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通じる言葉、通じない言葉

ADHD気味の愛されキャラMくん

これは、支援先の小学校でのエピソードです。

今どきのクラスには、診断あるなし関係なく、発達障害の特性が見られる子供達がたくさんいます。一年生のMくんは、診断はありませんが、ADHD傾向で、じっと座っているのが難しく、立てば、くるくる回るのが、好きな男の子でした。

Mくんは、人懐っこく、甘え上手、物おじせず、よく発言しますが、勘違いも多く、周りから「違うよ!」と指摘されることがあります。けれど、そんな時も「え、そうの?」と素直にすぐ聞き入れるので、人間関係はあまり悪くなりません。なので、Mくんは、担任の先生からも温かく見守ってもらっていました。

「先生は、ぼくのデザートをいつも狙ってる」

そんなMくんは給食が全般的に苦手でした。かなり減らしてもらっても、遊び食べをして、なかなか食べ終わらないのです。

デザートのフルーツが大好きなのですが、主食を食べ終わるまでは食べてはいけないことになっていましたので、担任の先生は、そこを使って頑張らせようと、笑顔でよく、こう声をかけていました。

「あ、また全然食べてない!食べないと、Mくんのフルーツ、おかわりジャンケンにまわしちゃうよ!」おかわりじゃんけんとは、残った給食をおかわりしたい人がジャンケンで勝ちとるものです。

誰の目から見ても先生が、応援していたのは、明らかでしたが、肝心のMくんには、それがまったく伝わっていなかったことが、後日分かりました。

ある日、私がいつも通り食事に集中していないMくんに
「ほら、休んでないで、食べなさい!」と声をかけると、
「だれも、ぼくをおうえんしてくれない。」と言うので、
「先生は応援してるよ!だから、こうやって言ってるんじゃない?
担任の〇〇先生だって、いつもMくんのこと応援してるでしょ!」と言うと、
「え、ちがうよ!おうえんしてないよ!〇〇せんせいなんか、いつもぼくのフルーツねらってるんだから!」と真面目な顔で、言ってきました。

通じる言葉、通じない言葉

Mくんに伝わる応援の仕方は「がんばって」や「おうえんしてるよ」というダイレクトワードだけのようでした。なので、Mくんは、担任の先生が言ったことを字義通りに取り、先生が本気でフルーツを狙っていると思っていたようでした。

「あれは冗談で、Mくんが食べれるように応援してくれてたんだよ。担任の先生は、Mくんをいつも応援してくれてるよ」と教えましたが、Mくんから返ってきたのは、「おうえんしてないよ!」でした。

確かに〇〇先生は何度もダメなことをするMくんに「頑張って」や「応援してるよ」という言葉を普段使わなかったので、彼からすると応援されていないということになっていたのです。

そのことを担任の先生に話しましたが、その後、先生の対応に変化があったかどうか分かる前に学年末を迎え、担任の先生は変わりました。良いのか悪いのか、目まぐるしい事だけは確かです。

結局、伝わる人にしか伝わらないということで、ならば私が、と実践してみました。注意する時にダイレクトワードを付けて言うようにしたのです。

「今はしゃべりません! 頑張って、応援してるよ!」

すると、Mくんは初め、あれ?っという顔をしましたが、すぐに聞いてくれました。そこで、すかさず、「凄い!出来るんじゃなーい!」と楽しく誉めると、もう効果てきめん。Mくんは、ニヤニヤしながら、出来る範囲で頑張るのでした。


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