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「個」を重視する組織が、自律的な働き方を作り出す|篠田真貴子さんと考える「自律型人材の育成」

こんにちは。エール株式会社には、企業で課題に向き合う現場の皆さんから様々なご相談が寄せられます。その中で特に共有したいテーマについて、エールでは毎月、セミナーの形で一緒に考えを深める機会を作っています。

今回のテーマは「自律型人材の育成」について。
エール取締役 篠田真貴子さんと共に、「いま“自律型人材”が求められる背景とは?」「そもそも“自律型人材”は何を意味するのか?」を紐解きます。      
【編集部 奥澤】                                

※本記事は、2022年1月25日(火)に開催された、エール主催のセミナー「企業変革を進める“自律型人材”育成のコツ」を元に再編集しています。

今回のまとめ 「自律的人材とは何か?」

従業員エンゲージメント向上を背景に、“自律型人材”への注目が集まる
近年注目される“自律型人材”は、企業からの発信によって広まった。業績向上を目的に「従業員エンゲージメント向上」の必要性が高まり、その具体策として「自律的な働き方」に注目が集まる。

「自律的な資質」があっても、「自律的に働ける」わけではない
「自立」と「自律」の定義は異なる。「自立」は、他に頼らず独り立ちしていること。「自律」は、自分が立てた規律に従って行動すること。たとえ、経済的に自立をしていても、必ずしも自律的にキャリアを考えられるわけではない。

・“自律型人材”は、組織から個人への促しがなければ実現しない
“自律型人材”の育成は、組織から個人に対し「自律的に働くこと」を促さなければ実現しない。上司との良好な関係性や人事制度など組織環境の影響を受けるからこそ、「人材だけの問題ではない」と意見したい。

・組織に求められるのは、「個」を重視する組織運営
「組織」があって「個」が従う関係ではなく、あくまでも「個」ありきの組織。「自律」とは内的な状態であり、外から指示されてなるものではない。その前提を理解し、“自律的な働き方ができるよう変わってほしい”と願い、環境を整え、一人ひとりとの関係を構築するなど、いくつかの特徴がある。

・個に求められるのは、「自分の動機を理解し、業務とのマッチングを見極める力」
“自律型人材”に求められる重要な資質は、「自分の動機を理解し、業務とのマッチングを見極める力」。自分を少しずつ開くことを通して、自己理解を深めるよう、多様な人々とじっくり話す機会によって磨かれる。

従業員エンゲージメント向上を背景に、“自律型人材”に注目が集まる

多くの企業が「変革」を迫られる中で、注目を集める“自律型人材”。“自律”と聞いて、どのようなイメージをもちますか?いま、私が考える“自律型人材”についてお話しながら、広がった社会背景やその定義について、みなさんと一緒に紐解いていきたいと思います。

まずは、“自律型人材”の社会的広がりについて。私は、「個人からの発信」「企業からの発信」の2軸ある、と捉えています。一つずつ説明していきますね。

まずは、「個人から発信された“自律型人材”」についてです。

時代としては1998年頃。ここでは「キャリアの自律」の意味合いで広く知られるようになりました。背景にあったのは、山一証券や北海道拓殖銀行の経営破綻。さらには、破綻寸前だった日産とルノーの資本提携があり、カルロス・ゴーン氏が大胆なリストラ策を実行しました。

これまでになかった経営環境の変化を目の当たりにし、多くの人々が、終身雇用の終焉を肌で感じた時代です。この辺りから「自分の働き方は自分で決める」「これからのキャリアをどうするの?」といった自律的な働き方に注目が集まっていくようになります。

次に「企業から発信された“自律型人材”」についてです。

時代としては2014年頃。ここでは「従業員エンゲージメント向上」の意味合いで知られるようになります。従業員エンゲージメントとは、従業員と会社のつながりの強さ、自発的に貢献したいと思う意欲を表したもの。2007年頃に概念や計測手法が整理され、従業員エンゲージメントの高い「熱意あふれる社員」の場合、企業の業績向上に貢献するという結果が報告されています。

