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ヒューマニティーはお金より大事だ|起業家アンドリュー・ヤングが描くヒューマニティーファースト

「我々がトランプの話をする時、我々はトランプに負ける」来年に迫った米大統領選挙。トランプに必ず勝てる民主党候補者を決める為の大激戦、第4回ディベートで、ついに「アウトサイダー」アンドリュー・ヤングがその存在感を際立たせてきました。

今回のディベートはトランプ支持者が非常に多いオハイオ州で開催され、オハイオのトランプ票をいかに切り崩せるかが注目されていました。「ウクライナ疑惑」から弾劾の窮地に立たされているトランプ大統領。その弾劾は必要か?とディベート司会者に聞かれたヤングはこう答えました。

「弾劾自体は支持するけれど、トランプを弾劾することを”成功”だと見なしたり、トランプを2016年の選挙で勝たせる原因になった問題自体が消えるという幻想は抱いていない。我々は今日オハイオに来させていただいたが、なぜトランプはオハイオで圧勝できたのか?と理由を考えてみました。オハイオは30万人もの製造業に就く人が職を失いました。それは始まりに過ぎません。」

「あたな達が住んでいるオハイオの街で、閉店した店を見たことがある人はどれくらいいますか?」

「その失業問題は、amazonだけが市場を独占しアメリカの3割の店やモールを閉店に追い込み、税金を支払わずに200億ドル(2兆円)を吸い上げたという単純な話ではなく、その失業問題こそがトランプが勝利した要因”第4産業革命”なのです。第4産業革命は加速し、更に成長し、誰がホワイトハウスを仕切るかに関わらず、深刻なダメージをアメリカ全土に与えます。我々がドナルド・トランプの話をする時、我々は負ける。我々は新しいビジョンを出し合い、その話し合いの中にトランプの弾劾を含む必要があるのです。」

ヤングが言い出した「第4産業革命」とは、サイバーフィジカルシステムにより凄まじい勢いで私たちの生活の仕方や働き方が変わったことを定義する言葉として、専門知識のある人たちの中で使われていました。

サイバーフィジカルシステム:フィジカル(現実)空間で起こる様々な出来事を測定したデータを、サイバー空間で数値化し、より分かりやすくするシステム。

過去に3度の大きな産業革命が人類の生活を変化させたことを踏まえて、この言葉を使うようになったようです。

第4産業革命は、主にAIのように自動で機械が判断し製造ラインをコンピュータ化できる社会のことを定義しています。アメリカの大手報道機関CNBCによると、顔認識、デジタルヘルスケア、3Dプリンター技術や、ゲノム編集(遺伝子を自由に操作する技術)もAR(拡張現実システム)も第4産業革命に入るといわれています。

最初の産業革命は1700年代に、機械や水蒸気の力が工場化されました。第2産業革命では大量生産や電気化が進み、第3産業革命ではデジタル化が進みました。これらの革命とは比較できないスピードで進化するのが第4産業革命です。どの産業革命期も失業者は出ましたが、今回の産業革命は誰一人正確に進化するスピードを予測できていないので、アメリカ国民はその変化に備えて準備しなければならない、と警鐘を鳴らすも記事も出始めています。

Bibliography:ヤングが言う、トランプを勝たせた第4産業革命とは?

この第4産業革命は、国レベルでの収入を大幅に増やし、より人間がクリエイティブな仕事をしやすくなるといわれていますが、その一方で製造業、小売業の販売員、トラック運転手、ファーストフードの従業員、コールセンターの従業員は職を失くすとアメリカの起業家達は警鐘を鳴らし続けています。

アメリカでは既にターゲット(大型スーパー)やCVS(大型ドラッグストア)のレジ係はいなくなりました。マクドナルドのオーダーはタッチパネルで取れるようなり、シリコンバレーではAIがトラックを運転し始めています。

ヤングはアメリカの失業者が増えるのは目に見えていると説明し、自分を含む民主党候補者達が解決策を提示できなければ、失業者達のストレスに理解を示したパフォーマンスをするトランプに負ける、と語っていて、民主党候補者で一丸となり2020年の選挙に勝とうとしている意気込みが伝わってくるスピーチに、聞き入ってしまいました。

日本では「第4産業革命」という言葉すら、あまり耳にしませんが、ファストリテーリング(ユニクロ)のCEO柳井氏は日本のAI化への遅れに警鐘を鳴らし始めました。(この記事すごく面白かった!)

