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MMTから考える「お金」のあり方〜本当の経済力を強めることが最高目的〜

MMTとは何か?こちらのサイトに3つのポイントが書いてあるので引用させていただく。MMTは、「Modern Monetary Theory」の略称で「MMT」ともいい、「現代金融理論」と呼ぶ場合もあるそう。

現代貨幣理論の代表的な主張をまとめると、以下の3つのことがあげられます。
・自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても債務不履行になることはない
・財政赤字でも国はインフレが起きない範囲で支出を行うべき
・税は財源ではなく通貨を流通させる仕組みである

私個人として上述の最初の2点については、条件付きで同意できると考えている。最後の税についての考え方は、位置づけの話であり、実質的な意味がないのでおいておく。

最初の2点を合わせれば、インフレが起きない範囲では財政赤字になろうが財政支出をやってよいということになる。

ここで検討したいことがいくつかある。

前提1:お金を払うことの本質(買い手の状況)

まず、前提1を確認しておきたい。

個人の消費者にせよ企業にせよ、お金を払って商品やサービスを買うという意思決定にはどのような要素が影響するか。

それはその主体の状況によって異なる。人だけでなく、企業という法人も基本は同じ。

それは、次の3点によって決まる。

1.そのお金を手に入れるためにどれくらいの労力を使ったか

コンビニバイトで、1日5000円を稼ぎ月に20日働き、10万円を稼いでいる人にとって、1万円の商品は高い。相当な効用が見込まれないとそれは買わないだろう。

一方で、2億円の資産があり、年間運用益で1000万円の収入がある人にとって、1万円など安いものなので、あまり吟味せず少し興味を持てば購入するかもしれない。

2.今後、どれくらいの労力で、どれくらい稼げそうか

また、未来の収入に関する見通しも重要だ。

今は、月に10万円しか稼げなくても、スキルがたまり将来もっと稼げそうなら、多少現時点での懐は緩むだろう。

重要なのは、その人の主観にとって「どれくらい労力がかかりそうか」ということだ。

これからもスキルがたまらず月10万が続くと見込まれれば、少しのお金を稼ぐためにも労力がかかるため、財布の紐は固くなる。

先の2億円保持者なら、将来も5%程度の不労所得(毎年1000万円)を見込んでいれば、ゆるゆるになる。

3.今の資産状況

最後は資産状況だ。

10万円の月収しかなくても、1億円の資産があるなら、1万円程度の買い物に悩まないだろう。

前提2:本当に価値あるものは買われる。

本当に価値があるものは買われる。

結局、本質的な価値が最重要。

洗濯機が誕生は、多くの人の生活を一変させた。

先の例で収入が低い人でも、それが本当に価値あるものなら購入する。現代でも、月収10万円でも頑張って貯金して、iPhoneは買うだろう。

また、買い替え需要や新しいニーズを満たす商品などは本質的といえる。

前提3:本当に価値があるものとは状況によって変化する

しかし、価値があるといわれるものも状況によって異なる。

状況とは、個人の状況と社会や環境の外的な環境のことだ。

iPhoneは何でもできる便利なものだが、農村で自給自足している人には役に立たないかもしれない。

また、今の緊迫した世界情勢で、仮に日本にも戦争の危機が出てくれば、米など生活必需品の需要が高まり、その価値が上がるといえる。

こういう状況だれば、プラダやグッチのバックなどの価値は下がる。そのようなシンボル的な消費は幻想程度が高い。物を運ぶだけなら、10円の紙袋で事足りるというのが本質だ。

社会の目的は経済力を強くすること(人が源泉)

社会のそもそもの目的は経済力を強くすることだ。

簡単にいえば、必要不可欠なものが安定的に供給され、よいもの(社会に喜ばれるもの)がどんどん生まれる経済が望ましい。

そういう意味で、上述した「本当に良いもの」がどれだけ生み出されるかが経済力であり、そこを目標に様々な政策を考えるべきだ。

財政支出をして一過性の売上を企業が上げても意味がない。

最終的に良いものをつくる人々が経済力の源泉。

前提のまとめ

これら3つを検討すると、結局、本質的に生活をよくするものは価値があり買われるが、価値というのは、買い手や社会環境の状況によっても変化する、というのが基本となる。これだけでも複雑であるが、かなり変数は絞れたのではないか。

