シェア
赤い絨毯が敷かれた大理石の階段を登ると、カウンターが目に入った。スーツ姿の男性が立って…
麓についた頃、日はすっかり暮れてしまった。だが、ここまで来られれば、ひとまず安心だ。僕…
薄暗い森の中をトカゲのように歩く。慶介の結婚は話題に餓えた町に格好のエサを与えた。仲村…
吐き出した息が白くなる。春は近いのにまだまだ寒い。僕は身体が外気に極力触れないよう縮こ…
窓の外に見慣れた風景が見える。ビルの代わりに木々が並び、山がそびえ立つ。田畑が広がり、…
「シュウ。進学するのは、文系と理系のどっちだったっけ」 土曜日の昼下がり、玄関で靴を履…
ロッキーは帰る準備をしているので、こちらのやり取りに気が付いてなさそうだ。ミツアキに、どういう意味なのか聞いてみようか。そう考えていたら、ロッキーが僕に声を掛けてきた。 「シュウは準備できた?」 「うん。大丈夫」 「ミツアキさん。ボクたち、帰りますね」 ミツアキは僕たちに手を振る。 「じゃあね」 僕たちは手を振り返して、店を出るとエレベーターに乗る。僕はミツアキの言葉を反すうした。 あれはどういう意味だったんだろう。ハッキリは言わなかったが、僕と慶介の関係は、ある程度
僕たちは地下鉄に乗って、日曜日へ訪れた駅まで向かう。駅を降りると、この前よりも更に多く…
ミツアキはメグミさんから、店の一番奥にちょうど空いていた席に通された。隣になった男は、…
時間を確認したら、もうそろそろ午後九時になろうとしている。美那郷であれば、町はすっかり…
試験の終わりを知らせるチャイムが鳴る。答案用紙が回収されると、張りつめた空気が緩む。さ…
白い壁紙が目に入る。あれ? ここはどこだっけ。僕は身体を起こす。そうだ、慶介の家だ。ベ…
人に押し出されるように僕は電車を降りた。夜なのに駅はきらびやかだ。プラットホームの周り…
「修一、忘れ物はない? ハンカチは持った?」 いつもの母さんの心配性だ。まるで遠足に行く時の小学生みたいな気分になる。これでよく僕が慶介と一緒に行くのを許してくれたものだ。父さんの説得には感謝しかない。 「大丈夫だよ。母さん」 「やっぱり私も駅まで着いて行こうかしら」 「母さん、今日はお医者さんのところに行く日でしょ」 「病院なんていつでも行けるもの。そうよ。今からキャンセルしましょ」 電話を掛けに行こうとする母さんを慶介が呼び止める。 「お母さん、修一くんは私が責任を持