生活上の良さや魅力でもあるイマジネーション
*この記事は2801文字あります。個人差はありますが、約4分~7分程で読めると思います
こんにちは。よこはま発達相談室の公認心理師の佐々木です。いつも記事をお読み頂きありがとうございます。今回は「社会的イマジネーション」をテーマに書いていきたいと思います。
そもそも社会的イマジネーションって?
自閉症スペクトラム(ASD)の方々の特徴の一つに「社会的イマジネーションの質的特徴」があります。皆さんは「イマジネーション」と聞いてどのようなことをイメージするでしょうか?
想像力をイメージする人が多いかもしれません。
ただ、ここでいうイマジネーションというのは次のような意味合いがあります。関係機関であるよこはま発達クリニックのHPから引用したものを紹介します。
今目の前にないことを予測する力のことで、ここに不得手さがあると、時間管理や段取りを組む、先行きを適切に予測する、効率の良い計画を立てる、柔軟かつ臨機応変に対応するなどにも大きく影響すると言われています。
イマジネーションの支援の方向性は?
ここまでまとめてきたような特徴の多くが当てはまる方もいれば、いくつか当てはまるという方もいるでしょう。また、その程度や生活上での困り感もそれぞれに違うと思います。
ここで大切なことは、これらがやる気や努力不足の問題ではないということです。そのため、トレーニングによって修正するものでもありません。むしろ、これらの特徴はASDの方々の魅力でもあり、長所でもあります。これらをどう生かしていくかがポイントになってきます。
例えば、
・興味関心のあることがらへの意欲や集中力が高い
・一から段取りを組むことは不得手だけれども、決まっていることや秩序を大切にして行動してくれる
・先行きが予測できていると安心して行動し、よく力を発揮してくれる
・手順な流れなどが定着しやすく、覚えたことは人一倍真面目に取り組む
・見通しがついており、かつ納得したルールを律儀に守る
などがあります。
特に、生活を考えていく上では、「見通し」や「予測」がポイントになってきます。ぼくの個人noteになりますが、まとめていますので、ご参考まで。
こだわりが強いのはよくない?
よく、「こだわりが強くて困る」というご相談をお受けします。でも、「こだわり」そのものが問題ではありません。生活に支障をきたさないこだわりは、何も問題ではありません。むしろ、好きなことや関心を寄せていることにこだわることができる(追求できる)というのは、魅力ではないでしょうか。
一方、「こだわり」が問題になるのは、そのこだわりがあることによって、生活に支障がきたす場合です(例えば、いつも決まった人の手を触らないと気が済まない等)。内容によっては、生活上の大きな困難になることもしばしば経験します。
基本方針としては次の二つです。
(1)不都合の小さい形へ
(2)見通しを持たせると同時に終わりを教える
例えば、人の手の感触を好んでいるとすれば、別の触っても良い感覚玩具を用意し、それを触ってもらうことも一つです(例えば、スクイーズのような感覚玩具)。
こだわりの背景には理由がある
不安が強いと、それにあわせてこだわりも強くなることが知られています。だとすると、もっとも大切なことは、日々の生活での安心感を高めることではないでしょうか。
そのためには、上述している(2)のように「見通し」が非常に大切になってきます。例えば、次の楽しみな活動がいつできるのかわかっている、今の活動はタイマーが鳴ったら終わりなど、納得している見通しとルールがあれば、うまくいくこともよく経験します。
ですが、生活上の安心が増えない中で、こだわりそのものを力づくでやめさせようとすることは、多くの場合かえって不安を高め、より困難な状況になることがほとんどのように感じます。
したがって、こだわりそのものをどうにかするのではなく、
・何が不安なんだろうか?
・どこで不安を感じているんだろうか?
・生活上における不全感はどこにあるのか(達成感や充実感が乏しい)?
を考えることが、遠回りなように感じるかもしれませんが、非常に大切ではないでしょうか。
まとめ
今回は社会的イマジネーションの特徴と支援の方向性について書いてみました。簡単にまとめると、以下の通りです。
イマジネーション=今目の前にないことを予測する力
時間管理や段取りを組む、先行きを適切に予測する、効率の良い計画を立てる、柔軟かつ臨機応変に対応するなどに影響するので、結果として興味関心の幅が狭くなったり、いつも通りを好むことも
生活上の強みにもなる。そのためのポイントは「見通し」や「予告」
こだわりはあっていい。でも、生活に不都合がある時には対応を考える
力づくで止めるのは、ほとんどの場合効果に乏しい
こだわりが強まる背景には不安が。それをいつも考える
繰り返しですが、これらの特徴は不都合ではなく、生活上の強みにも魅力にもなる点です。もちろん、こうした特性でお困りになることもあるかもしれません。その時には、どんなコツやポイントがあるのか、支援者と一緒に考えてみるのも良いと思います。
それでは本日も最後までお付き合いくださり、ありがとうございました。
よこはま発達相談室
佐々木康栄
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