八羽🪽

《いのちのものがたり》

八羽🪽

《いのちのものがたり》

マガジン

  • いのちのものがたり外伝〜老師編〜

    旅の途中に届いたある手紙から始まる物語「パンドラの箱は開いた…」

  • いのちのものがたり

    地球へ降りてきた一つの「いのち」の地球体験記

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  • いのちのものがたり外伝〜老師編〜
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    突然ハマった・・・

    佐井好子さん。

    突然ハマった・・・

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    いのちのものがたり外伝〜老師編〜パンドラの箱

     私は大陸の外れ、山と海に囲われた入り江にいた。そこに、私に会いたいという老師がいるらしい。どこで私を知ったのか、人伝に便りが届いた。 この世界を織り成す綾を解いたなら そこには何があるとお思いか それはただの・・・ 追い求めないことだ パンドラの箱は開いた どうしてこの世が出来たのか 最初を見るがよい 追い求める崇高なものは 醜い感情の中にある ならば醜いものをみろ 箱は開いた  この手紙が届いたのは、3年前、私は旅の途中で、この老師の使いだという若

    いのちのものがたり外伝〜老師編〜パンドラの箱

    いのちのものがたり 完全版

     昔々、人がいのちを生きていた時代、わたしはあなたに出逢った。声に成らない声を聴き、風に乗った思いを聞いた。「きみがすき」その声は、風と共にやってきた。なつかしい「それ」は、わたしの身体を包んで溶かした。なつかしく、とても暖かい。「それ」は、いのちだった。  歌を聞いた。王の歌を儚く切ないそれは、わたしの胸を打った。声にならない音だった。愛した者が消えていく、愛した国が消えていく、それは王の思いだった。わたしは、胸が痛かった。握りしめられた思いが、苦しかった。人は思いを生み

    いのちのものがたり 完全版

    いのちのものがたり外伝 老師編15

    辺りが夕闇に包まれるころ、私たちは港についた。 「まるで一瞬が永遠の様ですね」 そう話す弟子の横顔は、別れを惜しむでも無く 何かが始まる前のような、静かな闘志を感じた。 始まりと終わりはいつも一緒だ。 「案内をありがとう、あなたはずっとこの場所にいるの?」 「いいえ、どこにでも行きますよ」 「では、私と共にしばし当てのない旅に行きましょう」 弟子は一瞬息を止め、大きく息を吐き出しながら言った。 「夢の様な提案ですね、いつ思い付いたのですか」 「今よ」私は躊

    いのちのものがたり外伝 老師編15

    いのちのものがたり外伝 老師編14

    「そういうこと、だったのですね」と弟子が言った。 言葉が要らないのは、良いようで詰まらないな、と思いながら私は返事をした。 「ええ、この先はそれぞれが解放されていくでしょう」 弟子は不意に振り返り、私を抱きしめた。 「ありがとう、あなたも解放されてください」 ほのかな百合の香りが衣服からした。 どこかで嗅いだことのある懐かしい匂いだった。 「乳飲み子は母の香りがするのですよ」 その言葉を聴きながら、私は巡るいのちを思った。

    いのちのものがたり外伝 老師編14

    いのちのものがたり外伝 老師編13

    森の中を歩きながら、私はあの手紙のことを思い出していた。 パンドラの箱を開けたのは私だ。 あの箱に、この世界が出来た時の影の感情を仕舞ったのも私だ。 それは閉じ込めたとはいえ、常に裏で動いていた。 そうしてこの世界の歴史が動き、この世を創ってきた。 その封印を解いたのだから、誰もが醜いものを見るだろう。 それは元々あったものだ。 言いようのない開放感と胸騒ぎを感じながら私は歩いた。

    いのちのものがたり外伝 老師編13

    いのちのものがたり外伝 老師編12

    「老師、そろそろ行こうと思います」 「そうか、またどこかでな、近くの港まで彼に先導させよう。彼はわしより色々と役に立つであろう」 彼とは、あの弟子のことを言っているのであろう。 老師は、暖炉に砂をかけ火を消した。洞窟の出入り口から外の光が見える。 まだ日暮れ前だ。私は一礼し、その場を後にした。 「行きましょうか」外に出ると老師の弟子が木にもたれ、こちらを伺っていた。 私は振り返ることなく、頷いた。 老師と弟子を観ていると、一生の内に出会える人は、ほんの一握りなの

    いのちのものがたり外伝 老師編12

    いのちのものがたり外伝 老師編11

    その香りを嗅いだ瞬間、不思議なことが起きた。 私の意識は別の空間に飛んだ。私はどこかの宮殿の冷たい床の上で舞っている。 それは、見る者のない舞で、空間と溶け合う様な踊りだった。 「どうされた、何かを思い出したかね?」 「はい、どこかの宮殿で舞っている姿が見えました」 「君は仕える者だったのかい?」 「いいえ、私はただ舞う者でした」 「そうか、やはりあなたは超越した人だ」 そう語る老師は、何か言いたそうだったが、決して口には出さなかった。

    いのちのものがたり外伝 老師編11

    いのちのものがたり外伝 老師編10

    「無意識の力?」 「そうじゃ、そなたはまだその力を意識しておらぬが、いずれ解るだろう」 「いずれ、ですか」 「ものには順序があるからの、そなたはまだ旅の途中、わし以外にも沢山の人に出会うはずじゃ、それはそなたの無意識の力が導いておる」 老師はとても優しい顔でそう言い、火にかけていた薬缶から急須に湯を注いだ。 洞窟内に茶の香りが立ち込める。

    いのちのものがたり外伝 老師編10

    いのちのものがたり外伝 老師編9

    私は老師に尋ねられるまで 自分の力などというものを意識したことがなかった。 「力・・・」 「そうだ、思いも寄らぬか」 「はい、考えたことがありません」 「そなたは、わしの夢に出て手紙を書かせた。それは何故だ」 「無意識でしたことです」 「そなたの無意識は凄い力じゃな」そう言って老師は笑った。

    いのちのものがたり外伝 老師編9

    いのちのものがたり外伝 老師編8

     「うむ、幻自体に力は無いがの、何かに力を与えるのは人の意思だ」 「そうですね、しかし」 「そうじゃ、人は意外とそれに気がついておらぬ」 「熱っ」 暖炉の火が爆ぜ、火の粉が顔に飛んだ。 熱さを感じながらこれも幻なのか、と思った。 「意思は形が無い、形がないものは形を作る種だ。わしの夢も現実になった。そなたの力はなんだ?」  

    いのちのものがたり外伝 老師編8

    いのちのものがたり外伝 老師編7

    「日暮れ前に、ここを立とうと思います」 「そうか、では一つ質問していいかね、あなたはここへ来る時、若い頃のわしに出会っただろう」 「ええ」 「なぜそれが分かった」 「瞳です」 「ははは、わしに出会う前に、なぜそれがわしの瞳だと分かったのだ」 そう言われて、私は言葉に詰まった。 なぜ会ったことも無い老師の瞳が分かったのだろう。 「わかりません、ただ、わかっていました」 「そう、人は答えを求めて紛争するがの、真実というものはただわかっているものだ。それ以外は幻と

    いのちのものがたり外伝 老師編7