"海外で働く"とはどういうことか?

大企業、とりわけMulti national companyで働く社員には海外のキャリアパスを追求したいと思っている人が数多く存在する。(その本気度には濃淡があるが)。製薬企業も日本市場が停滞する中でグローバル比率はどんどん高まっており、海外にチャレンジしたいビジネスパーソンも多い。

ただ、ここで"海外で働く"というキャリアの選択肢についてもう少し掘り下げてみたい。一口に言っても、そのキャリアの築き方は1つではないからだ。
自分が話をしてきた方々で多いのは、残念ながら「なんでもいいからとにかく日本以外で働いてみたいんだ」というものが多い。その裏にあるのは日本での閉塞感だ。
・日本市場は(製薬企業は特に)停滞しており、ビジネス成長への楽しみがない
・海外での経験を積めば将来会社でのキャリアで有利になる
・異文化の経験を積むことは楽しそうで、今の鬱蒼とした職場環境からの脱出したい
などなどだろうか。

もちろん真剣に海外で活躍する人材が多数いることも事実だ。とはいえ、多くのグローバル志向社員は単なる現状打破が目的になっていたり、ただ海外に行きたいだけで手段が目的化していたりする。
もしグローバルのキャリアを真剣に考えるならば、クリアにしなければいけないポイントは下記の3つだと思っている。
1. なんのために海外に出るのか
2. 出向 (Assignment)で行くのか転籍 or 現地採用 (Local hiring)で行くのか
3. そのポジションで海外のタレントと競合できる強みはなにか

1つずつ詳述していきたい。

  1. なんのために海外に出るのか
    上述した通り、海外にただ行きたいだけで明確なビジョンがない人は多い。そのような場合には、まずはなぜ海外に行きたいのか、海外でどのような経験を得て将来どうしたいのかを明確にすべきだ。前回の投稿でキャリアパスの考え方について記載したが、長期的なAspirationを持った上で、それを達成するために海外の経験がどう必要かを考えたほうがいい。そして会社や業界によるが、生半可な覚悟と姿勢で海外のビジネスに挑んでもキックアウトされるだけだ。日本は未だ年功序列的な風土がある会社も多いが、成果主義が主流の海外でLow Performerの烙印を押されたらそこから再浮上することは簡単ではない。

  2. 出向 (Assignment)で行くのか転籍 or 現地採用 (Local hiring)で行くのか
    実際に海外を目指している人以外はピンとこないかもしれないが、同じ企業に属しながら海外で働く場合、その海外への生き方には出向 (いわゆる駐在)と転籍 (いわゆる現地採用)の2種類ある。この2つは大きく異る。

    出向の場合は所属を日本の法人に残している。そのため、日本の社員として海外で働くこととなり、それには有限の期間を設定するのが一般的だ。つまり、その期間が終われば日本に戻ることとなる。(そしてよりよいポジションにつくことが多い)。
    一方で転籍は日本法人を辞めて海外法人に就職するということだ。いわゆるその現地で採用されている方々と同じ形で、ローカルの人材として働くということだ。日本に戻る約束はなく、雇用契約が続く限りは現地で働きつづけることとなる。
    一般的に出向を目指す人が多いように思うが、自分は転籍推奨派だ。その理由はいくつかあるが、1つは出向で行く場合多くは「お客様」扱いされること。特に英語もろくにできないのに派遣されるJTCは最悪だ。現地からはただのお飾り扱いされて、在籍したという経験だけ得て帰っていく。2つめは財政面。通常出向は日本と同じ給料に出向手当などがつく。一方で現地採用は現地の人材と同じ待遇だ。Multi national companyの場合、もはや日本は賃金は低水準であり、他の国の方が高い。シンガポールに来たら給与水準は平気で50%以上高かったりする。しかも円安が進んでいるのでなおさらだ。
    3つ目は主体性だ。出向の場合はまた日本に戻るので、それを前提にして働くこととなり、現地での仕事で成果を出せなくとも戻れる。(その場合出世はできないかもしれないが)。一方で転籍は海外のタレントと直接競合することになるので必死だ。そこで成果を出せなければ雇用契約が延長される保証もない。なので自らを成長させることに必死になる。

  3. そのポジションで海外のタレントと競合できる強みはなにか
    特に転籍の場合だが、純粋な選考プロセスを経ることになる。そのときに競合になるのは日本人ではなくローカルのタレントだ。帰国子女出ない限り、コミュニケーションの面で劣勢となることが多い。つまり、「言語は非Nativeだがそれに勝る能力・資質がある」と採用側に思わせなければならない。部門によってアピールすべき能力は違うだろうが、言語でBehindなのを乗り越えるメリットを示せることが必要となる。裏を返せば、それができなければグローバルで通用するリーダーになることはできない。

以上、これまでの経験を踏まえて海外勤務を目指すに当たっての心構えを書いてみた。
まだまだ奥が深いエリアではあるので、今後も更新していきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?