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【BOOK ガチ要約】 ステイ・スモール

 本日は、2020年9月9日に発売された「ステイ・スモール 〜会社は「小さい」ほどうまくいく〜(著: ポール ジャルヴィス)」について要約させていただきます。

 本書は、1日の3分の1ほど費やすデスクワークを最適化することで最高の体調や精神力を手に入れ、ビジネスで最高のパフォーマンスを出し続けることが可能になると提唱した本です。

 著者のポール・ジャルヴィス氏は、オンラインを駆使した「小さな会社」の魅力を伝える、新時代のビジネスリーダーです。
 著者は、10年前テクノロジー企業で活躍していました。その会社でweb制作の仕事をしていましたが、人間関係の質より、仕事の量を優先する会社の姿勢に、不満を持ち始めます。就職していた1年半の間、顧客がリピートすることなく去っていくのを目の当たりにした後、この仕事は自分には向いていないと考え、会社を去ることを決めます。
 その会社を辞めた後に、「何があれば自分の人生は十分なのか」という発想から生み出したのが「カンパニー・オブ・ワン」というモデルでした。このモデルは、現在の資本社会では珍しいモデルであることがこの本ではわかる。まさに会社は「小さい」ほどうまくいくモデルと言える。
 例えば、外部の資本に頼ることなくアイデアの最小単位でビジネスを素早く始める、市場で軌道修正を繰り返す重要性、1対多数のオンラインコミュニケーションを効果的にするなど、核となる考え方とともに実践的なヒントが書かれています。

 巷で話題のニューリッチ(※)思考が詰まっている本です。すでに規模や名声を追求する時代ではなく、人によって「より良い」を意識する・追求する時代になっています。人に自慢するための「成功」ではなく、自分らしく満足のいく仕事を継続し、「十分な収入」を得たいと願うすべての人と会社のための、画期的なビジネス書と言えるでしょう。
 (※)ニューリッチ…年収は、必要最低限で良く、いつどこで誰とどんな仕事をすることかを大切にしている人たち。対して、オールドリッチは、年収や名声が多ければ良いと考える人たち。


■ 結論
 企業は、調子が良いといい人を増やして、設備を充実させ、常に利益のみを増やしていこうとします。非常にごく当たり前の話です。
 しかし、著者は、結論として大きく以下の通り投げかけています。
 会社を大きくすることは必ずしもいいことではない。大きくすることで弾力性と自由が失われてしまう。
 規模の拡大に待ったを投げかけています。3200社を超える高成長テクノロジー・スタートアップを分析した「スタートアップ・ゲノム・プロジェクト」の研究によると、そうした企業の74%が失敗に終わっているということがわかっています。
 なんとその原因のほとんどが競争やビジネス計画の不備が原因ではなく、急激に規模を拡大し過ぎたことが原因だったのです。この74%という数字を見ると、規模拡大に意識を注ぎすぎるとリスクが非常に大きいことが見て取れるかと思います。

 (こちら別の本で読んだのですが、急成長を実行することをトルネードと言います。このトルネードを実施するには、緻密な計算とマーケティングが必要となり、戦う土俵を少しでも間違えると散ってしまうのです。【トルネード 〜キャズムを越え、「超成長」を手に入れるマーケティング戦略〜】より)


■スターバックスのスモール戦略
 スターバックスは、急速な規模拡大を目指して、急速な店舗数拡大や手の込んだ商品をどんどん増やしていった時期がありました。その結果、ブランドがぼやけてしまい、拡大した速度と同じ速度で閉店させざるを得なくなりました。
 日本のスターバックス戦略は、この失敗から学んだ戦略でした。もともとFC(フランチャイズ)によって店舗数を増やしていくことを計画していたのですが、この規模を追い求めた失敗を教訓とし、一部FC展開をしておりますが、基本直営でサービス、品質を追求した店舗展開をしています。競合より店舗の数で劣るスターバックスですが、より良い空間作りと品質の高い商品・サービスで確固たるブランドを築くことができています。
 今では規模が大きいスターバックスですが、根本は、多くの規模を追い求めない、スモール戦略が生んだ勝利なのかもしれません。
■既存顧客を維持する
 新規顧客を獲得するには、既存顧客を維持することの5倍のコストがかかると言われています。あらゆる費用(広告・宣伝・販促・営業費用・経費など)を払って販路拡大や新規顧客を獲得していくのではなく、今いる顧客を維持し喜ばせ、手助けをすることに集中するべきと、本書では紹介されています。
 その方が、あらゆる費用をかける必要がなく、長期的にはコストを大幅に低く抑えることができます。売上をただ単に伸ばすという思考だけでなく、コストカットにも影響することがお分かりいただけると思います。

 そして、顧客との信頼関係を構築していくことが、何よりとても重要であると書かれています。

 マッキンゼーの調査によると「70%の購買体験が、具体的な商品よりも顧客の感情にもとづいてなされている。ずば抜けていい扱いを受けたと感じると、二度目の購入や更新をしてもらいやすくなる。」とされています。新しい取引のうち83%が口コミの紹介によるものとされています。
 マーケティングの顧客の消費行動を表すAISASと呼ばれるものがあります。消費行動は、Attention(注目)、Interest(興味)、Search(調査)、Action(購入)、Share(共有)です。顧客・消費者は、購入する際に、調査します。そして、購入後、その商品を感想と共に共有するのです。調べる→共有→調べる→共有を繰り返し、口コミの信憑性が高まっていくことがわかっています。

 以上のことを理解すると、紹介が効果を発揮するのは、”代理による信頼”の上に、それが成り立っているからです。紹介が信用できるのは、話している相手を信用しているから、企業や商品にもたちまち信頼を抱くという理由からです。

 既存顧客から信頼を得るというのは、とても当たり前のことなのです。

 規模や売上拡大に集中しすぎた結果、やらなければならないことが増えすぎてしまい、せっかく信頼関係を構築できている顧客へのフォローが、おろそかになった経験はありませんでしょうか?既存顧客との信頼関係を維持し、紹介で新規顧客を得る。この方法が、労力とコストを抑えることができ、非常に効率的であると言えるのです。
■小さな規模でローンチする
 目の前にいる人たちの課題を解決することに全力を尽くすことができるか?これが非常に大切だとしています。
 ITやソフトウェア業界の常識に近いですが、小さく始めて雪だるま式に大きくしていくことが品質を維持できる方法です。シンプルにかつ素早く、商品・サービスの最初のバージョンをローンチしてしまうことが大切なマインドです。最初にローンチしたものは、すぐには成果につながりません。
 そこで学んだことを元に商品・サービスをより良くし、繰り返し手を入れて再発売することでもっといい成果を上げられるようになります。土台作りや基礎をしっかりできるようになるから大きな寺院やビルが安全に建つわけです。
 小さな規模でも、できるだけ早く発売してすぐに磨きをかけ、何回も何回も改善する。これを繰り返すことで、質・品質がグンとUPしていくわけです。

■まとめ
 ステイ・スモールにより、品質の高い小さな1歩からしか、品質の高い大きな組織は生まれないことがお分かりいただけたと思います。規模の追求、新規の追求の前に、原点に立ち返ること、基本を重視すること、小さく始めることを肝に銘じていきましょう。

以上

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