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日本学術会議任命と行政権の行使

日本学術会議の任命について、推薦者の一部の人間について菅総理が任命を見送ったことについて、波紋が広がっています。

日本学術会議法で、日本学術会議の推薦に基づき内閣総理大臣が会員を任命することになっているが、今の制度になった2004年以降、推薦者が任命されなかったことは初めてのことだそうです。

過去に政府の方針に反対を表明した研究者が含まれていることから、恣意的な人事介入ではないか、あるいは学問の自由を委縮させるのではないかと批判が出ています。

これについては、菅総理も法に基づいて適切に対応した結果としています。


菅首相「法に基づいて適切に対応した結果」


確かに任命権があるのだから、推薦を拒否することも、もちろんあり得るのだろうとは思います。

法に基づき対応しているというのは、いわばルールに従ってやっていることで当たり前のことで、法に反して行政権を行使していたらそれこそ大問題です。

問題は、ルールの範囲内だとしても、プロセスや判断が適切だったかどうかということで、それを最終的に国民が判断できるようにしておくことがとても大事だと思います。

政府であれ企業であれ、人事権の行使は組織のガバナンスの中核の問題なので、そのプロセスや判断について多くの人が検証でき、納得を得られるものであってほしいと思います。

そうでなければ、(今回の事案がそうであるかなんとも言えませんが)恣意的な判断が可能となってしまうからです。

行政権の行使というのは、法律が与えたものです。
そして、法律は国民を代表する国会議員で構成される議会の多数の賛成によって、制定されます。

つまり、権限を与えることが多数派によって可能です。
そしてその権限の行使は国民全体のために行われることが期待されており、多数派のためだけに行われることを前提としているわけではありませんので、「ああ、なるほど」と多くの人が納得できることが大事です。

そうでなければ、多数派でない意見がないがしろにされる恐れがあるからです。
色々な意見の人がいる中で、議論を重ねてよい決定をしていこうということは民主主義の根幹でもあります。

人事の個別の事情をすべて説明することは難しい面があるかもしれませんが、本来は任命の基準があって、それにどう当てはまるのか、当てはまらないのかがわかることが望ましいと思います。

これについては、説明に前向きとの報道もあります。


なお、日本学術会議の位置づけや運営の方に疑問を呈する意見も見られますが、そのことと任命権の行使の説明については分けて考える必要があると思います。

強いリーダーシップの行使、強い権限の行使で政策が大きく動いていくことはよいことと思いますが、その権限の行使の是非について多くの国民が理解でき、それが支持されていく中で動いていく状態を望みたいと思います。


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