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ホームゲームで強くても、アウェイで勝てないとダメ?

ホームゲームは、実のところ、とても有利だ

スポーツの世界では、「ホーム&アウェイ」が基本です。サッカーのワールドカップ予選でも、必ず、ホーム&アウェイで相手国と二試合、戦います。野球は日本のプロ野球もMLBもホーム&アウェイが基本です。アメリカンフットボール・NFLは少し特殊ですが、同じディビジョンのチーム同士は、レギュラーシーズンで必ずホーム&アウェイで戦います。そして「アウェイで勝ったほうが、価値が高い」とされます。レギュラーシーズンの成績によって、ポストシーズンの一発勝負をホームで戦えるかどうかが決まります。それほど「ホームゲーム」は有利なのです。

ちょっと余談になりますが、NFLの話です。NFLのシーズン最終戦、No.1を決めるスーパーボウルは、年に一度のお祭です。逃走中で発見できない犯罪者を捕まえるために「スーパーボウルのチケットがあたったよ」と広告を出したら犯人が出てきた(もちろん、当選の話は嘘です)なんていう話があるほどです。その経済効果は驚くことに、2.34億ドルから4.77億ドルとも言われています。ちょっとした国のGDPに匹敵します。

なので、NFLのチームがあり、スタジアムを持つ都市はスーパーボウルを誘致したがります。そして、NFLでは、スーパーボウルを開催するスタジアムについて、いくつかの条件をつけています。

・スタジアムの収容人数が6万人以上
・多数の観光客を受け入れることができる宿泊施設、交通網がある都市であること
・温暖な都市であること、あるいはドームスタジアムであること

他にも細かい規定はありますが、スーパーボウルが開催されるのは2月で真冬でもあることから、「温暖な地域、あるいはドームスタジアム」という条件がつきます。
基本的にNFLの試合は、寒かろうが暑かろうが、開催されるのですが、No.1決定戦はいい環境で試合を開催したいという意向があるようです。

ここで少し面白い話があります。シカゴ・ベアーズの本拠地、ソルジャー・フィールドとグリーンベイ・パッカーズの本拠地、ランボー・フィールドです。どちらも、寒冷地です。冬場には氷点下20度になることもあります。しかし、ドームスタジアムではなく、露天なのです。ふきっさらしです。12月のレギュラーシーズン終盤、1月のポストシーズンに両スタジアムで試合があると、里田はワクワクします。

「今日は何℃だろう?」

吹雪の中での試合もあります(テレビ放送で、フィールドがまともに見えない試合もありました)。

なぜ、そんな環境なのにドームスタジアムにしないのか? スーパーボウルも開催できないのに。

「ホームが厳しい環境だと、アウェイでやってきた敵チームが不利になるから」

自分たちはホームなので厳しい環境に離れているけれど、敵チームは慣れてない。なので、シーズン終盤の重要なゲームで有利になる、というわけです。実際、温暖なロサンゼルスやサンフランシスコ、マイアミ、タンパベイあたりからアウェイでやってくると、温度差が30度あったりします。

スーパーボウル開催の権利を放棄しても、シーズン終盤の有利を取る、というわけです。

さて、今回話したいのは、スポーツの話だけではありません。ビジネスでも、同じことが言えるのです。誰しも気がつかないうちに、「いつもホームゲーム」をしている可能性があるのです。

ホーム=コンフォートゾーンで褒められるのは当たり前

大学で教えている場合、ビジネスのアイデアを発表したり、実際のビジネスを評価し合ったりしますが、それを評価するのは先生であり、仲間です。もちろん、厳しい指摘はしますが、いわば「身内」ばかりです。あまり、ボロクソにたたかれることはありません。
また、私が協力しているVenturecafe東京のような場でも、よくピッチイベントが開催されます。外部の人を招いてコメントを頂いたりしますが、基本的に褒めます。何よりも「ピッチをしたこと」はとても重要なので、そこは高く評価されるのです。
アメリカでも、日本でもよくワークショップを行います。数日から数週間、集中して学び、ビジネス企画を立て、最後はピッチで締めることが多いのですが、長い間一緒に学んだ仲間の前でのピッチです。終わると達成感で非常に盛り上がります。ゴールしたことがまずたたえられるのです。

ここまでは、実は「ホームゲーム」です。仲間内、起業家たちの集まり、が基本です。互いに認め合い、高め合う場です。

ところが、ここから先、実際に「ビジネスの現場」に行くと、ガラッと環境が変わります。アウェイになるのです。
投資家相手のピッチでそれまで経験しなかったような酷評をされることがあります。ベンチャーキャピタルや金融機関の厳しい目にもさらされます。
案外この段階で心が折れてします人も珍しくありません。それまで、ずっと褒められてきたわけですから、突然、詰問されて、厳しい言葉を投げかけられてショックを受けてしまうのです。

もともと、仲間内が多かったり、起業家たちが集うような場所は、ホームなのです。そこでのピッチはいわばホームゲーム。
ある意味褒められて当たり前だったのですが、「それがホームだった」と気がついていなかったことが問題なのです。

子供が初めてスポーツや習い事をした時、どんな指導者も「最初は褒めます」。できなくて当たり前なので、少し上達したら、徹底的に褒めます。そこでモチベーションを高めて、次のより難しい課題に向かってもらいたいからです。

なので、アウェイに出て褒められないのは、当たり前なのです。だって、それがアウェイなのですから。厳しい言葉をかけられて当然なのです。

それは「次のステージに立った」証拠だとも言えます。

積極的に他流試合、道場破りをしよう

そこで、いきなりアウェイの洗礼を浴びて、心が折れないようにする必要があります。耐性をつけるとでも言うのでしょうか。

あえて、他の環境でのピッチイベントに参加する。
まだ企画が煮詰まっていなくても、どんどんベンチャーキャピタルに出向く
ビジネスアイデアコンテンストなどに積極的に参加する

とにかく「外に出る」のです。コンフォートゾーンから出ていく。
たとえ、ボロクソに叩かれてもいい。一から否定されてもいいのです。きっと、そこに改善のヒントがあるはずです。
ホームでは誰も指摘してくれなかった課題がきっと見つかります。

日本の武道でも「他流試合」「道場破り」なんて言う言葉があります。きっとそうすることで流派の発展があったのでしょう。

外に出て、褒められなかったらむしろ喜んでいいかもしれません。マゾヒスティックな話ではなく、それこそが成長のチャンスになるはずですから。


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