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「定年準備」楠木 新 著の感想

定年後の生活と生きがいについての考察

人は一人では生きていけず、必ず年を取り、最終的には死に至るというのは誰もが認める現実です。人生は有限であり、この限られた時間をどのように過ごすかは非常に重要です。

多くの人が、定年後の生活について明確なビジョンを持たないまま仕事中心の生活を送り、退職後はテレビやラジオ、新聞や雑誌などに時間を費やすだけの生活に変わることが多いです。個人の生きがいを見つけることが重要であり、特に定年後は50歳から始まると考えると、早めの準備が求められます。

退職後、男性が社会とのつながりを失い、誰からも名前を呼ばれない生活を送ることは避けたいものです。定年退職は必ずやってくる日であり、50歳を過ぎたら5年後、10年後のありたい姿を具体的に考えることが重要です。しかし、50歳の時点で定年後を具体的に考えている人は少なく、1割にも満たないのが現状です。

会社に長く在籍することで、組織を離れることがうまく想像できない人が多いです。会社員時代のメリットとして、会社に行けば人に会え、名前で呼んでもらえ、若い人と話ができること、遊び仲間や飲み仲間が簡単にできること、規則正しい生活ができること、仕事を与えてもらえること、存在価値を感じられることなどがあります。

しかし、会社以外で自分の居場所を確保しておくことも重要です。居場所は副業でも趣味でもボランティアでも地域活動でも構いません。会社員には4つの段階があり、はじめは学生から会社員に適応する時期、次は会社の仲間や顧客に貢献できるようになる時期、そして組織の中核として働き戸惑いも抱える時期、最後は退職後や老後も視野に入れて働く時期です。

45歳からは人生の後半戦が始まり、健康寿命が70歳とするとあと25年しかありません。40歳を過ぎると、会社員が働く意味に悩むことが増えます。この状態を「こころの定年」と呼び、よくある悩みとしては、①私の仕事は誰の役に立っているのかわからない、②成長している実感が得られない、③このまま時間が流れていっていいのだろうか、などがあります。

60歳から74歳までの期間を「黄金の15年」と名付け、家族の扶養など比較的経済的な義務から解放されるこの期間をどう過ごすかが重要です。この期間には約6万時間もの自由な時間があります。

人生100年時代と言われる中で、自分を本当にコントロールできるのは何歳までかを考えると、75歳が平均的かもしれません。商売の基本は仕入と販売であり、仕入が途絶えれば販売も途絶えるように、定年後の生活も準備が必要です。

会社員の自分と「もう一人の自分」を意識し、役職が無くなった時にいかに自分が会社に依存していたかを認識することが大切です。毎日規則正しく出社して働くことができる人がスティーブ・ジョブズになるのは難しいかもしれませんが、天性の才能がなくても組織の一員として価値を見出すことができます。

以上を踏まえて、定年後の生活を豊かにするためには、早めの準備と自分の居場所の確保が重要です。人生の後半戦を充実させるために、自分自身と向き合い、具体的な目標を持って行動することが求められます。

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