更にアメリカでは今、国が安全だと認めた「オピオイド」という鎮痛剤に含まれるヘロインが原因で、鎮痛剤をやめられない患者がヘロイン中毒になり、何度もオーバードーズ(過剰摂取)で病院に運ばれ、最終的に命を落とす…という悪夢のような「オピオイドクライシス」が社会問題になっています。

政府はオピオイドを積極的に販売していた「Purdue」という製薬会社に600万ドルの支払いを命じるのが適切だと考えたようですが、この製薬会社はオピオイドの販売で300億ドルを手にしています。つまり、オピオイドの利益のたった2%しか罰金になっていないのに、何千もの人をたった8時間足らず(オピオイドをオーバードーズし8時間以上経過すると、命を落とします)で殺した罪には問われず、政府は見て見ぬふりをしているということです。

ヤングはこれらの人々を救うには、ヘロイン中毒を有罪判決にせずに、コミュニティで助けあえる環境を作ろう、と呼びかけています。ヤングは元々、早口なのですが、苛立つと表情は冷静なのにより早口に、より熱くなります。

「これは資本主義が手に負えなくなった病気だ!ヘロイン中毒の人が自ら相談しやすい環境を作れば、オーバードーズでの死を防げる。誰かに相談できる。これはお金の問題じゃない、人の命の問題なんだ!!」と早口でオハイオの人に訴えかけました。

ヤングは「ヒューマニティーファースト」という言葉を自身の選挙キャンペーンに掲げています。「ヒューマニティーはお金より重要である。私たちに共通する目標と価値観の為に市場は共通する」という考え方なのですが、今回のディベートのどんな場面でも「ヒューマニティーファースト」を貫いたヤング。この人間身あるところが、私は大好きです。

アメリカ最大の情報機関cnnは、3ヶ月前には誰もディベートで第4産業革命の危機について話していなかったが、ヤングが持ち出してきた問題を今では皆が議論しだした。ヤングは無視できない存在だ、とし今回のディベート勝者としてヤングの名前を掲載しました。

MATH(Make America Think Harder)

MATH(アメリカに必死に考えさせよう)という、ヤングが打ち出した小さな火種だったキャンペーンは、ついに炎となりアメリカ全土を熱く燃え上がらせようとしています。

今回のディベート自体は、バーニー・サンダースの心臓手術と長引く不人気からの復活劇が話題になり、若手ピート・ブーティジェッジが打ち出したヘルスケアを支持し始める人が増えたようです。逆に本命視されていた元副大統領のジョー・バイデンは「ウクライナ疑惑」から立ち直れずに失速中で、バイデンを支持していた人の票がピート・ブーティジェッジに流れるのでは?という予測が出ています。ニューヨーク州では、ディベートの事前世論調査で1位を獲得していたエリザベス・ウォレンと、バーニー・サンダースの左寄りな2人の支持が相変わらず高いようです。

本当にどうなるか分からない2020米大統領選。

次回の民主党ディベートは11月20日。トランプ率いる共和党が強いジョージア州で開催されます。ヤングが何をしでかすか見逃せない!!


ヤングの政策「ユニバーサル・ベーシック・インカム」について書いています


Bibliography:民主党ディベートの勝者と敗者

https://www.cnn.com/2019/10/15/politics/who-won-the-democratic-debate/index.html
















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