「Webディレクター不要論」で検索されたし。
なんのスキルも知識もない素人がディレクションやに回り、見当違いの指示で現場が混乱・疲弊する光景は、クリエイティブの風物詩である。
制作会社が分業したがる3つの理由
制作を分担することで効率が下がることは明らかだ。
それなのに、なぜ、多くの制作会社は作業を分担しているのか?
理由は三つある。
1)そもそも全員スキルが低い
制作会社の多くは中小規模の事業者であり、賃金水準も低い。全工程をひとりでこなせるような万能型クリエイターが働くメリットはないため、有能な人材から独立していく。だから、非効率ではあるが、工程を細かいタスクに分解して、スタッフの職域を限定的なものにせざるを得ない。
2)制作会社からすると、スタッフのスキルは低いほうが望ましい
分業が非効率であることを重々理解しながら、敢えて分業させているパターンもある。
くり返すが、中小規模の制作会社は、スタッフの待遇が劣悪である。こうした環境で下手にスキルが高いスタッフを雇うと、独立や転職されるリスクが高い。採用もタダではないため、これでは困る。
解決策はひとつ。制作工程を細かく寸断して担当者を分けることで、横断的なキャリア形成を防ぐ。他社で通用しない、独立もできないニッチな人材に育成することで、低価格で長期間、隷従させることが可能になる。また、分業制を敷いておけば、万一退職されても被害は限定的だし、補充も容易である。
カール・マルクスの「資本論」ではすでにマニファクチュア的分業による弊害として労働が部分的なものになることで労働者の知性が失われ、資本家の作業場でしか機能できない存在になってしまう――という指摘がある。
分業制は雇用主側にとっては都合がいいが、従業員側にとってはスキルアップの妨げにしかならない。全力で脱出を図らないと早晩詰む――というのは、19世紀からすでにある話で、特段目新しい視点ではない。
スタッフを部品としか思っていない最悪のマネジメントだが、離職率が高く人員確保が難しい企業も必死である。企業倫理を問うても仕方ない。
※クリエイターのみなさんは早々に脱獄したほうがいい。
3)日本独自の商習慣
3つめの理由は、日本独自の商習慣の在り方に尽きる。
システム開発やクリエイティブの分野では、代理店やSES、ディレクターなどの管理職種が仲介に入ることが多い。制作会社でさえ、案件を丸ごとフリーランスにぶん投げているケースもある。いわゆる下請け/中間搾取構造だ。
中間業者やディレクター職は、実際に制作に携わるわけではないし、そのスキルもない。付加価値の乏しいマージンが重層的に発生するこうした悪しき商習慣は、日本の中小企業の生産性を低迷させる最大要因である。
結果、日本ではエンジニアやクリエイターの賃金が先進国に比してきわめて安い。優れた人材が外資に流れるため、非常に問題視されている。
生産性を上げたいならYellow Houseへ直接依頼を
中小規模の制作会社へ依頼するのは、費用の面でも納期の面でも不利益にしかならない理由は、おわかりいただけたことだろう。また、代理店を介するのもマージンが上乗せされるだけで、特に付加価値はない。
日本のこうした悪しき商習慣は根強いが、近年では金融アナリスト、デービッド・アトキンソン氏など多くの識者が、日本の中小事業者の多くが全体の生産性を下げる要因であることを指摘している。
日本の国際競争力を上げるためには、少しずつでも、こうした産業構造を改善していくことが肝要だ。
そのための第一歩として、個人ですべての工程を賄えるフリーランサーの活用を強くお勧めする。独立して仕事を受けているかれらは総じてスキルが高く、中間マージンも発生しないため費用も驚くほど安い。Yellow Houseなら、なおさらだ。
弊所Yellow Houseでは、すべての中間マージンを排除することで、きわめて良心的な低価格と高品質の両立を可能にしています。
Web、モーショングラフィックス、ライティング、デザイン、分野は問いません。
見積については、下記バナーよりお気軽にご依頼ください。よしなに。
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