菅官房長官の消費税増税発言の真意を読み解く

1. 菅官房長官の本気

菅官房長官が、TV番組で消費税の増税は避けて通れないと発言されたと報道が出ています。

https://news.yahoo.co.jp/articles/95901d8c2df215f5c9bcf71aa785733765011efc


「将来的なことを考えたら行政改革を徹底した上で、国民の皆さんにお願いして消費税は引き上げざるを得ない」

「私も引き上げると発言しない方が良いと思ったが、これだけの少子高齢化社会で、どんなに頑張っても人口減少は避けられない」

とおっしゃったそうです。


解散総選挙の可能性が指摘されている中で、ご本人の支持にプラスにならない発言と思いますが、それでも必要なこととしておっしゃったのだろうと思います。

これは、ショートリリーフではなく、少し先の将来についても自分が責任を持って政権運営していくという責任と覚悟ではないかと感じます。強い本気度を感じます。


2.行政改革の徹底

よく国民に負担をお願いするのだから、政府も身を切れという話が出ます。
当然のことでしょうし、行政のスリム化は不断の努力が必要です。

ここでは、消費税増税との関係、つまり財政との関係を見ていきたいと思います。

国家公務員人件費は、5.3兆円です。
予算規模がどんどん膨らむ中、改革努力も続けていて近年は横ばいかやや減少傾向です。

国家公務員人件費

(図は財務省主計局の資料)


国家公務員の人数は減少してきて、近年は横ばいで約28.7万人です。

国家公務員の水位い

(図は人事院年次報告書(平成30年度)


また、国家公務員の非正規化も進んでいて、非正規雇用の割合は2012年の19.6%から2019年には22.1%まで上昇しています。

特に、霞が関ではなくて多くの国家公務員が働いている現場の役所では、かなり非正規雇用の割合が高く、ハローワークなど現場を抱えている厚生労働省だと2019年時点で53%となっています。


国家予算100兆円のうち、地方に渡すお金(地方交付税交付金)と借金の返済(国債費)は減らせないので、それらを除いた、国が実際に政策に使うお金(一般歳出)は60兆円程度です。

一般会計歳出・歳入構成


国家公務員の人件費の5.3兆円というのは、特別会計からの支出を含む数字なのですが、単純に消費税の税収に換算すると2%相当の規模です。

上に述べたように、行政サービスをカットしない限り、それほど国家公務員を減らす余地は大きくありません。

行政改革は、効率的かつ効果的に行政サービスを国民に届けるために絶対に進めるべきですし、人件費以外にも役割が乏しくなった事業を廃止するなども必要です。

ただし、これによって大きな財源が出てくる話ではないですし、事業の廃止についてはどの事業でも一定数の困る人は出てくるので国民に痛みのない話ではありません


3.本丸は社会保障

一般歳出60兆円のうち、57%(約34兆円)を占めているのが、年金、医療、介護、子育てなどの社会保障です。

特に、年金、医療、介護といった高齢者が主に受ける給付やサービスがほとんどなので、これが毎年何もしなくても高齢化が進む影響などで6,000億円増えていく構造になっています。

主に、現役世代が負担する社会保険料や税金で賄っていますが、生産年齢人口はこれからどんどん減っていきます。

菅さんがおっしゃった「人口減少は変わらない」というのは、今後も少子高齢化が進むのでこの「社会保障の受け手が増えて、負担する現役世代が減る」傾向が変わらないという意味と思います。


人口構造

(図は厚生労働省の資料)


毎年、6,000億円も支出が増えていくとどんどん赤字が膨らみ続けるので、一部の人の給付を減らしたり、サービスの値段を下げるなどの効率化により、毎年1,200億円~1,700億円くらい支出をカットして、だいたい5,000億円くらいの延びに抑えているのが今の状況です。

つまり、これからの社会保障について、誰に負担や我慢をしてもらうかというのは、誰が政権を取っても避けて通れない日本の重要な課題なのです。

増税や社会保険料増にしても負担をお願いする話ですし、サービスや給付をカットするのも国民の誰かに我慢をしてもらう話です。

病気、怪我、高齢で働けない、介護が必要になるといった困りごとは、誰もがいつか直面するものです。社会保障をカットしすぎるとこういう困った時にお金持ちでないとサービスを受けられなくなってしまいます。

なので、やはり今よりも負担をお願いしないと安心して暮らせる社会でなくなってしまうということなのです。

じゃあ、誰に負担をお願いするかというと、税収も安定している、そして給与所得者でない高齢者の方も含めて広く負担していただくという観点から、消費税が財政的には一番よいということになると思います。

ただ、消費税が上がって困るのは所得の低い方々です。

また、コロナで経済や雇用が不安定になる中で、いつ消費税を上げるのかという大事な問題もあります。(菅さんも「将来的には」とおっしゃっているので、今すぐ上げるとは言ってませんね)


4.丁寧に説明しようとすると…。

消費税の増税が避けて通れない事情は、上記のとおりなのですが、これをもう少し丁寧に説明しようとすると、以下のような感じではないかと思います。

■ 高齢化と生産年齢人口の減少により、社会保障の支出は増えていくし、現役世代だけに負担増をお願いしていくのはどうしても無理があるし不公平になってしまいます。

■ 消費税を増税するとしても、なるべく少ない増税で済むように、行政改革の徹底はもちろんだが、社会保障についてなるべく少ないコストでサービスが受けられるような工夫と困っている人へ支援を集中することにより、社会保障を効率化する改革を進めていきます。

■ もちろん、消費税の影響は所得の低い方に特に大きいので、そういう方々への配慮もしっかりしていきます。

■ これは、将来的に考えないといけないということで今のコロナで苦しい状況でやることではない。時期は国民生活への影響をよく見極めないといけない。

皆さんは、どうお考えでしょうか。


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