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うつわを使うイメージを共有し、熱量の高いコミュニティを作る。「”つくる”と”つかう”の間」でcocorone編集長とみこさんが語ってくれたこと

注)このnoteは石川県の真ん中でnoteも更新しているライター・岡田雪さんによる特別寄稿の記事です。美大卒、工芸にも詳しいカメラ好きの岡田さん。当日撮影していただいた素敵な写真と共にお送りします。(緒方)

九谷セラミック・ラボラトリー(CERABO KUTANI)で開催中の企画展「KUTANI SCAPEs - 九谷の視界」。

その開幕を記念して、2020年3月1日(土)にCERABO KUTANIにてトークイベントが行われました。第一部のゲストは、うつわに特化したウェブメディア「cocorone」編集長のとみこさん。CERABO KUTANI ディレクターの緒方康浩さんを聞き手に『交差する九谷〜”つくる”と”つかう”の間〜』のテーマで対談が行われました。

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きっかけは、うつわの産地での出会い

とみこさんは、飲食業界を経て2015年からWEBの仕事に携わり、現在はInstagramを中心に展開するメディア「cocorone(ココロネ)」の編集長を勤めています。また、個人としてもSNSの使い方の講座や、楽しみ方を共有するコミュニティを運営するなどの活動もされているとか。

とみこ:cocoroneを立ち上げるきっかけは、代表(cocroneを運営する株式会社IDENTITY)の碇が名古屋に移住したことです。名古屋周辺は、美濃加茂市や多治見など器の産地が多くて、身近に良いプロダクトがたくさんあることに気づいたんですね。ただ、情報がうまく流通されていなくて、多くの人には知られていなかったんです。その課題を解決するために、まずはインスタでライフスタイルの情報を発信しようという流れから始まりました。ユーザーの80%が女性で、丁寧な暮らしやテーブルコーデに関心の高い20〜30代女性が中心ですね。

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cocoroneの立ち上げ当初は、うつわに限らずライフスタイル全般の情報発信をしていたとのこと。しかし、2019年6月からは「うつわ」に特化する方向に切り替えたのだそうです。

緒方:どうして切り替えたんでしょう?

とみこ:インスタって、ジャンルに特化したコンテンツが強くなりやすいんです。cocoroneも、はじめは掃除や料理・うつわなど、発信内容は幅広かったんです。でも幅広すぎて、何の情報を発信しているのか分かりづらいアカウントになってしまっていたんです。フォロワーの関心も分散してしまっていたので、去年からはうつわに絞りました。主に紹介しているのは、テーブルコーデやうつわの収納ですね。あと、九谷焼など焼き物の産地や、うつわの豆知識も紹介しています。特化することで、興味関心がより強いフォロワーさんに届きやすくなりましたね。

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緒方:そこでうつわに絞ったきっかけって、なんだったんですか?もともとうつわが好きだったんですか?

とみこ:立ち上げ当初から、地域のうつわを現代風にアップデートしたいという思いがあったんです。また、うつわの投稿は初期の頃からフォロワーからの反応もよくて。なので、原点に戻って、うつわの情報に特化しようと思いました。

チームで世界観を作ることで、熱量の高いコミュニティに

cocoroneは、Instagramを中心とした「コミュニティ型メディア」。投稿で使用されている写真は編集部で撮影しているものではなく「ルームメイト」と呼ばれるインスタグラマーさんたちが投稿した写真を使わせてもらっているのだとか。

とみこ:インスタグラマーと提携して、コンテンツを作っています。ルームメイトは140名ほど。フォロワー数にして、100万人規模のコミュニティになっています。

緒方:ルームメイトさんたちも、フォロワーが多い人がほとんどなんですか?

とみこ:いえ、フォロワー数が多い人もいますが、多くない人もいらっしゃいます。ルームメイトさんは、あくまで投稿される写真の世界観を重視してお声がけさせていただいてますね。

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cocorone式メディアの運用には、2つのメリットがあるのだそうです。

① 熱量の高いコミュニティを構築できる
② 少ない工数でクオリティを上げられる

とみこ:コミュニティ型のメディア自体は、Instagram上では多くあるんです。でも、私たちのように固定のルームメイトさんと契約しているメディアは少ないと思います。継続的に写真を使わせていただくことで、熱量の高いコミュニティを構築できていますね。

緒方:こういう運営形態のメディアでやっていくことになった経緯は?

