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どう使う?マーケターが知りたい行動経済学のあれこれ

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マーケティングの大家、コトラー教授は「行動経済学はマーケティングの別称である」と言ってます。専門用語が多くてとっつきにく印象のある行動経済学の理論を取り上げてマーケティング施策へ…
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2023年5月の記事一覧

ネガティビティ・バイアス-行動経済学の理解と実践44

ネットで商品を購入する際に、一番当てになる情報が商品レビューという人は多いと思います。当然、ネガティブな評価が多いと買わないですよね。レビュー数が多いと高評価も低評価もあるのですが、最初に目にしたものが悪い評価だとあとにどれだけ高評価のコメントが続いていても一度失った購買意欲を取り戻すのは至難の技です。 今回は、否定的なものに強く反応してしまうバイアスについてです。 ネガティビティ・バイアスとは? ネガティビティ・バイアスとは、人はポジティブな情報よりもネガティブな情報

本気で信じでれば実現します ピグマリオン効果-行動経済学の理解と実践43

ギリシャ神話でピグマリオンという現実の女性に失望していた王が彫刻の女性を愛情をもってそばにいたら神様が人間に生まれ代わらせてくれたという話からきています。 「豚もおだてれば木に登る」とことわざではブタをおだてると小馬鹿にしたようにも聞こえますが、相手の良さを信じてあげることで想像以上の成果を上げることができることのたとえです。 幼児教育でも「ほめのび」といって、叱るよりもほめることで子供がやる気なってくれるという話をよく聞きます。 ピグマリオン効果は、アメリカのハーバー

「いつものね」がおきる理由とは? 自己ハーディング効果-行動経済学の理解と実践42

近所のお店の常連客になって覚えてもらうのってちょっとうれしいですよね。 お店に入ったときの挨拶は、「あ、〇〇さん!まいど」です。 その次の言葉として、「じゃ、いつものね!」って注文が入ります。 でも、リアルに「いつものね」で通っているのを見たことがないです。本当にあるのか、ってくらい思っていました。 ところが、先日、地方に行った際にランチで入ったとんかつ屋さんでその光景がありました。 とんかつ屋とはいえ、メニューにはひれかつがあり、ロースかつがあり、かつカレーもあり

ハロー効果とは?-行動経済学の理解と実践41

会社の人事評価でもよく注意点として取り上げられることが多い認知バイアスの一種がハロー効果です。 認知バイアスとは、物事に対する評価や直感が経験や先入観によって非合理になってします心理現象です。 ハロー効果は、ある一点の顕著な特徴に引きずられてその他の要素が影響を受けてしまうことを言います。 人事評価ついては、例えば、前任者の高評価であったり、営業成績などによって、その他の要素の能力評価にまでプラス評価がつけられるようなことをいいます。 ハローというのは、Hello(こ

あなたの言葉にお客様の耳をダンボにさせるには? カクテルパーティ効果-行動経済学の理解と実践40

宴席などでわいわいやっているときに少し離れた席の自分に関係のある話が耳に入ってきたって経験ないですか? これは心理学用語で「選択的知覚」といって、自分にとって興味・関心のある情報のみを取り出して認識する人に備わった能力なんです。 今回は、選択的知覚によって自分に関係する情報を抜き取って認識するカクテルパーティ効果について解説します。 カクテルパーティ効果とは? カクテルパーティ効果とは、パーティ会場みたいなところでいろんな人が会話をしている喧噪の中でも自分に興味のある

どうしてスーパーの食品は98円なのか?端数価格-行動経済学の理解と実践39

前回、高級ブランドに適応される威光価格について解説しました。 高級品のプライシングにおいてよく言われるのが、キリのいい数字にすることです。 9万5千円よりも10万円とスキッとさせたほうが値下げされていないという意味でも威光がでます。 逆に、日用品や食品ではお得感を出すにキリの悪い数字がよく使われます。 端数価格です。 アメリカの調査で日用消費財のおよそ45%が9で終わる価格なっていたというデータがあります。 ちなみに、日本では9で終わらずに8で終わりますね。 下の

