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アウトサイダーの快進撃

「毎月11万円を1年間、10組の家族に差し上げます。気になる人は、今すぐヤング2020.comへ!」2日前に行われたアメリカ大統領選、民主党ディベートで、ディベート参加資格のある10名の大統領選候補者の内の1人、アウトサイダー、アンドリュー・ヤングがとんでもなくクレイジーなことを言いだしました。

ヤングはユニバーサルベーシックインカム(通称UBI)という「毎月11万円を全国民に支給する」というユニークなキャンペーンを展開中の元起業家なのですが、毎回ディベートで手を挙げても、中々司会者に当ててもらえず話せる時間が少ないのがネックになっていました。

しかし、ディベートでは最後に候補者達全員に各45秒間、自由に話していい時間が与えられます。ここでヤングは勝負に出ました。「皆さんが候補者達に寄付すると、どうなるか?候補者達はそのお金を自身のCMやコンサルタント料に使い切り、皆さんはきっとそれが役に立つことだと思っている。我々は自分達のやり方が正しいと証明したい。我々のキャンペーンはUBIとして皆さんからの寄付を1年間毎月11万、10組の家族に差し上げます。今すぐヤング2020.comへ!」とスピーチし、ヤング支援者は大歓声を挙げていましたが、ディベート会場は前代未聞の出来事に、何が起こったのか理解できず一瞬静まりかえっていました。次にスピーチするはずの候補者ピート・ブーティジェッジも言葉に詰まってしまい「ヤング、ユニークすぎるだろ」と言い、会場から笑いが出ていました。

ヤングは自身が仕掛けた勝負に勝ったのです。

UBIについてはこちらにも書いています


ヤングのUBIについては、賛否両論ありますが、「全ての国民が毎月11万円もらえる」ということは、専業主婦(夫)として家で働いている人達にも11万円という価値を生み出します。これが経済の発展に大きな影響を与える、というヤングの考え方にはとても共感できます。

そして、トランプ政権の支持基盤となっているオハイオ、ペンシルバニア、ミシガン、ウィスコンシン州は工場の仕事がAI化され、失業者が爆発的に増えた地域で、その貧困がドラッグ中毒や自殺を倍増させています。更には、AIが仕事を奪ったのに「有色人種が白人の仕事を奪っている」というヘイトにすり替わっている、とヤングは指摘しています。

今後は、トラック運転手、小売業の販売員、電話オペレーターなどがAI化されていくとアメリカの起業家達は警鐘を鳴らしています。アメリカのトラック運転手の平均年収は500万円です。これがAI化されると、年収は0円になります。UBIで提示している月11万円はアメリカで1ヶ月食べていけるギリギリの金額に設定されているので、仮に失業したとしても一気に年収が0にならない事は、生きていく上でクッションになります。そして、UBIというクッションがあれば、学校に行き直したり、趣味にしていた事(例えば日曜大工や、ベーキング)を仕事にすることもでき、失業=終わり、じゃないんだという、生きる希望になります。

更にヤングが注視しているのは、トラック運転手は元軍人が多く、銃の扱いに慣れていることです。彼らの多くが銃を所持し、それらを規制しないのであれば、彼らが失業した時に”貧困"が生み出すヘイトは今のようなヘイトじゃ済まない、と警鐘を鳴らしています。

政治経験が無いヤングは、アウトサイダーとして扱われることも多いですが、彼がアウトサイダーだからこそ見えている世界があるのも事実です。毎月11万円というお金が、人を自由にする、というヤングの着眼点が今アメリカに浸透し始めています。

次回の民主党ディベートは10月15日、トランプ支持者の多いオハイオで開催されます。なんと!私の大好きなニューヨークタイムズの記者が、初めて司会者の1人に選ばれていました。


まだまだ、どうなるか分からないアメリカ大統領選。面白くなってきました。

Bibliography :アンドリュー・ヤングにインタビュー。アウトサイダー今夜民主党ディベートに登場




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