そんな中、2017年米ギャラップ社が139か国・1300万人のビジネスパーソンを対象にエンゲージメント調査をしたところ、日本企業は最下位レベル…。そこから、各企業は「社員のエンゲージメントをあげるにはどうしたらいいのか?」と変革の必要性を迫られました。その具体策として、「自律的な働き方」が広く知られるようになったのだと捉えています。

「自律的な資質」があっても、「自律的に働ける」わけではない

注目される背景の次に考えたいのは、「そもそも“自律型”の定義とは?」という話です。

「じりつ」の言葉には、2つの漢字があります。「自律」と「自立」です。それぞれ意味が異なるのですが同じ発音であるために、きちんと使い分けされていないケースが多々あります。ここで、それぞれの定義を確認してみましょう。

まずは「自律」について。英語でいうと、「autonomy」。意味は「自分が立てた規律に従って行動する」です。「自律的に業務を進める」「キャリアを自律的に考える」と言えるでしょう。反対語は、あまり耳慣れませんが「他律」。「他人が立てた規律に従って行動する」の意味になります。

次に「自立」について。英語でいうと「independence」。意味は「他に頼らず独り立ちしている」。こちらは例えば「経済的に自立している」といった表現が分かりやすいでしょうか。反対語は「依存」です。

この定義から考えると、たとえば「経済的に自立しているが、業務やキャリア形成は他律」のケースも多くあるわけです。今から30年ほど前の日本企業はまさにこの形ですよね。お金を稼ぐ行為はしているけれど、上司から言われた仕事を進めている…。

“自律型人材”は、組織から個人への促しがなければ実現しない

また、所属する組織によって、人は自律的に動ける/動けないが変わってくる場合もあるのも事実です。少し極端な例ですが、私自身の話でいうと、過去に子どもの学校のPTA活動の係を担当したとき。私は全く「自律的」に動くことはできなかったんですよね。自分は多少なりとも“自律型人材”だと思っていましたが、ここではこれまでの慣習や誰かの指示に従って行動していただけだったんです。

みなさんも、これまでを振り返ってみると思い当たる経験があるのではないでしょうか。

「自律」と「自立」の定義を整理して感じるのは、「自律型人材」の言葉のちょっとした違和感です。「自律型人材」とは、どんな状況であっても自律的に業務を進め、自律的にキャリアを考えられる人を意味してしまう。しかし、私は、そこはイコールではないと思っています。

人として「自律的な資質を持っている」と「自律的に働いている」は必ずしも一致しません。組織が個人に対して自律的に働くことを促している、加えて双方で「そういった働き方をしたいよね」という合意がなければ、「自律的な働き方」は実現しない。

だからこそ、この場では「“自律型人材”が育たないのは、人材の問題だけなのか?」と問いたいと思うのです。社員に対して自律を促す組織運営になっているのか? 会社との関係性が築かれているのか? 私は、そこまで含めて「自律型人材の育成」だと考えています。

組織に求められるのは、「個」を重視する組織運営

では、一人ひとりに対して自律を促すような組織運営とは何か? 具体的にどのような体制を指すのか。その問いに対する答えの1つが、「個」を重視する組織運営です。

エールでもこのような課題を持つ企業とのお付き合いが多くありますが、解決へと向かっている企業の共通パターンとして「『個』を重視する組織運営」があります。これは「組織」があって「個」が従う関係ではありません。あくまでも「個」ありき。個人が何かしらの動機をもって組織に入ってくる状態です。だから、従業員と会社はフラットな関係なんですね。

そして、そういった組織運営には3つの信念があると考えています。

【1】社員一人ひとりの内的な変化を願う
まず理解しておかないといけないのは、「自律」とは内的な状態。外から指示されてなるものではないんです。だから組織ができるのは“そういう風に変わってほしい”と願い、環境を整え、一人ひとりとの関係を構築すること。この前提理解がとても重要になります。

【2】組織の理念・戦略と個人の動機は重なる
2つ目は、組織が目指す世界と個人の動機は必ず重なるという信念です。ある会社を選択し、ここで働こうと希望している方なのですから、個人の自己理解を深めていけば重なりはちゃんと見つかります。

