大地のもの
酒を飲む場が好きだが、そもそも酒そのものも好きだ。
一番好きなのは日本酒だが、普段はビールを飲む。日本酒なら米と麹、ビールなら麦とホップという、限られた材料でこんなにも個性が違う味わいになるのかと、その化学への驚きが面白いのだと思う。
先日、同僚と飲みに行った後の三軒目で、バーに行った。普段は居酒屋を愛しているので自分から好んでバーに行くことはないが、薄暗く静かな空間で、バーテンダーに好みを伝えてカクテルを作ってもらうのは、わくわくする体験だ。蒸留酒は得意ではないのだが、旅先などで出会うと試してみているクラフトジンをベースに、カクテルを作ってもらった。さっぱりした、けれどジンの複雑な風味の香る好みの味に仕上がっていて、感嘆した。植物だけでこれだけ多彩な味わいが作れるのも、その組み合わせで無限にカクテルが生まれていくのも、面白い世界だと思う。
だが、日本酒とビールを飲んだ後にジンのような蒸留酒のカクテルをするする飲んでしまい、悪酔いした。こんなに酔ったのは、大学院時代の無茶な飲み方をして以来、四半世紀ぶりくらいだろう。この日はホテル泊だったので、リラックスして気が緩んだこともあるのだろう。本当だったら翌日はみんなで観光するはずだったのに、起きられず私はそのまま戦線離脱した。なんでこんなに飲んでしまったのだろうと後悔したが、楽しかったんだから仕方ない。
酒飲みとしては、私は遅咲きの人間だ。日本酒もビールも、飲めるようになったのはこの数年の話だし、それまでは酒を美味しいと思ったことはなかった。ようやく美味しいと楽しめる味覚を獲得したら、身体がそれに耐えられない年齢になっていた。元々体質的にも、それほど強くないのだろう。この数年、「最後の一杯が余計だった」と反省することが多かった。
自分の限界を自覚して、少し味わうに留める自制心を持ちたい。
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