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ECサイトのメディア化を「デザイン経営宣言」から考える

新型コロナウィルスによって、世の中はかつてないほどの大きな変化がもたらされています。

買い物はネットショッピングで行うようにと、政府が国民に「新しい生活様式」として呼びかけているほどです。

この様なECへの大きな追い風の中、ECサイトはどのように差別化すればいいのでしょうか。

経済産業省と特許庁が発表した「デザイン経営宣言」からアプローチしてみます。

・デザイン経営宣言とは

「デザイン経営宣言」は、2018年5月23日に経済産業省と特許庁によって発表されました。

経済産業省のサイトにPDFが公開されています。

※ここで使われている「デザイン」とは、形や色などの意匠を表す狭義のデザインではなく、設計という広義のデザインのことです。

デザイン経営宣言の内容は、発表当時から「分かりにくい」と言われていますが…、要するに​

差別化できずに価格競争に苦しんでいる企業が、自社の経営をデザインし直すことで、市場内の新たなポジションを獲得し、価格競争から脱却する

これからの経営には、これが必要だということです。

デザイン経営宣言の「自社の経営をデザインし直す」という部分では、組織改革を含め、様々なことが書いてあります。

その次の「市場内のポジションを獲得し、価格競争から脱却する」ということについて考えていくと、この実現には「ブランド力」と「イノベーション力」、これらの向上が必要と示されています。

つまりは、経済産業省と特許庁が「ブランド力とイノベーション力を上げろ」と言っている、ということです。

・ビジネスモデルの転換が重要

この「デザイン経営宣言」の提言のうち、「ブランド力の向上」を実現するためには、「21世紀型の経営モデル」への転換が重要と考えられます。

「20世紀型の経営モデル」は、モノ消費の時代の中で、安くして沢山売ることが競争力に繋がっていました。

それに対し「21世紀型の経営モデル」は、コト消費の時代の中で、顧客やユーザーに好きになってもらうことが競争力となります。

価格競争に苦しんでいるうちは、20世紀型の経営モデルから脱却できていないということになります。

デザイン経営からのアプローチ-10

20世紀型の経営資源は、「ヒト・モノ・カネ」と言われてきました。21世紀型の経営資源は、それらに「情報」が加わります。

デザイン経営からのアプローチ-11

商品やサービスに対するより詳しいデータや知識、さらには担当者の想いといったものが「情報」に含まれます。商品やサービス、会社やブランドを好きになってもらうには、情報が必要です。

「モノ消費」ではなく「コト消費」の時代では、情報を元に自分の体験として「自分の共感できるもの」に対して購買意欲が生じます。

21世紀型経営モデルに必要な戦略的ブランディングは、「巻き込み」「動かすこと」と言われます。

顧客・ファンの獲得」と「ソーシャルリレーション」こそが必要になってきます。

・ECサイトの場合はどうすればいい?

ファンを獲得し支持を得ること…。どの業種でもそう簡単なことではないと思いますが、とくにECサイトの場合は、どうすればいいのでしょうか。

・SNSでの発信は基本

ブランドを認知させファンを獲得するには、まずはSNSは必須です。これはもう常識かと思います。

SNSは人的資源さえあれば予算をかけずに実行できるので、これをやらない手はありません。例え資金が乏しかったとしても、まずはSNSです。

ECサイトに限らず、SNSでの発信が当たり前となっている今、それに加えて更なる施策を行いたいところです。

・自社ECサイトがカギになる

多くのショップの場合、自社のECサイトに加え、楽天やAmazon等のショッピングモールを併用する形が多いかと思います。ショッピングモールの売上が大半を占め、自社ECサイトの存在意義があまり感じられないというショップも多いのではないでしょうか。

ファンを獲得し支持を得るには、この自社ECサイトこそがカギになります。

ECの場合は、ECサイトと一体化して発信するメディアが効果的で、そういう流れにもなってきています。自社ECサイト内に記事の発信機能を持たせる(メディア化する)ということが重要な時代です。

・メディア化のメリットとその方法

ECサイトのメディア化によって、商品やブランドの関連コンテンツに対する背景や想いを発信することにより、ファンの獲得に繋がります。

また、記事コンテンツの追加によって、サイトに到達していなかった人にも情報が届くようになり、潜在顧客をターゲット化します。

デザイン経営からのアプローチ-18

SNSがすぐ始められるのに対し、ECをメディア化するのは大変そうですが、「ECサイトのメディア化機能を持ったECサービス」があります。

記事発信機能をもったサイトをフルスクラッチで一から作るとかなりの開発費がかかる上、納品後は逐一発注しない限り、機能は追加されません。

それに対し「メディア化機能を持ったECサービス」の中には、バージョンアップされることによって、自動的に機能追加されるというサービスもあります。

予算に余裕があれば、自分の思うままに開発してもらえるフルスクラッチがいいのかもしれませんが、あまり予算をかけられない中小の企業であれば、「メディア化機能を持ったECサービス」を使うのがコストパフォーマンス的にも優れた手法であると言えるでしょう。

比較的敷居の低いこうしたサービスを利用してメディア化を行うことが、デザイン経営宣言で言うところの「ブランド力向上」の近道になるのかと思います。

・参考までに…

そういったサービスを提供している会社は、「顧客がそのサービスを導入したことで売上がどの程度アップしたか」といったデータを持っていることもあります。ざっくりした数字を教えてもらえることもありますので、サービスの導入を考えているなら、まずは問い合わせてみるといいのではないでしょうか。

・[余談]結局、できることは全てやるということ

ECサイトをどうするかというところに焦点を当てて述べてきましたが、販促に使えるツールやサービスも日々増えてきており、それ以外にもやれる施策は数多くあると思います。

当たり前のことですが、顕在顧客や潜在顧客に対して、「やれることは全てやりましょう」ということです。これは、ECサイト以外においても言えることかと思います。

勿論、商品やサービス自体に魅力が必要なのは言うまでもありません。

人手や時間、工数といった制約があるかもしれませんが、そこに手間をかけて商品・サービスの魅力を伝えられる企業こそが、ファンを獲得して価格競争から脱却できるようになるものと思います。

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