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まずは一歩踏み出せ。そこから全ては始まる

アントレプレナーシップについて

先駆者はいつも異端だった

いまでこそ、日本人メジャーリーガーは何人もいます。しかし、その先駆者である野茂英雄氏がロサンゼルス・ドジャーズへの移籍を発表した時、多くのメディアは「通用しない」「無理だ」と言い放ちました。「日本のプロ野球にいれば、後何年も大エースでいられるのに」とも言いました。「いまメジャーリーグに行ったら、帰国後日本球界に復帰なんてできない」とも言われていました。裏切り者扱いだったのです。
結果はどうでしょう。1995年にドジャーズに移籍、その後、メジャーリーグ8球団で14年間プレイし、メジャー123勝、日米通算201勝の成績を残しました。日本人野球選手のメジャー挑戦の先駆者となった野茂氏は、最初、異端児扱いでした。
イチロー選手も同様でした。野茂選手の活躍で「日本人投手」はメジャーでも通用すると証明されていましたが、「野手は無理だ」と言われていたのです。イチロー選手がメジャー挑戦を表明した時、多くの人が「無理だ」と言っていました。後のインタビューでイチロー氏は「なんで、やってもいないのに、無理だというのかわからなかった」と答えています。結果は皆さんご存知のとおりです。彼らが、一歩踏み出し、一歩踏み外し、一歩はみ出していなかったら、いまでも日本人メジャーリーガーはいなかったかもしれません(別の選手がはみ出したかもしれませんが)。

特別な人だから成功するのか


そして、いま、注目されているのが大谷翔平選手です。まだ野球というスポーツが成熟していなかった100年前にしかできなかったベーブ・ルースの記録を超えました。投手と打者の二刀流という、異端そのものの選手です。過去の成功体験に囚われていれば、「無理だ」というでしょう。「高校野球までなら、エースで4番もあるけれど、プロでは無理だ」、彼がプロ入りするときはそんな声が多数派でした。いまや、メジャーで二刀流、しかも結果を残しています。

「それは彼が特別な選手だからだ」

たしかに非凡な才能に恵まれ、肉体的にも恵まれていることは事実です。しかし、最大のポイントは彼の「考え方」にあります。
次の図は、彼が高校生の時に作成したと言われる「マンダラチャート」です。それは「目標」を達成するために何をしていくのか、行動計画を作るためのチャートです。真ん中に目標を書き、周囲にそのために必要なことを書きます。このチャートはそれが二重構造になっているのです。
彼が当時設定した夢、目標は「ドライチ8球団」というものでした。ドラフト会議腕一位指名、8球団が競合というものです。実は、ドライチ競合8球団を実現していた選手が過去にいます。それが野茂英雄氏です。この段階で、メジャーで活躍する野茂選手が、大谷選手の頭にあったことは間違いないでしょう。

一歩ずつ、踏み出していく。そしてはみ出していく

そのために必要なこととして、注目するべきこととして「球速160km/h」があります。現役のプロ選手でも珍しい数字です。150km/hがコンスタントに出せれば剛速球投手です。2022年7月の時点で、日本人で球速160km/hを達成した選手は、9人しかいません。大谷選手はもちろん、その中のひとりですが、このチャートを作ったとき、まだ日本人で160km/hを達成した選手は一人もいませんでした。それでも「ドライチ競合8球団」を実現するには、それくらい必要だと考えたのです。

正統派の人ならこう言うでしょう、「いやそれは無理だ」と。


高校一年生が、「ドラフト会議で一位指名を受けてプロになりたい」と言ったら「がんばれ」と素直に言うでしょう。なぜなら、過去にそういった選手は「毎年いる」からです。楽な道ではありませんが、過去に事例があります。しかし、ドライチ8球団と言われたら。そのために球速160km/hと言われたら。正統派の指導者は「まぁ、それはおいといて」と言って、「で、明日の練習だけど」と正論に話を戻すでしょう。いうなれば「戯言」扱いです。

大谷翔平選手のマンダラチャート

ところが、このチャートの存在が戯言を戯言ではなくしました。事細かに、「実現のためにやること」が分解され、細分化されているのです。球速160km/hのためには「軸で回る」「下肢の強化」「体重増加」「肩周りの強化」「ピッチングを増やす」「ライナーキャッチボール」「可動域(を広げる)」「体幹強化」など、個別に見れば、当たり前のことが書かれています。当たり前でも簡単なことではありませんが、「ドライチ競合8球団」という、普通ではない、「はみ出した」目標を立てるからには、それに応じた「行動計画」も立てられているのです。やるべきことを細分化して、一歩踏み出す。それを繰り返すことで、はみ出していく。

はみ出すと、夢は拡張する


興味深いのはチャートの左下と下です。「人間性」「運」とあります。そのために「礼儀」「感謝」「思いやり」、「挨拶」「ゴミ拾い」「部屋掃除」「道具を大切に扱う」。そんなこと野球選手としての能力に関係ないじゃないかと思うかもしれません。しかし、これは哲学であり、倫理であり、彼にとって野球が「野球道」であることを示しています。
スポーツ選手は、特に豊かな才能を持った選手はとくに、独善的になることがあります。それでは本来のパフォーマンスを発揮できない。プロ選手でも、トラブルが多い選手、周囲の人とのトラブル、選手同士のトラブルが多い選手はペナルティを課せられ、ときに出場停止処分を受けます。それでは、夢は叶わないのです。
アメリカの高校では、このマンダラチャートを用いた教育が当たり前に行われています。スポーツ選手をモデルに、道徳を教える教材になっているのです。

後に、二刀流、二刀流でのメジャー挑戦という方向に大谷選手の目標・夢は拡張していったのでしょう。きっとそのたびにこのチャートも書き換えられたのでしょう。そして、いま、またもっと大きな夢を持ち、新しくチャートを作っていることでしょう。

「起業したい」「企業に興味がある」はすでに“はみ出し”始めている

いま、明らかに大谷選手は、異端です。立派に、はみ出しています。しかし、いま高校球児の中には「二刀流でいきたい」と考えている選手も出てきています。もちろん、ほとんどの選手には難しいでしょう。しかし、道は拓かれている。そのことに価値があります。

道を切り開くのは、異端です。異端とは、はみ出した人のことなのです。

いわゆる普通の人は、大学を出て就職します。少しでも「いい会社」に入ろうと思います。少し前までは新卒で入社した会社で定年まで働くことが当たり前でした。最近でこそ、転職も当たり前になってきましたが、まだまだ「起業する」ことは異端です。

そう、起業家は一歩踏み出し、一歩踏み外し、一歩はみ出すのですが、実は、いまの日本では「起業した段階ではみ出している」のです。

ここであえて「はみ出せ」というのは、周囲に「はみ出した人を引き戻そうとする人」がいるからです。

大丈夫です、もう、はみ出しています。

さぁ、一歩、はみ出せ。

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