イライラさんの薬膳

 なんでもないことのはずなのに、何故か腹が立つ、イライラする、という事はありませんか?
 確かに嫌な事をされたのだなと共感はできるけど、そこまでムカつくことかな?と思わされるような友達はいませんか?
 イライラしやすい人や時、中医学では「肝」という臓器が「熱を持っている」と考えます。これは、陰陽五行論という基礎理論の五行論部分を使って導き出しています。基礎理論について詳しく知りたい方は、別マガ「陰陽五行中医薬膳」を参照してください。こちらは無料です。
 とにもかくにも、中医学では、体とこころは一つ。お互いに影響し合って当たり前。心身一如。ですから、感情タイプそれぞれに、影響し合いやすい臓腑が当てはめられています。それで、怒りは肝です。

色体表

 まずは、肝という臓の特徴を知り、怒りとは何者かを知り、対策を立てていきましょう。無駄な怒りで人との折角の繋がりが切れてしまわないうちに。

肝について

 肝という臓は、西洋医学でいうところの「肝臓」とは似て非なる臓器です。存在する場所は「肝臓」と同じ辺りで、我慢の臓器という特徴も一緒です。ただ、働きが違います。
 肝という臓器の働きは大きく下記の2つです。
 ①気のポンプ「疏泄」
 ②血の倉庫「蔵血」
 気というものは、人体を運営するエネルギーの素ですので、体の中に適量存在し、常に程よいスピードで流れているのが理想です。流れるためにはポンプが要ります。血液の流れを生み出すのに心臓という臓器がありますが、これの「気」バージョンが肝だと思っていただければいいです。
 また、血も程よい量存在し、きれいに循環しているのが良いですが、常に適量しかないと自転車操業になってしまいます。ですから、少し貯金と言いますか、貯蓄をしておきます。その場所が肝です。(これは気も一緒で、腎に貯蓄されます)血は、気と津液から作られており、陽の気と陰の津液の間の存在とされます。血が存在する場所や働きによって、陰にも陽にもなれるのです。すごい。
 それで、例えば末端に流れていく時には、気と一緒になって末端を温めてくれる陽の働きをします。が、肝に蓄えられている時には、陰の働きをします。肝の昂りを鎮めてくれるのです。ただしまってあるだけではないのですね。

怒りの感情について

 怒りの感情は、現代日本ではとても悪いものとされています。しかし、本来は、生存本能と結びつく大事なこころの動きです。
 生きててよかった~が嬉しい感情だとすると、怒りの種は「生きたい!!!!」です。だから、敵という存在が現れると剝き出しになり、攻撃の形で投げつけることになります。現代日本では命のやり取りをする敵なんてほとんど存在しないのに、この野生の本能は名残のレベルを遥かに超えて残っているのですね。つまり、「怒りが悪者」なのは、「行き過ぎているから」です。怒りを感じること自体は悪くない。それをぶつけたり、自分の中にいつまでも溜め込んでいるのが悪いだけです。ぶつけず、昇華するか消化するか、ここは心理学などの分野の方が得意かもしれません。
 中医学では、そのまま消化したり昇華させたりするのではなく、五行論の1クッションを使って解消します。感情そのものに手入れをするのではなく、関連の深い臓のお手入れをします。
 ここでもう一つ、中医学の基礎「陰陽論」を使います。全ては陰陽から生まれ、陰陽に帰る。
 怒りの感情は陰の感情でしょうか、陽の感情でしょうか。
 正解は、陽です。
 怒りの感情を表現する言葉、慣用句などを思い出してみてください。
 腹が立つ、怒髪天を衝く、頭に血が上る、ゆでだこ状態など、上向きの表現が多いですよね。漫画でも、怒っている人の頭の上に、湯気が出ていたり、顔を真っ赤に塗られていたり。また、怒りマークは何かが四方に散っている感じに描かれます。上向き、熱い、赤、外向き、全て陽です。ですから、怒りは陽の感情。
 怒りの感情を悪者とし、ネガティブなものと認識してしまうと、「陰」だと思ってしまいます。まあ、しかし、陰も別に悪者ではないのですけども

肝と怒り

 怒りは肝と関係が深く、陽の感情だという事を理解していただけましたか?ここから何が考えられるか。
 肝の陽が強くなってしまうと怒りやすくなる、という事なのです。陽が強くなった結果、肝に熱がこもり、ふつふつと怒りが沸き、イライラしてきます。では、肝の陽が強くなる原因はなにか。
 ①肝に外から熱が入る
 ②肝の陰が足りず熱が生まれ冷やせない
 ③気の巡りが悪くなり、ポンプがオーバーヒートする
 ①はとても暑い日に元々肝の弱い人が成りやすいですし、他の臓腑の熱が肝に飛んで来るパターンもあります。また、お酒の許容量を超えるのも、肝に熱が入る事です。(だから、こころの不安定な方はお酒は絶対やめた方がいいです本当は。)
 ②これは、体質の要因が大きいです。また、お酒や薬、ストレスや過労などで肝が弱ってしまっていると、陰が漏れやすくなります。
 ③詳しくは、うつうつタイプの方に書きますが、エンジンが詰まってしまって過熱するイメージです。この時、②が出やすい体質だと、発熱も早いです。また、うつうつタイプと関連が深く、2つのタイプを行き来することになりやすいです。
 対策としては、①肝実熱には清肝、平肝、潜陽など、②の肝陽上亢には補肝陰、③の肝気鬱結には疏肝理気などとなります。また、これらが悪化した場合、熱は火になるため瀉火という方法を使います。更に、熱や火が強いと風が生まれることもあります。この場合は、熄風を使います。火邪になったり風邪が生まれるレベルの時にはもう、心理的に怒りをリリースしようとしても難しいです。
 以下に食材例を書いていきます。


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薬剤師で薬膳師であり、鬱で入院経験のあるやわるしす塾長が、経験を織り交ぜつつ、薬膳に限らずこころのケアをご紹介します。 一括料金です。月が…

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