【3】一人ひとりに合う仕事を増やす・作る
3つ目は、個人の自律を促す環境づくりの話です。一人ひとりに合った仕事の在り方や進め方はあるはず。だからこそ、一人ひとりに合った仕事は何かを真剣に考え、組織から作り出していく、という信念です。

個に求められるのは、「自分の動機を理解し、業務とのマッチングを見極める力」

そして、最後にこれらの信念がある組織において、自律性を強く発揮する人材とはどのような資質を持っているのか、を考えてみます。

“自律型人材”が身に付けている資質は3点あって、1点目が一般的な業務スキル。excelなど最低限のスキルは必要です。2点目は、課題発見から実行・検証・学習までのサイクルを回せるスキル。これら2点に関しては、日本の大企業やベンチャー企業で活躍されている方の多くは、高いレベルでお持ちだと考えています。

私が足りていないと感じるのは、3点目です。それは「自分の動機を理解し、業務とのマッチングを見極める力」。自分の動機が分からないために、業務とのミスマッチに気づかない。求められるものを返し続けているうちに次第に心が疲れてしまう…。そんな方が少なくない。自律的に、かつ長期的に活躍するためには、自分の動機の理解がとても大事だと言えるのです。

では、「自分の動機を理解し、業務とのマッチングを見極める力」を鍛えるにはどうすればいいのか―。

もちろんこれだけが正解ではないのですが、私は「自分を少しずつ開くことを通して、自己理解を深めるよう、多様な人々とじっくり話す機会」だと考えています。自分の動機理解、業務とのマッチング…これらは自分一人で行なうのはとても難しいんですよね。だから、多くの人たちと本音で話をし続ける必要があって、その積み重ねから少しずつ見えてくるものなのです。

その上で、「自分の動機にマッチングするようにジョブ・クラフティングする裁量」が持てるといい。結果として、自らの意志でキャリアを選択し、進められると思っています。

【今回の気づき・学び】

今回の気づきは、“自律型人材”というと、「一人でなんでもできる」「誰にも頼らない」……そんなイメージを持っていましたが、実はそうではなかったこと。

“自律型人材”として活躍するためには、自分の動機を理解し、業務とのマッチングを見極める力が求められ、そしてその見極めは一人では難しい。自分の心を開き、多様な人たちとの対話を通じて、少しずつ見えてくるものなのだと分かりました。

多くのビジネスパーソンにとって、じっくり話す一番身近な相手は上司になるはずです。自分のキャリアは自分で考えるもの、上司が関与する話ではないと線引きしていないかーー上司にとっては改めて、メンバーとの向き合い方を考えさせられる内容だと感じました。

「後編」では、自律型人材を育成するためのアプローチ事例について、エール代表取締役 櫻井将さんと紐解きます。

*エールでは3月1日、「個人の自律を起点とした組織改善へのアプローチ」について、さらに考えを深めるためのセミナーを開催します。ぜひ、ご参加ください。

【3月1日(火)13時〜@zoom】エール主催セミナー
「個人の自律を起点とした組織改善へのアプローチ」
https://yell-seminar220301.peatix.com
組織に染み付いた文化・日常の振る舞いを変容していくにはどうしていけばよいか。本セミナーでは、現場の社員の主体性と創造性を引き出す組織体質改善のアプローチについて、エール代表取締役 櫻井将さんと、『LISTEN』を監訳したエール取締役 篠田真貴子さんにお話しいただきます。
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日時:3月1日(火) 13:00~14:30
会場:オンライン(zoom)後日、録画アーカイブをお送りします。
※参加費無料 ※当日参加チケット/録画視聴チケットの2種の参加形式
詳細・お申込みはこちら
ご参加、お待ちしております!

奥澤千夏(エール編集部)
Web求人メディアを運営する人材会社にて、コピーライターとして経験を積む。その後、新規事業立ち上げ、サイト運用などを担当。マネジメントではメンバーとの対話、感情や価値観を深く掘り下げる重要性を学ぶ。2020年、取材ライターとして独立。2020年12月、YeLLにジョイン。オウンドメディア記事の制作を通じて「聴き合うから生まれる“強い組織”」を考え、広めたい。


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