こう考えると、お金を市中にばら撒けば、景気がよくなるというのは幻想だとわかる。それは一時しのぎであり、良い商品の登場や買い替え需要など本質的なものが生じていない。

本当に社会に重要なのは、本質的に価値が生まれる経済力であり、それは優秀な人々により作られる。

ラッキーマネーの定義

今後の議論を進めていく上で、ラッキーマネーという語を作りたいと思う。

ラッキーマネーとは、棚からぼたもち的に、労力を払わずにゲットしたお金を指す。つまり、ラッキーマネーを持っているある主体がそのお金を使って何かを購入するとき、商品やサービスの値踏みや吟味が甘くなるということがポイントだ。

親から与えられたお金や、宝くじで当たったお金がラッキーマネーだといえる。

お金の役割を確認

また、お金の教科書的な役割もおさらいしておきたい。お金には、以下の通り、交換機能、価値保存機能、価値尺度機能の3つの機能と役割がある。(参考サイト

1.交換をスムーズにしてくれる「お金」(交換機能)
2.お金は今使わず、将来使うために蓄えておくことができる(価値保存機能)
3.「円」という「ものさし」(価値尺度機能)

なぜ政府はお金を供給するのか

前提や語の定義ができたので、議論を開始しよう。そもそも、金融政策でも財政支出でも、なぜ政府はお金を供給しなくてはいけないのか?

(ここでいう金融政策とは、量的緩和など含め銀行のキャッシュを増やし、貸し出しがしやすくなるような施策。財政支出は民間企業へ何か支出するようなもの)

1.出回るお金がなくならないようにするため

まず、最初に思い浮かぶのは、動いているお金が減ってしまうからだ。個人でも企業でも、得たお金を使わずにタンス預金してしまえば、そこでお金の流れは途切れる。また、相続されなかった故人の資産もこの世に存在しないものとなる(現金が誰かに見つかれば別だが)。それゆえに、「消費」をある程度、やらせ的に作る必要がある。

2.創造を促すため

次に創造を促すためという目的が重要だ。これはつまり、ラッキーマネーの供給である。

ラッキーマネーがある程度ないとイノベーションは起こらない。

なぜか?

新しい製品が安定して供給されるためには、キャズムを超える必要があるが、それまでに一定の買い支えがないと安定する前になくなってしまうからだ。

これは政府が直接買うというだけでなく、政府がラッキーマネーを財政支出でばらまけば、その波及したものもラッキーマネー的な性質を帯びるということだ。

新しいものが買われる原資がなくなれば、新しいものは生まれない。(正確には生まれても、持続せず失くなってしまう)

政府がお金を供給する上での最高目的

上述のような2つの目的があったが、最高の目的はなにか。

つまり一番重要なことだ。

それは、最初に述べた通り、社会が目標にすべきは強い経済力なのである。

生活必需品が安定的に、そして、社会をよりよくするものが次々と生まれてくるような経済力を高めるためにお金を供給するのだ。経済力とは最終的には優秀な人々にかかっている。

インフレは国内で、一律で上がれば問題ない

政府がお金を刷って民間に流せば、インフレが起きてしまう。

でもインフレって悪なのだろうか?

(ちなみにインフレの1つの利点は、負債の実質負担が将来的に下がるので、借入意欲が高まりイノベーションにつながるということだ。)

インフレは、ある完結した領域内で一律で上がれば全く問題ない。

例えば、日本国内で1億3千万人に、1億円ずつ配ったとしよう。

そうすれば、あらゆる商品サービスの価格が需給で調整され、インフレするだろう。一律で上がれば問題はない。

インフレの問題1:一律ではなくバラバラにインフレすると混乱する

では、インフレの問題は何か?

