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「ケース会議は直接参加だけが参加じゃないー人生のサポートを」

(7,204文字/個人差はありますが、約12分~18分程で読めると思います)

おはようございます。金曜日から急激に寒くなり、横浜でも少し雪が積もりました。皆さんの地域はいかがでしょうか。また体調など崩されておりませんか?皆さん、暖かくして、体調管理にお気をつけてお過ごしくださいね。

さて、今回は久しぶりにQ&Aの回です。

Whole Personって?

<ご質問>
TEACCHの柱の一つに「Whole Person(全人的視点)」というものがありますが、この概念の解釈が、自分自身今ひとつ曖昧な気がします。TEACCHコラボレーションセミナーでのローラ・クリンガー先生のお話でもあまり言及されていなかったので、佐々木先生の説明を聞けたら嬉しいです。よろしくお願い致します。

人生全般を見通した支援を

長期的な視点を

ご質問ありがとうございます。前提として、ぼくはTEACCH部のスタッフではありませんので、ぼくなりの理解や解釈を加えたお返事となりますので、ご容赦ください。

ASD特性は、年齢や状況、これまでの経験等によって現れ方は異なりますが、基本的特性は生涯にわたって継続することが知られています。このことは、支援の度合いや内容には濃淡があれども、生涯にわたって支援が必要な可能性が高いことを示しています(「ゆりかごから墓場までの支援」と喩えられることもあります)。  

そのように考えていくと、短期的な見通しだけではなくて、長期的な視点を持って支援を考えることが必要です。つまりその方の人生全体をみていくこと、これがWhole Personという考え方だと思います。コラボレーションセミナーでは、その一つの例として「ASDの高齢化」をテーマに取り上げていましたが、ここではまた違う例をと思います。

例えば、乳幼児期の支援に携わる支援者は、その時期のことだけではなく、その後の学齢期、青年期、成人期、老年期のことも知った上で支援をしていくことが求められるのではないかと思います。

厚生労働科学研究費補助金障害者政策総合研究事業の一つとして実施された、「発達障害の原因,疫学に関する情報のデータベース構築のための研究」の中の分担研究として「成人発達障害の実態把握と支援ニーズに関する研究」というものがあります。その調査の中では、小児期の逆境体験(不適切な対応によるネガティブな経験)をしている成人のASDの方ほど、現在のQOL(生活の質)が低いことが指摘されています。

つまり、成人期のQOLを考えた際には、過去の支援も重要であることが示唆されています。こうしたデータを知識として知っていることで、乳幼児期に「今これができないと将来が困る」というようなスパルタな対応ではなく、「いかに今の生活の安心と自信の分量を増やすか」という対応を考えるようになります。

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