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みんな、コンサルよりも自分を信じたほうがいい、という話

コンサルバブルは弾けない

コンサル会社が就職人気ランキングを席巻し、日本で唯一の成長産業といわれて久しい。優秀な学生はこぞってコンサルをめざし、それを受けてコンサル会社も採用増の構えで規模拡大を競っている。

consultant、すなわち相談役とか顧問と訳されるこの職種、いまやあらゆる分野/業種にいる。いてほしくないが、実際にワンサカいるんだから仕方がない。

総合広告代理店がそうだったように、流行の職種というのはそのうちバブルが弾けるものだ。コンサル業は、どうだろうか。筆者の考えでは、どうもほかの職種の流行とは毛色が違う気がしている。すなわち、このコンサルバブル、しばらくしぶとく続くのではないか――と踏んでいる。

というのも、他人の不安につけ込む同様のビジネスとして占い師が挙げられるが、科学的根拠がない四柱推命やタロットは数百年いまだに生き残っているし、日本のイタコもコンサルの一種といえるが江戸時代を起源としてなお現役だ。理論武装してよりそれっぽいことを喋れるコンサル業が、今後数百年、人間の生業のひとつとして生き残る可能性は、十分にある。いや、一般に占いや霊感商法に騙されやすい女性の社会進出が進んだ現代は、コンサルが活躍しやすい土壌が整っているとさえいえるだろう。

さらに、コンサル業は占い師やイタコと同じで、旨みのあるビジネスだ。元手不要で在庫や仕入れの概念がない。負債を抱えることがなく高利益率で、クライアントの業績が上がろうがどうだろうがノーリスクの経営が可能。しかも、コンサルを名乗るのに、特別な実績やスキルは要らないときている。名乗ればだれでもコンサルなのだ。地下アイドルやん。供給過多でザリガニみたいに共食いが始まるまでは、コンサルをめざす人間が減少に転じることはないだろう。

ただ、昨今のコンサル礼賛の風潮には思うところがあるので、まあ、花形職種に対する僻みと思っていただいて、もう少しお付き合いいただこう。

ぼくがいいたいのは、たったひとつ。

みんな、もう少し冷静になったほうがいいぜ、ってことだ。


東京決戦! コンサルVSクリエイター

賢明な読者諸氏ならすでにお気づきではないか? 在庫や仕入れが必要でなく、負債を抱える心配がない、名乗ればだれでもなれてしまう――そう、それデザイナーやライターなんかのクリエイターも同じなんですよね。

コンサルとクリエイターは、本質的な意味でとても似ている。横文字で偉そうな雰囲気だけ出して、クライアントの課題解決にあたるが実績の効果測定が曖昧だ。インフラや生命維持にかかわる絶対必要なエッセンシャルワーカーでもない。ぼくがコンサルを好きになれないのも、同属嫌悪の感情があるから、というのを認めないわけにはいかない。

ただ、コンサルとクリエイターでは、たったひとつ、決定的に違う点がある。

コンサルが口を動かす商売なのに対し、クリエイターは地道に手を動かす商売――という点である。

そして、ぼくは、それをひそかに誇りに思っている。


一億総コンサルの時代

社会で働くうえで、いちばん腹に据えかねる人間ランキング、人それぞれあるだろうがぼくにとってその最上位は、間違いなく手を動かさず口だけ動かす人間だ。

ぼくは小説のコンテストで入賞したり、新人賞で最終候補まで残った経歴がある。だから身に染みて知っているが、人が必死で作ったものにケチをつけたがる人間というのは、どこにでもいる。Amazonのレビュー欄は、そんな人たちで満席だ。だけどそうした人たちに、いったいなんの技能や実績があるのかと問えば、答えはいささか心許ない。

スキルがあるわけでも知識があるわけでも努力をするわけでもなく何某の成果物を出すわけでもない。リスクをとらず、他人に難癖をつけることで、自分がなにか価値ある人間であるかのように見せかけたがる評論家。あなたのまわりにも、こうした人間がいないだろうか?

お金の専門家、FPコンサルという職種がある。あるいはキャリアの専門家、キャリアコンサル。いちばん胡散臭いのはSEOコンサルで、経営コンサルなんて字面をみただけで胸やけがしそうだ。

日本FP協会会員の平均年収は305.3万円だという。キャリアコンサルの半数は年収420万円以下。SEOコンサルに至っては「SEOで効率的に集客できますよ!」と、電話営業をかけてくる。仕事熱心で感心どすなあ? 新卒で経営コンサルになった人間は経営経験もないままだれにでも当てはまるそれっぽいことをオウムみたいにいうだけだ――バ ー ナ ム 効 果 !

コンサルはラーメン評論家に似ている。ラーメンを食べて偉そうな話はするが、自分でラーメンを作れるわけではない。そんな虚業に優秀な若い世代が飛びついて、美味しいラーメンの作り手がいなくなるのでは、だれのためにもならないだろう。


野球がうまくなりたいとき、だれに相談すべきか?

もちろん、コンサルが成果を出した例もないわけではない。営業に来るコンサルは得意げにパワポの資料で成功例を語る。だけど、そうした例は、コンサルがいなくても成果が出た例ではなかったか。

というのも、例えばSEOコンサルが扱うwebのPVなどは、つまるところ、上がるか下がるか2パターンしかない。コンサルが10件、20件とクライアントを抱えれば、馬券と同じでどれかは当たる。受け持ったクライアントのうち一社も業績が上がらないなんて、確率論的に起こり得ないのだ。そうした一例を挙げてコンサルの成果というのなら、そのへんの生活保護の人間でも成果を出していることになる。

野球が上手くなりたいとき、あなたが相談すべき相手はだれだろう? 実際にバットを握り、グラブに指を通し、日々汗を流して懸命に練習する野球選手以外にないだろう。まちがっても、野球記者野球評論家ではあってはならない。

不運にも、そうした適切な相談相手がまわりにいないなら――、

いないままでもいいじゃないですか。リスクも負わない外野の無責任な声よりも、自分が地道に積み上げてきた練習量を信じたほうが、ずっと有意義で納得のいく結果になると思いますよ。あなたがプレッシャーのなかで仕事に向き合い、積み上げた努力、燃やした情熱は、虚業なんかじゃなく、たしかにそこにあるものだから。

コンサルが嘘をつくことは、往々にしてあるだろう。もしかしたら、嘘ばかりかもしれない。

だけど、あなたの経験や努力があなたに嘘をつくことなんて、金輪際ありはしないのだ

信じろ、自分を。


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