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BENTEN the KID ー御存知弁天小僧白波事始ー11月7日(日)18:00

劇場に一歩入るとおしゃべりが聞こえる。まだ1時間前なのに、待っている人が列を作って階段を占めていた。その声はずっと楽しそうに響いていた。聞けば、一番前の席で見たくて2時間前から待っている人もいるという。そこで同じファンとしていることが楽しいらしい。

開場5分前、ドアを開ける。観客が入る。私の役目はパンフレットを渡すことだったが、観客は慣れていて、検温、手の消毒、チケットを見せる、おひねりをとる、会場へ入るという流れで、スムーズに会場へ入っていく。常連さん、毎日来る人がいることを知る。

チケットの他にフォトカード購入のチケットを持つ人は、封筒に入った役者の写真を手にする。中の写真は誰だかはわからず、開けてみてのお楽しみ。ロビーにはおひねりガチャと言うのがあり、金のおひねり、缶バッジ、当たりくじが入っている。当たれば、そこでもフォトカードがもらえると言う。一人が何個も買って、ロビーがにぎわっていた。
観客は、着物、ドレス、ちょっと変わった洋装に見えた。

始まる前から、この公演の人気ぶりを感じた。私は初めてだが、すでに5回目、円頓寺にあるスタジオではもっと頻繁に公演があって、熱狂的ファンがいることを知った。

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公演が始まる。暗い場内に3つほどの光の柱の中で、木刀でつつきあうシーンから始まる。まだ話がわからなかったが、悪党を捕まえると言う設定らしい。その木刀裁き、勢い、スピード、突き突かれる姿勢、そして突いた時の静止、その間の良さで、本当に突いているように見える。それは木バチでたたくリズムに合って一層素早さを感じる。音と動きのマッチが素晴らしく、どうやって練習するのかと感動していた。

話がだんだん見えてくる。泥棒と義賊、それを捕まえる岡っ引き、手を貸す他の武士、との打ちあい。でも決して捕まらない「ルパン3世」のような流れ。

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そんな世間の出来事を知らせるかわら版売り。そこでまた一つの場面ができ、話をおもしろく語り観客を引き込む。
「浜松や」と言う呉服店が幕府にわいろを渡し、塩を買う権利を手に入れる。その手口を知る義賊、泥棒が店主をだましてお金をとろうとする。そうさせまいと「浜松や」の用心棒が出てきて、そこで刀さばきと木バチのリズムでスピードのある動きと静止で迫力のある動きを見せる。

そんな動きのたび、おひねりが飛ぶ。時に観客通路にも走りこんでくる役者の風圧を感じ、まじかに顔が見れる。おひねりが飛ぶ。そんなやり取りがとても楽しい空間を作っていた。
最後は「浜松や」の店主はお縄になり、泥棒、用心棒など5人が一つにまとまる。

悪とは何か? 金持ちがもっと金を得ようとする、貧しいコソ泥が金持ちからお金を盗もうとする、金持ちからお金をとり、貧しい人に分ける盗賊、こんな人々が動いて、世の中の一部を回している。ちょっと緩い世の中、助け合い見たいな世の中。決して正しいことではないのに、今よりずっと許せてしまう。ストーリー的にもほっこりして終わった。

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芝居が終わると役者全員出てきてお辞儀、通路を走るサービス、一番落ち着いて盗賊を演じていた駄右衛門が、普通のおしゃべりをして、明るい男性に戻った。それだけうまく役をこなしていた。ストーリー、動き、お芝居どれも引き込まれた1.5時間だった。十分に新しい歌舞伎を教えてくれた。             

レポート:カエル 撮影:服部義安

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