いのちのものがたり外伝 老師編12

「老師、そろそろ行こうと思います」

「そうか、またどこかでな、近くの港まで彼に先導させよう。彼はわしより色々と役に立つであろう」

彼とは、あの弟子のことを言っているのであろう。

老師は、暖炉に砂をかけ火を消した。洞窟の出入り口から外の光が見える。

まだ日暮れ前だ。私は一礼し、その場を後にした。

「行きましょうか」外に出ると老師の弟子が木にもたれ、こちらを伺っていた。

私は振り返ることなく、頷いた。

老師と弟子を観ていると、一生の内に出会える人は、ほんの一握りなのではないかと思えてくる。

同じ人が姿を変えて、幾度と無く出会いと別れを繰り返しているのだと。

「何も考えないことですよ」前を歩く弟子がそう言った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?