威光価格に効果がある理由とは? ヴェブレン効果-行動経済学の理解と実践38

近所の商店街の小さなカバン屋さんでヴィトンのバッグが1980円で売られてたらどう思いますか? たぶん、誰も本物とは思わないはずです。 場所もありますが、値段が「ニセモノです」って言っているようなものです。 「価格」がラグジュアリーブランドの品質や排他性のものさしとなっているのです。 要するに、値段が安くなってしまうと欲しいと思う人は少なくなるのです。 名声価格、威光価格、イメージ・プライシングなど、いろいろな呼び方があります。 普通の商品は価格が上がると製品の需要

この記事は18禁じゃないです!カリギュラ効果-行動経済学の理解と実践37

アダムとイブが禁断の果実を手にしてしまったことでエデンの園を追放されたことから人間の歴史が始まりました。禁じられたものに対する抑えられない願望は人間の本能の一部と言えるのかもしれません。 今回の記事は、禁じられると余計に手を出しなくなるカリギュラ効果についてです。 カリギュラ効果とは? カリギュラ効果とは、ある事柄を他者から禁じられるとそのことに対するフラストレーションが増幅してやりたくなる衝動が起きることをいいます。 昔、アメリカで「カリギュラ」という過激な内容の映画

お客さんに正しいモノサシをあげよう! シャンパルティエ効果-行動経済学の理解と実践36

大きな施設を表現するときに、よく甲子園球場何個分とか、東京ドーム何個分って言いますよね。 でも、甲子園球場がどのくらいの大きさか答えられる人って少ないですよね? 甲子園球場は約38,500㎡、東京ドームは約46,755㎡なんだそうです。 とにかく大きいことを表現したいときに、甲子園何十個分っていうんですけど、そんなに大きいと他にもっといい比較対象あるじゃない?って思ってしまいます。 今回は、イメージによって重さや大きさに対する印象が変わるシャンパルティエ効果についてで

無料の力-行動経済学の理解と実践35

皆さんは、Amazon PrimeとNetflixどっちがいいと思いますか? 私は、Amazon Primeです。なぜかというと、Amazon Primeだと送料が無料になるからです。そんなに映画やドラマばかり見ている時間もないので、どちらか一方で十分と思っていてNeflixの料金と比較検討したこともないのです。 でも、たまに、Neflix限定のコンテンツのPRとかを見ると無性に見たくなる衝動を抑えています。 Amazon Primeの送料無料の威力は大きいだろうなと思

オオカミ少年には気をつけよう 正常性バイアス-行動経済学の理解と実践34

イソップ物語で何度も「オオカミが来たぞ〜」って嘘をついて村人を驚かせていたおかげで、本当にオオカミが来た時には誰も少年の話を聞かずに村が襲われてしまったという「オオカミ少年」の話は有名です。 最近、かの国からのミサイル発射警報のJアラートが発せされることがよくあります。こういうことが何度も続くと、良くないことですが慣れになってしまって心の中で「またかどこかの海に落ちるんでしょ。」みたいに感じてしまいそうで怖いです。 今回は、このように徐々に鈍感に感じてしまうようになる正常

信じるものは救われる プラシーボ効果-行動経済学の理解と実践33

幕末の主人公の1人、新撰組の土方歳三の実家は「石田散薬」という薬を売っていたというのは、司馬遼太郎の歴史小説にも出てくる有名な話です。 この「石田散薬」は、打ち身、切り傷、骨折など、あらゆる外傷に効果がある万能薬ということで新撰組の隊士にも配っていたそうです。 しかし、本当に効果があったのかは疑わしいそうです。 新撰組の鬼の副長とまで言われたカリスマが配ってくれるクスリには、十分に効果があったのでしょう。 この記事では、石田散薬の効果にもつながるプラシーボ効果について