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【詩】エメ・ストラと風

こうして座って外気を浴びていると不思議な私エメ・ストラ。

逡巡の果て、人の言葉は皆、風に揺られる葉に理由をムリヤリ求めているかのように結論。

それは言葉あっての発想で、かまわず擦れるこの音に耳を澄ます時間こそもっと増えるべき暗い渇望❓

歩けば歩くほど私は転倒しそうになる。それは本来的でないモノでゆく先々があらかじめ埋め尽くされているから。

私――エメ・ストラの故郷では風を聴く時押し黙るのが風習。肌を寄せ合いキスをします。こうすればごく自然に言葉は失われ、風をより多く。

時折道端で抱き合ったまま【 生 】が途絶した個体同士を見かけます。エメ・ストラ的には『ああ、いいな』って。

センセイはこの概念? を『ボッカテキ』だと教えてくれました。なので校庭に出てキスをしましょうと提案しましたが、矛盾をしていますが断られました。

つまりその概念を知りつつも、実行には値しないと考えているのでしょう。しかし、今の勉強の範囲内で断定などできません。

校庭でコケて、膝を擦りむくとセンセイは変貌して私を心配してくれました。生体機能の損傷に関しては労を惜しまない……❓

静かな保健室差し込む西日舞う埃。
消毒を施され廊下に出るセンセイの背中を見ると何故か胸の辺りがチクと痛みました。

まだまだエメ・ストラも知らない事ばかりで、風を感じるだけが【 生 】ではないと、今……私はこうして一時間も保健室の椅子の上で茫然と放課後の窓の外を眺めていた。

自分で自分の肩を抱き、俯いているとどうしてか涙がこぼれた。故郷にはこの瞬間も荒涼とした風を浴び、キスをしながら【 死 】を歓迎する個体がいるのだろうか。

私は通学靴をストンと落とし、振り向き、やがて一歩外に出た。古ぼけた木製下駄箱の匂いを、風がそっと運んだ。



【別のヒト】

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