それは、ある一定の商品群でインフレが起きると社会が混乱するということだ。

実は、先の例で日本国内で1億3千万人に、1億円ずつ配ったとしても、おそらく、一律では物価は上がらない。りんご、マッサージ、お米、バー、パソコン、家具などにおいて全て一律で50%値上げ、などということにはならない。

そうなると、その歪みで痛手を被る人が一定数出てくるだろう。

そして、財政支出がどのように波及し、どの分野でインフレが起こるかは複雑系なのでシミュレーションが至極難しい。

インフレの問題2:国外との取引

国内が完結した市場で、インフレが一律であれば問題ない。みんなの消費能力が50%UPすれば物価が50%UPしても問題ない。

でも、問題は輸出入だ。

仮に50%もインフレしたら、海外の企業や個人からすれば、大きく日本産のもののコストが安くなる。これでいろいろなバランスがおかしくなり、社会が混乱するだろう。

特に、日本が資源を買うための原資が不安定になるのが決定的な問題。

一般的なインフレ要因を検討

こちらのサイトに一般的なインフレ理由が4つまとめられている。以下1つずつ吟味する。

1・需給バランス好転による物価上昇

 需給バランスが好転するとは一般には買いが増えるということ。つまり個人消費と企業の設備投資が増えれば物価は上がります。「ディマンドプルインフレ」と呼ばれるものです。このときには景気拡大と物価上昇は蜜月状態を保つことができます。

生活必需品でなければこれが起きても別に問題ない。

余談だが、物価上がらないのは、解雇規制できないことが問題だと思う。よい価値を生み出した人が適切に報酬をもらって、お金持ちになり大胆な消費をしてくれればお金の循環はよくなりイノベーションにつながる。

しかし、サラリーパーソンがいくらすごい成果を出してもボーナスでちょっぴり返ってくる程度だろう。(ファンドマネージャーなどを除いて)


2・消費税引上げによる物価高

 1989年の消費税導入、97年と2014年の税率引上げ。これは明らかに個人、企業の実質購買力をそぐことを通じて景気後退を促します。

これも、最初の前提を考えれば問題ではない。消費税200%になったりすれば問題だが。

3・海外原料高による国内物価高

原油など原材料価格の高騰は我が国のあらゆる生産物のコストを引上げます。「コストプッシュインフレ」です。生産コストが上がれば企業利潤が減り、かつ物価も上がるのですから、これも景気後退を促します。

これは、実質的なインフレで、問題だ。だが、これは有る種、所与のものであるから、原理的にその変動に対応しないといけない。ルートを分散化したり、国内で原料、エネルギー供給できるようにするなど。

4・円安による物価高

円安は原油、食料品等の輸入品の価格(円ベース)の上昇をもたらします。この場合も輸入品に対する購買力が低下するため、景気後退圧力として働きます。ただし一方では、円安は輸出企業の価格競争力を高めるため、企業収益拡大←→株高・賃上げ←→景気拡大を促すという側面も持ちます。

先の通り。

5・通貨量増による物価上昇

中央銀行が供給する通貨量が増えれば購買力が増えるわけですから、需給バランスは買い超過に傾き、物価は上がりがちです。

さきに見た通り、政府がお金を供給する理由は、次の2つであった。

1.出回るお金がなくならないようにするため

2.創造を促すため

そして、その最高目的は、経済力を強くすることであった。

インフラが一律に起きないと社会が混乱するし、国外との取引ができなくなりさらに社会が混乱する。

さらに、あまりにお金を供給しすぎてしまうと、ラッキーマネーが過剰になり、よい商品が生まれなくなる。なぜなら、消費者の1票の重みがなくなり、たいしてよくもない商品が生き残ってしまうからだ。効率的な資源配分が損なわれてしまう。

結論

たしかに、MMTで謳われている通り、インフレが起きない範囲では財政赤字になろうが財政支出をやってよいという

次の3点を押さえておくべきだ。

1.インフレが一律でなくバラバラに進行すると社会が混乱する

2.インフレにより海外取引が混乱する(ひいては国内が混乱)

3.ラッキーマネーを供給しすぎると経済が弱くなる

つまり、インフレは一律で起きて、海外取引が混乱しない程度であれば許容できるので、その範囲ならお金を刷ってばらまいてもよい。しかし、ラッキーマネーを供給しすぎると、消費が甘くなり良いものが生み出させる経済力が弱くなる。これを見極めて、お金の政策を行うことが必要だ。

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