とみこ:世界観を持った、熱量の高いファンを集めることを大事にしたかったんです。そのためには、チームを作った方がいいと思いました。はじめはどうしても伸び悩みがあるので、多くの人に関わってもらい、相互にシェアして拡散される仕組みを作りたかったんです。フォロワー数も増えてきて、少しずつコミュニティが広まっている感覚です。

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「使うイメージ」を見せてあげることが大切

cocoroneのInstagramの投稿は、うつわの使用シーンの写真が1枚目になっているものがほとんど。とみこさんたち編集部の「使うイメージや楽しみ方を伝えたい」という思いから、同じうつわでも異なるシーンを見せられるように意識しているそうです。

とみこ:九谷焼のうつわの投稿も、反応がよかったですよ!柄物のうつわは使いかたが難しいと思われがちなんですけど、こうして使用例を見せてあげることで「あ、こうやって使えばいいんだ」とイメージが湧きますよね。新しい発見があるんだと思います。


緒方:実はいま、CERABO KUTANIでもテストマーケティングをしているんです。九谷焼についてのアンケートも実施してるんですが、「自宅にはあるけどあまり使っていない」という人が多いみたいで。生活の中での、使い方のイメージを伝えるって大事ですね。

とみこ:そうですね。使い手の立場になって、日常の中で使うシーンを見せてあげるといいかもしれませんね。

フォロワー数より、熱心にPRしてくれる仲間を増やす感覚

緒方:九谷焼で素敵な作品を作っている人はたくさんいるいっぽうで、プロモーションに課題があると感じている人も多いんです。九谷焼をいろんな人に知ってもらいたいという気持ちがある反面、積極的なPRは気が重いとか、作家さんが自ら表に出ることに関しての苦手意識もあるという…。そういう場合、もっと作品を知ってもらうには、まず何から始めたらいいですかね?

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とみこ:SNS講座をしていると「フォロワー数を増やしたい」と言われることが多いんです。でも、フォロワー数を増やすというよりも、自分のプロダクトを熱心にPRしてくれる仲間を増やすという感覚のほうがいいんじゃないかなと。たとえば、いまcocoroneは2.4万人のフォロワーがいます。情報を発信するときは、フォロワー全員に一気に広めるという感じではなくて、ルームメイトの1対1のコミュニケーションから少しずつ広まっていく感覚です。まずはルームメイトが投稿をシェアしてくれて、そこからつながりの深い人に伝播していく形になってきています。なので、九谷焼の場合も、まずは興味のある人に展示会や窯元・工房に来てもらって、そこからシェアしてもらうことを続ければ、つながりが生まれて広がっていくのではないかと思います。熱量の高いファンをつくることが大切ですね。

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実際にInstagramを上手に使って人気を博している例として、とみこさんが紹介してくださったのは、焼き物作家の石川隆児さん。

とみこ:石川さんは、新商品の告知も出しつつ、自分の器を使っている使用例を紹介していらっしゃるんですね。ハッシュタグ(#石川隆児)で探して、実際に購入して使っている投稿を引用したり。これは引用された方もうれしいし、フォロワーさんも使用例をまとめて見れてイメージがわきますよね。そういうスタイルがだんだん浸透してきて、タグの投稿も増えています。石川さんは、個展でもゆっくり密にコミュニケーションをとっていらっしゃるのもあり、根強いファンが増えている印象です。

美濃焼で「きほんのうつわ」作りにチャレンジしています

とみこ:いま、美濃焼の窯元さんと一緒に、うつわ作りにチャンレンジしています。うつわ作りって本当に難しいですね!作家さんって、みなさん本当にすごいな、と。一から商品を作るってこんなに難しいんだと実感しているところです。

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とみこ:企画段階で意識していたことは、最初からユーザーをSNSで巻き込むこと。インスタのストーリーで「いまこのサンプルを作っているんですが、どれがいいと思いますか?」と投げかけて投票してもらうという、巻き込み型を意識しています。コメントもいただけて「こっちの形が使いやすそう」「食洗機に入るか不安」などリアルなお悩みが聞けてよかったですね。

緒方:ポイントはユーザーを巻き込んで作るってことですね。

とみこ:そうです。一緒に作っていくことで仲間意識が芽生えて、アンバサダーのような感じで拡散にも協力してくれる。小さなところからでも、少しずつ広めているのが大事だと思います。

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cocoroneのプロジェクト「きほんのうつわ」は、3月31日にリリース予定。うつわに対するこだわりが詰まったとみこさんのnoteも、ぜひご覧ください。

九谷セラミック・ラボラトリー(CERABO KUTANI)と、ディレクターの緒方さんについてはこちら。

トークイベントの第二部は、CERABO KUTANIで開催中の企画展「KUTANI SCAPEs - 九谷の視界」の個性豊かな出展作家5名の中から3名を話し手に迎え、緒方さんととみこさんがお話を聞きました。どうぞお楽しみに。

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