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【中国社会】における“内卷”と“躺平”の背景にある根本問題
先日、日本にいる中国人と話をしていたとき、「内卷(nei4 juan3)」という言葉を教えてもらった。
「内卷(nei4 juan3)」とは、中国において競争が激化して疲弊する若者の心情を表した流行語らしい。
(その友人自身も日本にいたから最近知ったという)
本記事のトップの画像は、中国の微博(中国のツイッター)で「内卷(nei4 juan3)」という語が流行るきっかけとなった清華大学の学生の写真。
自転車に乗りながら、論文を書いたり、ご飯を食べたりしている。。
(どんだけ生産性高めたいんだよ、とつっこみたくなる。)
以下のBBCの記事によると、
大学で論文で5000語が最低要求だと、みんな最高評価を狙って8000語、1万語と競争する。結果的に最高評価をもらえる比率は同じなのに、求められるレベルが教授の要求よりはるかに高くなるという。こういう疲弊をもたらす競争を“内卷”という。
https://www.bbc.com/zhongwen/simp/chinese-news-57304453
“内卷”与“躺平”之间挣扎的中国年轻人
中国では、一定のレベルの仕事を得るには、名門校卒業や修士の学位は当たり前。
私は東京大学に留学して修士を取りましたが、1ヶ月1万元(17万円)でいいです!
私は、ハーバード大学を卒業しましたが、9000元でいいです!
と、高レベル人材がポジションを争って、どんどん自分を安売りせざるをえなくなり、疲れていく。
先日、私も紹介した下記の痛ましい事件も、まさにこの「内卷」社会が背景にあるといえそうだ。
給与、社会的地位、安定性と三拍子揃った椅子取りゲームは、死にものぐるいの闘いである
【非升即走】復旦大学の教授殺害事件から見る中国の学界・社会問題
しかし、
考えてみれば、
社会主義国家を謳う中国において「資本主義社会」において促される原理的な競争がここまで行き着くのは皮肉なものだ。。
みんな疲弊している。
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そこで、
「内卷(nei4 juan3)」に対して、
このような競争から離脱し、勝手気ままにのんびり生きる価値観を「躺平tang3 ping2」(横たわるという意味)という態度が出てきた。
少ない給料でも、大都市でなければ家が買えるし、ネットで無料で様々なコンテンツを楽しめる。また、さらには親のすねをかじって何年も働かないような若者も含まれるようだ。
先のBBC記事によると、あるオックスフォード大学教授はこうした「躺平tang3 ping2」主義を、多くの人が過去の発展モデルを反省している事実であり良いことだ、と述べている。
また、《南方日报》や《中国科学报》など共産党系のメディアでは、「躺平tang3 ping2」は無価値、無責任であり恥だと主張していることから、中国全体で維持されるべき価値観が理解できる。
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中国社会における“内卷”と“躺平”の背景にある根本問題は何か?
復旦大学事件のnoteでも書いたが、私はこの根っこは、画一的な価値観であると思う。
価値観に多様性がないからではないだろうか。
多くの中国人の成功モデルは、
親を喜ばせることであり、
そして、それが家を持って若いうちに結婚して子供をもうけることだからだろう。
不動産価格の高騰で、大都市でまともな家を買うには最低でも1億円程度は必要でありながら、新卒の給料はまだ月10万円レベルだ(もちろん親の援助はあるだろうがそれも多くの人にはたかが知れている)。
たしかに、実力で実績を出せば数年で月30万、50万になることもあるが、それを続けに続けていても、さらに不動産価格は上がっていく。
そして、その大きな流れを作っているのは、「躺平tang3 ping2」を批判する国家である。
このような競争をどこまで国は続けるのだろうか。
国際競争力を高めるためには、競争を促さなければならないが、疲弊して共倒れしてしまっては本末転倒であり、そのリスクは十分に理解しているだろう。
ただ、これはどの資本主義国も抱える原理的な問題で、システムの微調整で済む話ではない。
それこそ、抜本的改革、本当の意味での社会主義的な考え方が必要なのかもしれない。
(そういう意味で、 斎藤 幸平によるマルクスの新解釈『人新世の「資本論」』 について今後考えたい。だいぶざっくりした話)
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